#20 遅くなった言葉
「好きです!!」
僕と彼女以外のお客さんがいないことをしっかりと確認してから、彩葉さんに僕はそう言った。そうだ、そうなんだ。この気持ちは高校生の頃と何も変わっていない。あの時、彼女に遮られて最後まで言えなかった言葉をようやく今言えたのだ。
時間はかかってしまった。でも、それでも言えて良かった。お互いの関係や状況はあの時と変わってしまったけれど……。
「奈都也君、ありがとう。私もあなたのことがーー」
「ストップ!」
「えっ……」
キョトンとしている彩葉さん。目を丸くしている。
「ごめん、今の僕はその先の言葉を聞けない。聞いてしまったら東京に帰れなくなってしまう」
「じ、自分から私のことが好きとか言っておいてそれはないんじゃないの!?」
「わかっている。だからこれをーー」
そう言いながら僕は上着のポケットから一枚のチケットを取り出して彼女に渡した。
「これって……。チケット?」
「うん。望瀬遊園地の一日フリーパスチケット。今から一カ月後、お互いの今の気持ちが変わってなかったらここに来て」
「あなたはそれでいいの?」
「お互い住んでいるところも違うし付き合っている人もいる。それから逃げるわけには行かない。でも、もし一カ月の間に二人にとっての状況がより良い方向に向かうのなら望瀬遊園地に来て。僕も行くから……」
そのあと、数十秒ほど沈黙の時間が流れた。彩葉さんは目を伏せてなんだか浮かないような顔をしている。
「……。なんだか不思議よね」
「ど、どういうこと?」
「私もあなたもよ。どうしても回り道をたくさんしないとうまくいかないのね」
「これはもとはと言えば、十年前の彩葉さんに原因があるような……」
「そう言わないでよ。十代の頃っていろいろあるでしょうよ。話を元に戻しましょう。一カ月後、望瀬遊園地ね。わかったわ」
彩葉さんは何かスッキリとしたような表情でそう言った。果たして僕達はまた会えるのだろうか。
でも、もしまた会えることができるのなら、その時の二人はお互いの気持ちを純粋に受け入れられる状況、いやーー。関係になっているはずだ。




