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キミが見た星ノ空。僕が見た羅針盤  作者: 候岐禎簾
第三章 秋のすれ違い
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第28話 ドキドキの自宅訪問

「し、失礼します……」


「どぞ――」

 僕の緊張感とは真逆なような感じで彩葉さんは気楽な微笑みを浮かべている。ちなみに僕はこれまでの人生でまだ一度も女性の部屋に入ったことがない。今日が初めての経験である。


「今日、親はいないから――。適当に座っててよ」

 大きなリビングに通された後、彩葉さんはそう言った。一目見た感じ綺麗に整頓されたリビング。ここがこのマンションの最上階に位置していることもあって窓から見える夜景もすこぶる良い。それにしてもまさか彩葉さんの自宅訪問をすることになるなんて……。予想外の出来事ながら嬉しい反面、その気持ちはドキドキである。


「飲み物はコーヒーでいいかしら?」

 大きなソファにバックを置いてコートを脱ぎ、そして台所に立つ彼女はどこか楽しげな表情を浮かべている。その時、僕は自分がケーキを持参していることに気がついた。


「コーヒーをいただきます――。そ、それと実はベーメールルンのチーズケーキ買ってきてます!」


「もしかして私と食べたかったんでしょ?」


「えっ……。は、はい!」

 いきなり核心をつかれドキマギする僕。ここら辺の話術はさすがだと思う。


「じゃあお皿とフォークも準備しないとね。今日は楽しい夜になりそう……」

 一瞬、不適な笑みを浮かべたと思ったあと、彩葉さんはそう言った。


 ***


 ――ゴトッ……。

 五分後、一通り準備を整えた彩葉さんがコーヒーとケーキをテーブルに持ってくる。コーヒーのこうばしい香りが鼻を優しく包み込む。


「さぁ、コーヒーが冷めない内に食べましょうか」

 この言葉が合図となって僕達二人は食べ始めた。


「ところで彩葉さん――。どうして僕と接する時、あんなに機嫌が悪かったんですか?」


「別に奈都也君だから機嫌が悪かった訳ではないの。最近、いろいろとうまくいかなくて……。親は良い大学に入れって言うんだけど高校二年の私は今を大切にしたいの。もちろん良い大学に入るために塾にも行ってるけどなんだか最近、そんな毎日に疲れちゃって――」

 思いもよらなかった彩葉さんの答えに少し意外だなと思った。あの『完璧部長』の彩葉さんにそんな悩みがあっただなんて。でも、そんな彼女の気持ちも痛いほど分かる『僕』がそこにはいた。


「彩葉さん、もし良ければ今度一緒に望瀬町のぞせちょうに行きませんか?」


「えっ……。望瀬町ってあのイルミネーションで有名な?」


「はい、もし良ければですが――。そこに未来への答えがあると思います」


「もし断ったらどうする気かしら?」


「そこまでは考えてません」


「――。ありがとう」

 一呼吸おいたあと、彩葉さんは顔を少々赤らめながらそう言った。


「ところで奈都也君、もうしばらく一緒にいてもらえないかしら?」


「えっ……。いいんですか」


「ケーキのお礼よ。それに……。望瀬町に行く予定もたてないとね!」

 会話に気をとられ過ぎたからだろうか。ふとテーブルの上に置かれたコーヒーを飲んでみると少し冷たくなっていた。


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