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キミが見た星ノ空。僕が見た羅針盤  作者: 候岐禎簾
最終章 星をあつめて。翼は大きく前へ
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#17 追憶~揺れる香り~卒業①

 ーー校内チャイムの音が遠くで聴こえる。目の前には空。それも雲ひとつない吸い込まれそうな青空。

 今日は三年生の卒業式。ちょうど今、体育館で行われている頃だろう。それにしても三月だというのに今日は不思議なほど暖かい。まるで春を先取りしたかのようだ。だからなのか僕はこうして今、学校の屋上にいる。昨日までマフラーを巻いて重ね着をするほど寒かったのに今日は上着を脱いでシャツの袖を捲っているのもこうして屋上で日向ぼっこをしているからなのだろう。


「明日から彩葉さんがいなくなる」

 この事実が頭から離れない。ヒカリノ岡公園での一件以来、僕と彩葉さんとの心の距離は一気に離れていき今では部室で時々、会話をするくらいの関係でしかない。彼女は元部長、僕は新部長なのにだ。

 卒業式の後、彼女は部室に来る。これがもしかしたら最後の話す機会になるかもしれない。その時、僕はどう話かけようか。おめでとうーー。また会いましょうーー。そんな言葉ばかりが脳裏を過るが、きっと僕が本当に伝えたい言葉ではない。自分でもわかっている。きっと。

 目をつむれば健やかな眠気がやってくる。それもそのはずでここはとても静かだ。

 この屋上には誰も来ない。いや、厳密にいうと来れないとでもいった方がいいか。ここのカギの管理は天体観測研究部部長である僕がしている。多くの生徒が利用する主要校舎から離れたこの校舎は人の出入りもほぼなく、一日を通じて静寂がこの辺り一面を支配していた。たぶん先生もこの場所の存在を忘れているのではないか……。最近、そう思い始めている。ちなみにこの場所でたまに天体観測会をしているのではあるが、部員がとても少ないということもあり、今月はまだ一回もしていない。


 ーー行動すれば未来が変わる。

 これは父さんがこの前、夕御飯の最中にポツリと言ってた言葉だ。もちろんその通りだろう。でも、現実はなかなかうまくいかない。悩めば悩むほど時間がかかるし出口の見えない迷路に迷い混んだような気持ちになってしまう。

 正に今の僕がちょうどそんな感じだった。


「十時五十分ーー」

 不意に見た腕時計が示した時間。彩葉さんの卒業式が終わるまでもうしばらく時間がある。

 そんなことをぼんやりと考えながら僕はまたしばらく青空を見ていた。


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