#6 前に進む輝き
「奈都也君、私ね今はその気になれないの」
あの日、あの瞬間、彩葉さんが言った言葉の意味が最初はよくわからなかった。
たしかに僕は正直、彼女のことが好きだ。それは偽りのない気持ちだ。その事はきっと彩葉さんも勘づいていたはずである。
その状況を踏まえてのさっきの一言。もしかしたらこれは彼女なりの気づかいなのかもしれなかった。『僕が告白をする前に』という意味では――。
「えっ――。彩葉さん、それはどういう……」
少し間をおいて僕はなんとかそう呟いた。想いを伝えようとした矢先の彼女からの一言になんと言い返せばいいのだろうか。その時、満足のいく返答を僕は言うことができなかった。
「どういうもこう言うもないわ。私が今、言いたいのはそれだけだから」
彩葉さんはどこか寂しげな表情を浮かべながら僕とは違う道を歩き出した。
「あっ――。ま、待って!」
そんな彼女を僕は早足で追いかけた。
一応、その日は二人で夜のイルミネーションを楽しんだ。
しかし、さっきの言葉を聞いた僕の心は冷たくなっていた。
結局、その後の学校生活は特に華のあるものではなかった。そうこうするうちに彩葉さんは高校を卒業して僕が部長を引き継いだ。
しかし、だからと言って特に特筆するべきこともなく最後の高校生活も過ぎていった……。
***
広い駐輪場を抜けて彼女が住むマンションへと向かう。おそらくまだ同じ部屋にいるはずである。
何を話そうか。何から話そうか。正直、迷っている。
それにしてもまさか彩葉さんから『手紙』という形で連絡がくるとは思わなかった。
何を今更かとも思ったが彼女いわく『見せたいもの』があるとのことだった。
十年以上前に交換した連絡先は既に不通だったのだろう。その結果の最終手段が手紙だった訳だ。
――ピンポーン……。
インターホンの呼び鈴を押して誰かが出てくるのを待つ。比較的大きなマンションなのだが人の往来は思ったほどではない。
「……」
誰も出ない。それになぜか僕は今、汗をかいている。おそらく緊張してるのだろう。しかし、この道を選んだのは自分自身だ。
また少し間をおいてから出直そう。
二回目の呼び鈴を押した後、時計を見ながら僕はそう決めた。




