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キミが見た星ノ空。僕が見た羅針盤  作者: 候岐禎簾
第一章 春の出会いと部の再生
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第5話 理論なき動向

「ふぅ――。階段がキツイ……。」

 一通りの授業が終わったある日の放課後。僕は彩葉さんに言われた通りC号舎三階の奥の第三物理準備室へ向かうべくその歩みを進めている。正直、気は進まなかったのだが、交わした約束を無断で破るわけにもいかない。


「それにしてもこの階やけに暗くないか――?」

 ただでさえ老朽化が目立つC号舎。その最上階の奥ときたらまだ日中というのに真っ暗だ。こんなところでいったい何をやっているのだろう――。


「第三物理準備室――。ここか。失礼します……」

 しっかり確認した後、僕は昭和を感じるような木の扉をゆっくりと開けた。


 ――誰もいない。一応、電気はついているのだが何だか寂しい雰囲気が教室内を漂っていた。


「まさか呼んだことを忘れて帰ったとか……」

 でも、不思議な事に電気だけは煌々と輝いている。


「何か教室内に手がかりはないだろうか?」

 そう思いついた僕は中に入りキョロキョロと室内を見回す。室内には理科の授業で使うような道具類がところ狭しと棚に押し込まれている。


 その時、僕はある『写真』を見つけた。


挿絵(By みてみん)


 比較的大きめの額縁に星を写した写真が飾られている。これは……。なんだろう?


「もしかして……。夏の第三角形?」


「正解!」


「えっ!?」

 とっさに振り向いたら僕の目線の先に僕をここに呼んだ張本人――夏宮彩葉さんがいた。


「ごめんごめん。図書室で本を借りてたんだ」

 そう言う彼女の手にはたくさんの参考書。目を凝らして見つめるとどうやら『星』にまつわる本のようだ。


「その本って……」


「そう、星や天体にまつわる本よ。私もまだまだ勉強不足でね」

 苦笑いを浮かべながら彼女は僕にそう言う。


「ということはもしかしてここは……」


天体観測研究部てんたいかんそくけんきゅうぶへようこそ!」

 彼女は満面の笑顔で僕に向かってそう言った。


 ***


 テーブルの上には一枚のプリント。必要事項は既に全て書かれている。


「あなたの入部届私が変わりに書いたからね」


「いや……。ち、ちょっと待ってください。話が急すぎます!」

 突然呼ばれて入部決定というのは早急すぎる。できれば少し考えさせてもらいたい。その想いをとりあえず僕は彼女に伝えた。


「うん。その気持ち私も痛いくらいわかるわ。でもねこの天体観測研究部、ちゃんと活動してる部員が今のところ二年生の私だけなの。だから廃部の危機なのよ!」


「はぁ……」

 たしかにちゃんと活動している部員が一人だけならその部の存続も危ういだろう。経費削減といったところか。


「それにね……。あっ、そう言えばあなたの名前は?」


立夏奈都也たちなつなつやです」


「奈都也君、実は今現在、この天体観測研究部には天体望遠鏡がないの」


「えっ――。天体望遠鏡がない?」

 天体望遠鏡がない天体観測研究部……。これは面倒な事案に巻き込まれてしまったようだ。


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