第17話 ドキドキの丘の上の廃墟
ガサッ――。ゴソッ――。
半ば獣道になっている廃墟へと続く道を僕は進む。それにしても腹が減った。こんなことなら橘さんにお菓子を分けてもらえば良かった。しかし、もう過ぎたこと。今はおじいさんを見つけて食料を分けてもらえるか聞かなければならない。
「よく見えてきたぞ。あれか――!」
丘を登りはじめてから約五分後、僕は廃墟に到着した。
***
「弥惣吉次郎さん――!」
とりあえず大声で叫んでみる。しかし応答はない。廃墟といっても大きな建物ではない。これは昔使われていた倉庫の跡だろうか。屋根は崩れ雨ざらしになっている。それにしても弥惣吉次郎さんはここで何をしているのだろうか――。
「弥惣吉次郎さん――!」
「静かにせぇ!」
「ひぃぃぃ……!」
その時、いきなり後ろから怒鳴られた。振り返るとそこにはヘッドライトを頭に装備した弥惣吉次郎さんがいた。
「そんなに叫ばんでも聴こえとる。どうした若いの。何かあったのか?」
「そ、それが……」
そのあと五分ほど僕はおじいさんに事情を説明した。
***
「なんじゃそんなことか。ワシの若い頃は……」
「あぁ、その話は置いといて下さい。とりあえず何か食料を分けてもらえませんか?」
「食料か。ちょうどいい。ワシもこれから晩御飯のオムライスを作るところじゃ。一時間後、お仲間を連れて管理小屋まで来なさい」
「えっ、本当ですか。ありがとうございます!」
まさか弥惣吉次郎さんが夕御飯をご馳走してくれるだなんて。それはとても嬉しいぞ。
「おぉ、そうだ。夕食後、ワシがとっておきの怪談話をしてやろう。夏といえば幽霊・怪談話。にいちゃんらもそれ目当てにここに来たんじゃう!」
いや、違います。天体観測です。と全力で言おうと思ったのだが夕食をご馳走してくれる手前、そうも簡単にはいかなかった。
「ちなみに弥惣吉次郎さんはここで何をしてたんですか?」
「ワシか。それはあれを見ればわかる」
そう言いながら指差す先にあったもの。それは――。
「イ、イノシシ!?」
ライトに照らされた檻の中には大きなイノシシが捕まっていた。