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キミが見た星ノ空。僕が見た羅針盤  作者: 候岐禎簾
第三章 秋のすれ違い
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第22話 まだ聞こえぬ声

「いらっしゃい!」

 ラーメン屋の暖簾を潜るなり威勢の良い店主の声が聞こえてきた。時間的なこともあるだろうが、店内の客は数人しかいない。


「おっちゃん、ラーメン二つちょうだい」


「あいよ。それと二人での来店記念に唐揚げもつけとくよ!」

 店主はにこやかな笑顔を僕達に向けながらそう言った。


 ***


「ここ、知る人ぞ知るおすすめラーメン店なんだよ。この時間帯じゃないと何分待つかわかりゃしない」

 席につくなり海原はそんな言葉を口にした。たしかに店内に座れる所はカウンター席も含めて合計十二ヵ所ほど。この席数で人気店ならそりゃあ行列待ちにもなるだろう。


「ところで夏立よ、どうして彩葉先輩とケンカしたのさ?」


「いや、それが今月の二十八日は彼女の誕生日なんだ。僕はそれを聞いた時、つい『ふーん』って言ってその言葉を受け流してしまったんだ。その日から彩葉さんは急に僕に冷たく当たるようになって……」


「夏立、それは良くない対応だ。きっと先輩はお前からのプレゼントを期待してそう言ったんだと思う。恐らくかなり勇気を出してその言葉を言ったんだと思うぞ」


「なぁ、海原。僕と彼女はどうすれば仲直りできると思う?」


「ためしにバラを百本贈ったらどうだ?」


「……。財布の中には千円しか入ってない」


「なら――。もうすぐハロウィンだからミイラ男のコスプレをして先輩を笑顔にしたらどうだ?」


「いや、恐らく彼女に殴られる」

 この予想だけは間違いない。怒りに満ちた彩葉さんの鉄拳を食らう可能性がすこぶる高い。


「へい、ラーメン二つと唐揚げ一皿お待ちどう!」

 その時、店主のおっちゃんが美味しそうな料理を持ってきた。


 ***


「まぁ、夏立よ。やっぱり女性はプレゼントに弱い。彼女の好きなものとか分からないのか?」

 ラーメンを美味しそうにすすりながら海原は俺に対してそう言う。


「好きなものか……。よくわからないな」


「なら、あれだ。先輩と日頃仲良くしている人に聞いてみるとか?」


「日頃仲良くしている人か――」

 僕が話せる範囲かつ彩葉さんと仲の良い人物……。こうなってくると出てくる人物は一人しかいない。


「ほら、ラーメン冷めちまうぞ。人間関係だってそうだ。時間がたつほど疎遠になってくるだろ?」


「もし仮に疎遠になっても一度話せばきっとわかりあえるさ」


「立夏よ、お前も言うようになったな。なら、やるべきことは一つだろ?」

 海原は不敵な笑みを浮かべながら俺にそう言った。


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