表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キミが見た星ノ空。僕が見た羅針盤  作者: 候岐禎簾
第一章 春の出会いと部の再生
2/60

第1話 五月の空は何色?

「え――。ここはこうでありまして――」

 退屈な授業が続く昼前の教室。先生の授業は右から左へと流れていく。聞いているようで聞いてない、頭の中は真っ白。これが今の僕の心境といったところか。窓際から見える空は今日も青く透き通っている。まるで夏が一足早く来たような、そんな空だ。グラウンドではどこのクラスだか知らないが体育の授業をしている。


「はぁ――」

 なんの変鉄もないこの光景。ただ一つ違うことと言えば今日のクラスの出席者だろうか。いつも以上に少ない。でも、おおよその予想はつく。今日はゴールデンウィーク明けだからだ。休んだクラスメイトのもう一日休みたいという気持ちもわからん訳ではない。


「ここテストに出るから覚えとけよ。よし、今日はここで終わり。次回は25ページからな。日直号令」


「起立~。礼!」

 先生がいなくなった途端、急に賑やかになる教室内。あるものは外へ。またあるものは仲の良い友達の元へ。思い思いの行動をとっている。


「おい、早くしないと売店のコロッケパン売り切れるぞ!」

 隣でクラスメイトの海原うみはらが騒いでいる。普段なら僕も彼と一緒に大急ぎで大食堂横の売店に直行しているはずだが、あいにく今日はそんな気分ではない。実は最近、気になっていることがあるのだ。


 ――あの四月の朝に出会った女性がカバンに付けていたキーホルダーが。


「おい、海原。気になることがあるんだ」


「何だよ。言ってみろよ」


「キーホルダー」


「はぁ!?」

 予想通りのリアクションが返ってくる。そりゃあ何も知らないクラスメイトに聞いても意味がないだろう。やっぱりこういう事は本人に直接聞かないと。でも――。彼女は今どこにいるのだろう。不思議なもので逢うことができたのはあの朝の日の一回きりだ。僕はかなりの頻度ひんどであの『近道』を使うのだが、未だにあの女性に会えてはいない。


「海原……。この学校で色白の女の子知らない?」


「お前なに言ってるんだよ。そんな子たくさんいるぞ。寝ぼけてるのかよ」


「だよな――。それだけじゃあわからないよなぁ」

 そう呟きながら天井を見つめる。まだ真昼なのに煌々と輝く電球がとても眩しかった。


「おい、夏立なつたち。話は変わるけどこれ見てみろよ」

 そう言いながら海原は一枚のプリントを見せてきた。

「――。天体観測会?」


「あぁ、そう。夏休み中の八月にあるんだって。お前行く?」


「海原。今、五月だ。まだ早い」


「おいおい、そんなことはないぜ。夏休みなんてすぐだよ。まぁ、夏休みを迎えるためには期末テストを乗り越えないといけないけどな」


「期末テストかぁ――」

 キーホルダーに期末テスト。悩みが尽きることはない。それにしても天体観測会。実は興味がある。海原の前ではつい強がってしまったが。


「売店――。行くか」


「夏立、もう惣菜パン類は売り切れてるぞ」


「いいよ。コッペパン二つ買うから」

 回りを見渡すと閑散とした教室内。どうやら海原と僕は完全に出遅れたようだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ