第6話 迫る時間
「天体望遠鏡がないって――。彩葉さんそれはいったいどういうことなんです?」
天体観測研究部に天体望遠鏡がない。それでは本末転倒だろう。このままでは部として活動しようにも活動できない。
「唯一あった望遠鏡も先週壊れてしまったのよ。それに新しいのを買おうにも購入する費用が学校からおりないのよ」
彩葉さんは神妙な面持ちでて天体望遠鏡がない理由を僕に説明する。
「それじゃあどうやったら購入する部費がおりるんです?」
「う――ん、顧問の先生曰く部の存続の最低ラインである三人が集まったら……。かな」
「三人ということは僕が入部しただけではダメなんです?」
「その通り。どのみちあと一人誰かが入部しないとこの部の廃部が決定してしまうの」
「えっ――!?」
それはかなりマズイ。このままでは天体観測望遠鏡を覗けないまま自分が所属する部活がなくなってしまう。入部して三日で部がなくなるのは少し考えただけでも悲しくなってきてしまう。
「い、いつまでにあと一人部員を集めないといけないんです?」
「タイムリミットは――。あと三日よ!」
「えっ――。それってもうすぐじゃないですか!?」
残り三日間で一人……。なかなか厳しい条件だ。でも、正直無理とは思えない。そう思う理由なんてどこにもないけれど。
「僕、入部しますよ」
「えっ、本当にいいの?」
「はい、部員探し協力しますよ!」
乗りかかった船を今さら降りるわけにもいかないだろう。何より僕は彼女の嬉しそうな表情の虜になってしまったのかもしれない。
「一緒に頑張りましょう、奈都也君!」
「はい、でもなんだか照れますね」
たぶん生まれて初めて女性に頼りにされた。それがとても嬉しかった五月のある放課後であった。
***
「協力しますって言ったけどさてどうしよう……」
家への帰り道、僕の頭はその件で一杯になっている。果たして廃部寸前の天体観測研究部に入部してくれる人なんているのだろうか。
「海原はバスケ部だし冬藤はサッカー部だし……」
部員探しというのは意外と難しいものだ。そんなことを考えながら僕は家路を急いだ。