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夜が更け辺りが寝静まったころ、朔は高層ビルの屋上に佇んでいた。
「今日は三日月か。明るいな」
ビルの下の路地裏には大男5人が1人の少女を取り囲んでいた。
「殺さなきゃいけない対象が5体もこんな目立つところに出てくるのか。まぁ人形だから知能がないのは仕方がないんだけどね。というか…人形にも性欲ってのは有るんだなぁ、不思議なもんだ。いや、あれはただお仲間増やしをしようとしてるだけか」
朔は下を覗きながら続けた。
「ああ、こんままだとあの子殺されちゃうなぁ…あいつらの処理めんどいから増えるのだけはご勘弁だ~よっと」
朔は胡坐をかいた状態から一気に立ち上がった。
「さぁ、そろそろ行きますか」
「身体強化剤投与開始、完了」
この電子音声が頭の中で鳴り終わると同時に、朔は身を投げ出すようにしてビルの屋上から飛び降りた。
(あ、着地どうしよう…かっこいい感じで決めよっと)
ダンッ‼地面が割れる。
(決まった…あ、これってアメコミであった着地の仕方だよな?確かアイアン…アイアン…?なんだっけ?忘れちったよ)
着地と同時に地面についていた朔の機械の左腕が変形、周囲を薙ぎ払う。鈍い音が連続して鳴る。大男たちは隣のビルに物凄いスピードで叩きつけられめり込んでいた。
「あっ‼ごっめ~ん‼間違えてハンマーモードにしちゃってたよ、痛かったでしょ 今度はちゃんと斬りおとしてあげるから大人しくしといてよ?」
朔が言い終わると同時にビルにめり込んでいた大男たちが起き上がり彼らの皮膚が勢いよく破られる。
「「「「「シュー‼」」」」」
現れたのはカマキリ。目は人間で、破れた皮膚は体中にべったりと貼り付いている。
「うわ、やっぱ気持ち悪いよ、お前ら。あ、そこの君!死にたくなかったらさっさとここから離れてね」
朔は思い出したかのように少女に言った。
「あ、ありがとうございます!」
少女はそう言いながら夜の闇の中に逃げて行った。
「で、お前らはどうする?僕に大人しく斬り殺される?ってそういう訳にもいかなさそうだね。逆に僕を殺す気満々って感じだね」
朔はそう言い終わると軽くステップを踏み左腕を変形させた。
「やっぱカマキリのお前らにはこの大鎌がお似合いだよね。一気に終わらせる。」
「「「「「シャー‼」」」」」
そう叫びながら5体のカマキリたちはいっせいに飛びかかってきた。
(まずは一体目、脳の演算結果は「次の行動:右方向への薙ぎ払い」か)
カマキリからの薙ぎ払いを軽々と避ける。
(次は2体同時に縦方向の薙ぎ払い)
避ける。
(四体目…「抱き着く」だって?気色悪いなぁ)
避ける。
(あと一体はどこだ?「後ろ」?そうか)
後方からの横の薙ぎ払いも軽々と避けた。それと同時に、
「ほら、お返し」
一閃。朔の薙ぎ払いによってカマキリたちはいっせいに斬り捨てられた。
「疲れたし、なにより汚いよ。なんで斬ったら体液ぶち撒けてくれるかなぁ、もう」
朔はゆっくりと事務所へと歩きだした。
作品に対するコメント、指摘待ってます‼