第24話 言葉重ねる迷い
通りを抜けて一歩裏路地に入ったところに僕達が目指す喫茶店がある。待ち合わせ場所から歩いて数十分後にはもう目的のお店に到着していた。
「喫茶ジャマイカン……?」
橘さんは文字が薄れた看板を見ながらそう呟いた。
「そう、ここが今日の目的地。実はここ父さんの親戚のおじいちゃんがやってるお店なんだ。それじゃあ入ろうか」
そして、二人はドアを開けた。
***
「おやおやこれは……。奈都也君じゃないか!」
そう言いながら丹念に手入れされた髭を蓄えたおじさんが奥から出てくる。この人こそこの店のマスター尾乃立要介さんである。
「尾乃立さん久しぶりです。コーヒーランチを食べに来ました」
「おぉそうか。たらふく食べさせてやる。ところで隣の可憐な女性は君の彼女さんかな?」
「ち、違います――。同級生です!」
僕が訂正するよりも先に橘さんが大声でそう言った。それは事実なのだが、なんだかちょっぴり寂しくなった。
「と言うことは奈都也のガールフレンドさんか。心から歓迎するよ」
マスターは微笑みながらそう言った。
***
「あなたが私を食事に誘った理由、当ててあげようか……?」
席に座ってコップに入った水を飲もうとした瞬間、ふと橘さんが僕に向かってそう言った。きっと誘った理由を薄々感じていたのだろう。
「やっぱりわかった……?」
「もちろん。いい加減、夏宮先輩と仲直りしなよ。私はあなた達の仲が悪くなった理由を知らない。でもね、やっぱり副部長のあなたが居ないと寂しいよ」
「それは……。そうだけど――」
「『キッカケ』を探してるんでしょ?」
「その通り。だから教えてもらいたいんだ。彩葉さんの好きなものを」
「好きなものかぁ……。うーん……」
そう言った後、橘さんは目をつむった。そして数十秒後、大きく目をパッと開いた。
「ベーメールルンのチーズケーキ」
「えっ……。ベーメールルンって緒海商店街にある……?」
「そう、正解。その店のチーズケーキ夏宮先輩大好きなのよ!」
「そうなんだ、ありがとう!」
これは大変貴重な情報だ。なんとか仲直りの口実になりそうだぞ。
「でもね、ここからが大切。ベーメールルンのチーズケーキはね数量限定なの。だからある意味早い者勝ちなのよ」
「そうなんだ……」
「この後、行ってみる?」
「そうだね、そうしよう!」
決めたらすぐ行動。一人で悩んでばかりじゃ答えがでない。今できることを見つけてチャレンジするしかないんだ。橘さんと話してる内にそんな気持ちになった。
「ささっ二人ともお待ちどお様。コーヒーランチだ!」
二人の会話の合間を縫って尾乃立さんがランチを持ってきた。バタートースト三枚と唐揚げ。それとサラダにコンソメスープ、そして熱々のコーヒー。なかなかのボリュームである。
「なんならハンバーグも焼こうか?」
「いえ、また今度お願いします……」
「私ハンバーグもらおうかしら」
「えっ!?」
意外と橘さんって大食いなんだ……。今日また新しい発見があった。




