第27話 駐輪場の想いは駆ける
――キィィィ……。
自転車のブレーキ音がその控えめな音と共に辺り一面に響き渡る。先程から静かに降り続ける小雨のせいだろうか。夜の帳が包み込む世界は心なしかいつも以上に冷たく感じる。
「あら……。奈都也君?」
一瞬、驚いたような表情を見せた彩葉さんであったがすぐに普段見慣れたクールな表情に戻りながらそう言った。ちなみに彼女の顔をこうしてまじまじと見るとは正直久しぶりのことである。
「彩葉さん久しぶりです。実は今日は……」
慎重に言葉を選びながら僕は彼女に話し掛ける。ここで言葉の選択を少しでも間違えたら恐らくそこで終わりだろう。言葉というのは不思議なものだ。ハッキリと言ったら上手くいかないかもしれないし、もしかしたら上手くいくかもしれない。恐らく相手の心情次第なのだろう。でもだからこそ僕はこの場で彼女に今の想いを伝えなければならなかった。
「奈都也君――。あのね、別に私あの事で怒ってないわよ」
「えっ……!?」
思っても見なかった彼女からの返答に動揺が走る。でもたしかにその後から彼女は僕に対して機嫌が悪くなってしまったような……。
「ここじゃアレだから――。中で話しましょうよ」
「えっ!?」
思いもしなかった彩葉さんの提案に心がドキドキする。まさかこうなるとは思いもしてなかった。
「で、でもお父さんとお母さんが中にはいるんじゃ……」
「あら、今日は偶然二人ともいないのよ。二人ともここ数日、旅行に行っててね。それにその右手に提げている物も気になるし――。二人で食べましょうよ!」
「えっ……。は、はい!」
こうなってくるともう彼女のペースである。いや、厳密に言うと彩葉さんに会話の主導権が移ったと言うべきか。何はともあれ、僕は彼女の家に招待されることになった。




