第7話 予定調和
「おい、どうした奈都也。具合でも悪いのか?」
晩御飯を食べてる最中に突然父さんが不安そうな面持ちでそんなことを聞いてきた。もしかしたら今の心境が顔に出てたのかもしれない。
「えっ――。あぁ、ちょっと悩み事だよ。部活のことでね」
「部活か。まさか先輩が怖いのか?」
「いや……。怖いというか俺を除いたら部員は一人しかいないよ」
「おぉ、部員が二人の部か。少数精鋭ってやつだな!」
「そうだといいけど」
ちなみに今日の夕食は大好物の肉じゃがなのだが、味にまで頭がいかない。『三日以内にあと一人入部させる』か……。しかし、今のところ思い当たる人物がいない。彩葉さんの笑顔見たいがためにこの件を安請け合いをしたつもりはないが、今の状況はあまりよくはない。
「三人――か。まるで光の三原色みたいだな!」
「光の三原色……。父さんそれなに?」
「大袈裟に言うとこの世界を形作っている色だよ。具体的に言うと赤・緑・青の三色になる」
「ふ~ん。だから?」
「なんだ、お前色に興味ないのか。父さんの見立てによるとお前は……。青色だな!」
唐突に父さんはそう言った。でもそう言われるとその気になってしまう。彩葉さんは……。まぁ、赤色といったところか。
「答えは決まったか?」
「えっ!?」
「お前が次に探す色だよ。よし……。父さん当ててみようか。ズバリ緑だろ」
さすが父さん。勘だけは冴え渡ってる。しかしイメージカラーが『緑』の人かぁ。なんか余計に部員探しが難しくなったような気がする。
「頑張れよ。父さん応援してるからな」
「あぁ……。わかったよ」
いつの間にか肉じゃがは冷えていた。もしかしたら話に集中しすぎたのかも知れない。
「そう言えば奈都也。なんか今日暑くないか?」
「えっ……。まぁ、昨日よりは暑いかも」
「少し早いが扇風機出すか?」
「扇風機は去年父さんが壊しただろ」
「おっと……。そうだった。週末に新しいのを買ってくるよ」
「よろしく」
冷房設備のないうちの家にとって扇風機は夏の必須アイテムである。父さんが本当に買ってくるのかは不透明だが……。そんなことを考えながらコップに並々と注いだ麦茶を一気に飲み干した。