第15話 キャンプ場の謎
「ちょっと奈都也君来て!」
夕食で使う食器類を念のためにもう一回洗ってる最中に彩葉さんに呼ばれた。キャンプ場と言ってもテント類は最初から設置されていて僕達が設置するような感じではなかった。だから僕は空いた時間を利用して食器を洗っていたのである。
「彩葉さんどうしたんですか?」
急いで彼女の元へ駆け付ける。
「見てよこのトイレ。さっき大きな蜘蛛がいたの!」
「蜘蛛ですか……」
「そうよ。きっとあれはアシダカグモよ。私、あれダメなのよ」
「はぁ……」
蜘蛛が嫌いな割には蜘蛛の名前を知ってるのか。そんな彼女のことがなぜかとても可愛く思えた。
「そ、こ、で――。奈都也君にお願いがあるの。もっと設備の良いトイレはないのか管理人さんに聞いてもらえるかな?」
「まぁ、別にいいですけど」
「ならお願いね」
彩葉さんの返事を背中で聞きながら俺は彼女の願いを叶えるために管理人がいるペンション風の小屋へと向かった。
***
――チャリンチャリン……。
受付台に置かれていた呼び鈴を勢い良く鳴らす。約一分後、管理人のおじいさんの弥惣吉次郎さんがゆっくりと出てきた。
「君はさっき受け付けに来た若いにいちゃんか。どうしたのじゃ」
年齢は軽く七十歳を越えてそうな弥惣吉次郎さんはポカンと口を大きく空けながらそう言う。
「キャンプ場に設置されているトイレより綺麗なトイレってないですか?」
「トイレか。ワシが若い頃はトイレなんてなかったぞ」
「いや、そうじゃなくて……。ってトイレくらいあるでしょうよ」
「おぅ、そうかの。トイレならこの管理小屋のを使うといい。キャンプ場よりも新しくて綺麗じゃぞ」
「わかりました。ありがとうございます」
「それと……」
「それと?」
「さっき良い忘れたのじゃがあの小高い岡の上にある廃墟には近づくでないぞ」
いきなり弥惣吉次郎さんは不思議なことを言い出した。
「どうしてですか?」
「にいちゃん聞きたいのか」
「……。止めときます」
その時、俺はきっぱりと断った。
「本当は聞きたいんじゃろ?」
「しつこいですよ」
「そうかの。残念じゃ。でも実は――」
「キャンプ場に戻りますね」
そう弥惣吉次郎さんに告げた後、俺はみんなが待つ場所へと戻った。