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「お父さん…お母さん…どこにいるの?」
その時、奏太はとぼとぼと暗い路地を歩いていた。
「お腹すいた…」
今日こそは、と思い探し始めたのだが両親への手がかりも無く、知らないうちに道に迷ってしまった。奏太は途方に暮れていた。
「家に帰らなきゃ… でもここどこだか分んないし… ヒック…」
奏太は今にも泣きそうであった。すると後ろから声がした。
「おぼぉっちゃ~ん?おうちはどこかな~?おぢぃさんたちがぁ~、おうちむぁで~つれてってあげぇよお~か~?」
酔っているような、それともしゃべり方があやふやであるような不気味な声だった。奏太は恐る恐る後ろを振り向いた。 そこには頭はいかにもはち切れそうで体が妙に蠢いている人間といっていいような何かが何体もいた。
「ひぃっ‼」
奏太は全速力で逃げた。しかし奴らの足は速かった。
「「「「「「「「「「「「おそぉいよぉ~~~~‼‼‼おぼぉっちゃや~~~~ん‼‼‼」」」」」」」」」」」」
奏太はすぐに追いつかれてしまった。
「来ないで‼こっち来ないでよぉ‼」
奏太のささいな抵抗もむなしく捕まえられそうだったその時、
「おい」
一瞬だった。奏太の周りにいた化け物たちはいっせいに切り崩された。
「君、大丈夫か。立てる?」
「う、うん…お、お兄さんありがとう…」
「お礼はいいよ。それに…まぁいろいろ聞きたいことはあるけど話は後。今は逃げよう、さすがの僕でも子供一人かばいながらこんな大勢を相手にするのは分が悪い」
朔は奏太を背負い逃げた。
「朔おかえり~。どうだった?今夜の化けカマキリ退治は…って、誰?その子」
雪葉は奏太を見て首を傾げた。
「あぁ、ただいま 退治の帰りに歩いてたらこの子が奴らの大群に襲われててさ、助けてきた。てか思い出してみるとあんな大群見たことなかったな、数十体いた。何だったんだろうな。あ、そうそう。所長!シャワー借りるよ~。いつもみたく汚れちゃってさ あと、この子にも着替え頼むよ」
「いいぞ。ったくなんで子どもなんか拾ってくるんだ、お前は」
和浪は頭を掻きながら厄介そうに言った。
「仕方ないだろ?襲われてたんだから。いくら増えてもあんたらは困らないかもしれないけどね、僕は困るんです。疲れるし汚れるわ、でさ」
「ねぇ、おにいちゃん」
「なんだい?不良少年君?」
「ここって…なに?っていうかどこ?」
「あ~、そうだよね。まぁ、まずは一緒にシャワーでも浴びようや。君も奴らの体液でぐしょぐしょだからね」
「うん…」
朔と奏太はシャワー室へと入っていった。
「じゃあまずは自己紹介からだな。僕は 朔 って言うんだ。君は?」
「奏太。那須崎 奏太。」
朔はピクっと反応した。
「那須崎…?那須崎ってあの人の…そうか、道理で…」
「なんか言った?」
「いや‼何でもないよ。ひとまずよろしくな、奏太。あ、奏太って呼んでいいか?」
「うん、いいよ!こっちこそよろしくね、おにいちゃん」
「はは、おにいちゃんはなんか恥ずかしいな。気軽に朔って呼んでくれ。いや、こんなちっちゃい子に呼び捨てされるのも何かなぁ… やっぱ、おにいちゃんでいいや」
「じゃあ…朔兄‼」
「おっ‼いいなそれ‼それで行こうか」
「じゃあ改めて。よろしくね、朔兄」
「ああ、こちらこそ」
二人がシャワー室から出てくる。
「結局、お互いの自己紹介しかできなかったな」
「そうだね」
「じゃあ本題はみんなと話すか」
朔、奏太、雪葉は事務所の真ん中にある横長の机を囲むようにして長椅子に座り、和浪は窓際の自分用の机に座った。
「まずはここが何なのかの説明だね」
雪葉は話し始めた。
「ここは所謂なんでも屋。来る依頼を行っていくのよ。ここの主っていうの?まぁ、そういうのはあそこに偉そうに座ってるおっさんよ 和浪さんって言うの。朔は所長って呼んでるけどね。あ、私は雪葉って言うの。雪お姉ちゃんって呼んでね‼」
「「自分で呼び方を決めさせるのか…」」
朔と和浪は雪葉に呆れたが、だいたいこうしたであろう、とはわかっていたようであった。
「じゃあ、雪姉‼なんでも屋って言ったけど依頼されたことは本当に何でもしてくれるの?」
奏太は興味津々な様子で聞いた。
「雪姉…‼そういう呼び方もあるのか‼お姉さん感激‼ギューってしようか?」
「う、ううん。遠慮しとくよ…」
奏太は少し引き気味で言った。
「で、そうよ。頼まれたことは何でもする、たとえ命に代えてもね」
雪葉は先ほどまでのおちゃらけた様な顔から一変してまじめな顔になった。
「じゃあ、僕から一つあなたたちに依頼があります。」
奏太は思い切った表情で言った。
「僕のお父さんとお母さんを探してください」
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