#18 追憶~揺れる香り~卒業②
階段を降りている時、ふと自分の歩幅が変わっていることに気づく。こんなにも違っていただろうか……。まるで時間が過ぎていくのを拒むかのように小さな歩幅になっている。
ーー彩葉さんになんて言う言葉を贈ろうか……。
本当は悩むことじゃないのかも知れない。『卒業おめでとう』っていうありふれた言葉でももちろん良いはずだ。でも、それだけでいいのだろうか。
本当に……?
***
ーーガラガラガラ……。
相変わらずすごい音がする部室のドアをゆっくりと開ける。時間を調整した甲斐があったのか部室内は誰もいない。しかし、僕の予想が正しければもうすぐ彼女はここにくるはずだ。机の上に立て掛けてる写真を取りに。
その時、僕は決意を固めていた。しっかり彼女と話そう。面と向かって相手の目を見ながら。おめでとうっていう言葉以上の事をしっかりと伝えよう。
ーートットット……。
その時、遠くから靴の音が聞こえてきた。
きっと彼女だ。正直、ここに来る人はそうはいない。
ーーガラガラガラ……。
ドアが開く。そこには落ち着いた様子の彩葉さんがいた。普段は着崩している制服も今日という日はしっかり型通り着用していて、その胸ポケットには祝福を表す薄赤色のコサージュ。髪もここ最近は若干茶髪ぽかったのだが、今日はしっかりと黒髪に染め直していた。
「あらっ……。奈都也君?」
彩葉さんは僕の事に気がついた途端、一言そう言った。彼女的には意外だったのだろう。目を丸くしていることからもなんとなくその事がイメージできた。
「卒業おめでとうございます。写真を取りに来たんですよね?」
「えぇ、そうよ。ありがとう。みんなで撮った写真だからね。危うく忘れるとこだった」
彩葉さんはチラリと僕の顔を見た後は僕に目を合わせることもなくそそくさと写真を取って帰ろうとした。
「ちょっと待って……!」
その時、僕は彼女をこのまま帰らせてはいけないと思って久しぶりに若干大きな声を出した。そんな僕を見てまた彼女が目を丸くしている。
「正直、僕は寂しかったです。彩葉さんとあまり話せなくって。それでーー。このまま卒業だなんて悲しすぎです!」
よし、今日はしっかりと思いの丈を言葉にして彼女に伝えよう。それにもう今を逃がしたら次なんてあるかどうかも分からない。
「進路も希望通り決まったんですよね。僕はずっと待ってました。もし良ければ僕と付き合って……!」
「ストップ!」
その時、彩葉さんは僕の言葉を遮るようにしてそう言った。それも予想外に大きな声で。まさか彼女がこんな大声を出せるなんて思いもしてなかった。
「あのねーー。奈都也君。私、今はその先の言葉を聞きたくないの。私もあなたには好意をもってるわ。でもそれは今すぐにっていうやつじゃないのよ」
「えっ……。今すぐにっていうやつじゃないってどういうことですか?」
「あぁ……。ええとね、うまく例えることができないけど敢えていうならーー」
そして彼女は僕の目をしっかりと見ながら話し出した。




