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キミが見た星ノ空。僕が見た羅針盤  作者: 候岐禎簾
最終章 星をあつめて。翼は大きく前へ
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#13 歩幅の数だけ僕は知りたい

 人生にifもしもはなしだ。結局のところ戻れないのに戻りたいというのは単純に後悔の裏返しなのだと思う。

 今、積み上げた物の数だけ失った物がある。これはどうしようのないことだ。現に僕には恋人がおり、彩葉さんにも恋人がいる。これは今となってはどうしようもないことだ。

 でも、まだ変えられるかも知れない。胸の奥底で膨らむ彼女への想い。言葉を交わすごとにどんどん大きくなっていく。

 今、その想いを僕は必死になって抑えていた――。


 ***


「もうすぐよ」

 他愛のない会話に終止符を討つように彼女は一言そう言った。どうやらこの先に第一の目的地があるようだ。


「この先に彩葉さんが植えた木があるの?」


「うん。木って言っても先月植えたばかりだからまだまだ見た目は苗木みたいなものよ」


「へぇ――。でも見るの楽しみだな」

 こうしているとなんだか一秒一秒がいとおしい。昨日再会したことがまるで夢のようにすら感じる。

 いや、もしこれが本当に夢だったら……。その瞬間、背筋に冷たいものが走った。


「どうしたの、何か顔色が少し悪いような――」


「いや、なんでもないよ。なんだか今この瞬間が夢だったらどうしようって考えちゃって」


「夢じゃないよ。だからこの先も変えられる」


「変えられる?」


「そう。だってそうじゃない。未来は誰にもわからない。奈都也君だってもちろん私にだって」

 その言葉を聞いた瞬間、彼女の物言いに何か引っ掛かるものがあった。もちろん具体的な事なんて思い浮かべやしない。ただ『なんとなく』だ。


「彩葉さんその一言何かカッコいいよ」


「ありがとう。ほらっもうすぐだからガンバろう」


 ***


 これまでずっと続いていたまるでトレッキングコースのような風景が一変して大きな広場のような場所が僕達の目の前に現れた。環境公園としても整備されているのだろう。整備された花壇には華やかな色とりどりの花々が咲き誇っている。そしてその側には青色のベンチがあった。


「彩葉さんが植えた木はここにあるの?」


「そう、こっちよ。来て!」

 彼女は僕の手を強く握りながらそう言った。その時、なんかとても懐かしい気持ちになった。この気持ちはなんだろう。忘れてたような、不意に思い出したようなーー。しかし、うまく表現できない自分がそこにはいた。



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