第19話 食事会とおじいさんの怪談話?
「うぐっ……!」
スプーンでオムライスを一口食べた瞬間、僕は驚いた。美味しい、美味しすぎるぞこのオムライス。どんな調味料を使っているのだろう。とても気になる。
「弥惣吉次郎さん。もし良ければこのオムライスのレシピを教えてくれませんか?」
勇気を出して聞いてみた。
「奈都也君――。だったかな。今は料理に集中するんじゃ。まずは味覚で考えてみぃ。この味の極意を……!」
「ちょっと二人とも。自分達の世界に入らないで。極めてめんどくさいわ」
彩葉さんが的確なツッコミを入れてくる。ここら辺の間の取り方はさすがである。
「はい」
僕は気持ちを込めた一言でもって彼女のツッコミに答えた。
***
「おじ様、料理ご馳走さまでした。とても美味しかったですわ」
食後のコーヒーをいただきながら彼女は弥惣吉次郎さんにそう言う。もちろん俺や橘さんの気持ちも彩葉さんと同じである。
「お、おじ様だなんて――。生まれて初めて言われたぞい。いや、こちらこそ久しぶりに賑やかな食事を取ることができた。ワシからもお礼を言わせてくれ。このキャンプ場は基本的にあまりお客さんが来なくてな。お前さんらが久しぶりの客じゃわい」
「あっ……。そうなんですか――!」
どうりでお客さんが誰もいないわけだ。ここで僕は妙に納得した。
「さて、じゃあさっそく怪談話を始めるかの。まずは電気を消してっと……」
「私暗いの好きじゃないから電気はつけといてもらえるかしら。消すなら私はすぐに帰るわよ」
「おぉ、そこのお嬢さんは暗いのが嫌か。ならつけとこう。他にワシに言うことはないか?」
「ならコーヒーをもう一杯貰えるかしら。とても後味が良かったわ」
「わかった。ちょっと待っとくんじゃよ。コーヒー豆を挽いてくる。だから少し時間がかかる」
そう言いながらおじいさんはミニキッチンへと向かった。
***
「さて、では気を取り直して。これはあるタクシードライバーが真夜中に遭遇した怖い話じゃ――!」
「あっ……。わ、私、その話を知ってます。それって――!」
今度は橘さんが弥惣吉次郎さんの話に待ったをかけて話し出した。
「あぁ、それはワシがこれから言おうとした怪談話なのに。なら今度は夜の学校の……!」
「夜の学校っていろんな怪談話がありますよね。例えば――!」
ここぞとばかりにまた橘さんが話始める。
橘さんが話を始めると終わる気配がまるでなくすぐに三十分が経過した。
「あぁ――。また隣のお嬢さんに言われてしもうた。ワシの敗けじゃ。橘さんとやら。どうしてそんなに怪談話を知ってるのかの?」
「私、そういう話とっても好きなんです。あっ――。キャンプ場と言えば……!」
橘さんの話は終わらない。




