9.検証会
教育(という名の拷問)を受けた俺はその翌日家に監禁された。
俺はもちろんそれに対して納得がいくわけもなく、抗議の声を上げる。
「監禁してはないわよ。あんたが逃げ出さないよう見張ってるだけじゃない。ちょうど今日は特にやることもないしね」
それに対してエルサはこの一点張り。
おのれ。俺の自由を奪うとは、極悪非道だ。
こうして俺の監獄生活が幕を開ける。
――――――
正直に言えば今日は俺は家に籠るつもりでいました。
いや、あれじゃないぞ。ニートじゃないからな。ただ単に他にやりたいことがあったというだけだからな。
そのやりたいこととは、
そう……………第一回合成検証会を開催します!
イエェ~~~~イ!
「あんた何やってるの?」
「さあ?なんでしょう」
まず用意いたしますはビン詰めになった光苔。そして粉々になった白石。やっとのこさで素材が揃ったので合成させてみたいと思います!
ここまでくるのは長かった…………!
そして、合成してみようと思うのだが……………あれ?どうやるんだろ。
調合とは違うもんな。俺のイメージでは六芒星みたいな陣の上でやったりする感じなんだけど。
……………………ちょっと中二病だったな。すんません。
「あんたホントに何してんの?」
「合成」
「合成ってなに?」
「え?」
あれ?てっきりこっちの世界の奴らならなんか知ってるのかと思ってたのに、知らないのか?
ヤバいな。ホントにヤバい。
……………………………どうやったら合成できんの?
頼りにしてたのにぃ~~!やっぱエルサ役に立たねぇ~~!
「今悪口言った?」
「滅相もございません」
悪口だけ心読んでくるからよりたちが悪い。
まぁこんなことで諦める俺ではない!むしろ想定の範囲内だ!
こういうのは人間の勘と努力の末に
「ふ~ん、こんなこと書いてあるのね」
「て、うおぉい!?なに勝手に読んでんの!?」
「なに?この取り扱い説明書って書いてあるところ」
「人の許可も貰わずに取り………………へ?取り扱い説明書?」
「取り扱い説明書」
「ホントに?」
「ホントに」
「寄越せ」
「ほい」
エルサから合成術を受けとる。そしてエルサが読んでいたページを開く。そこにはこう書かれていた。
※※※※※※
《合成の書》取り扱い説明書(付属)
・素材の量は決して等配分というわけでもなく適当な量で構いません。砂粒ほどの量でも合成は可能です。
・よほどのことがない限り失敗はありえないのでご安心を。本当によほどのバカではないと失敗はしません。すげぇバカがこの世に存在しない限りは大丈夫です。
・実際に合成を扱うことができるのはこの本の持ち主のみです。他のやつらがどれだけゴミクズ並に扱おうが合成はできません。
・なお合成する場合は素材を○で囲んでください。そのあとは成功するイメージをしてください。なんというか1つにな~れ的な感じで。
・この本は決して燃えたり濡れたり消えたり潰れたりしません。
※※※※※※
「ちょ、ちょっと!?いきなり本を破こうとしたら破けなくて潰そうとしたら潰れなくてしょうがないから地中の奥底に沈めようとする勢いで何やってるの!?」
「うるせぇ!この本はクズだ!俺が正義の名の元に消し去ってくれる!」
「私にはあんたが孤独で寂しい思いをしているゾンビにしか見えないんだけど!」
「それどういう設定!?逆に聞きたいんだけど!」
俺が本を破こうとしたら破けなくて潰そうとしたら潰れなかったから地中の奥底に沈めようとしたらエルサが羽交い締めにしてきた。
なんかこの本腹立つんだよ!無駄に一言余計だし!しかもイメージで合成させんの!?子どもの遊びか!
「やれるだけやってみたら?さすがのあんたでも失敗はしないでしょ。……………………………………多分」
「おいぃ!多分ってなんだ!あれだろ、遠回しに俺のことすげぇバカって言ってるだろ!」
「違うわ。あなたはすごいバカではない。魔王級のバカよ」
「悪化しとるわ!」
魔王級ってなに!?どんな例えかたしてんの!?まだまともなチョイスはできなかったのか!?てか、エルサの頭の中で魔王どんな存在なの!
「ま、まあやれるだけやってみますか……」
これ以上長引かせたら終わらないので合成スタート!
――――――
「そいや!ほいさ!」
「…………………諦めたら?」
「こんちくしょおぉ!まだまだぁ!」
開始20分。検証は頓挫しております。
だいたいあれだよね。説明が雑すぎるんだよね。なんだよイメージって。アバウトすぎんだろ。
ひたすらいろいろな方法を使ってみたがどれも上手くいかない。
ひとまず休憩しようと腰を下ろすとエルサが本を読みながら声をかける。
「……………あのさ、円を描く必要があるんじゃないの?」
「へ?」
そう言って取り扱い説明書のある一部分を見せてくる。
・なお合成する場合は素材を○で囲んでください。そのあとは成功するイメージをしてください。なんというか1つにな~れ的な感じで。
あ、これってそういう意味なの?円を描けばいい話なの?
「まあやってみるか。ペンと紙貸して」
「トイチで返してね」
「ボッタクリ商人かお前は」
冗談を交えつつペンと紙を受けとる。
その紙に光苔と白石が充分に囲えるくらいの大きさの円を描く。
そしてその円の中に光苔と白石を配置する。
うし、やるか。
意識を集中する。
イメージ、そうイメージするんだ。
合成合成合成合成合成合成合成合成合成合成合成合成合成疲れた合成合成合成合成合成合成ダルい合成合成合成合成
おっと本音が混じってしまった。集中集中。
光苔と白石に意識を集中させていると不意に光出す。
あまり強い光でもなかったがいきなりの不意打ちに目を少し細める。
そして気づけば………………紙の上に丸い水晶玉があった。光苔と白石は無くなっている。
「成功…………でいいのか?」
「知らないわよ。すごいわねこれ。一瞬で別のアイテムになったわね」
水晶玉を手に取る。大きさは手のひらぐらい、綺麗な球の形をしていた。だがなによりその特徴は………………光っている。
いや、ハゲじゃないぞ。水晶玉が光っているんだからな?
「まるでハゲみたいね」
「わざわざ言わなくていいからな!?」
折角心の中で事前に弁明したのに!これじゃ意味ないじゃん!
だが、光っているというのは事実。ひたすら発光し続ける水晶玉。美しいよりも先にハゲを連そ………じゃなくて輝かしさが目立つ。
それはまるでハ………でもなくてハゲのようだった。
あ、言い直した意味なかった。
「本に書いてある通りなら【ブライム】という名の水晶玉だな。たぶん光苔を合成したから光っているとは推測できるけど」
「でもこれ需要あるわよ。発光松明よりも明るいし周りも広く照らし出せる。なかなか便利なアイテムよ」
へぇ~あの光る松明って発光松明って言うのか。初めて知ったわ。すんげーどうでもいいけど。
「……………ふむ」
「どうしたの?」
「なんか頭から突拍子もない発想が出かけていたんだけど……」
「どうせ売ったら金になるとかそんな感じなんじゃないの?」
「失礼だな!」
こんな村で売っても買い手はハンターくらいしかいな……………い。
…………………………………………。
「エルサ、ダンジョン借りてもいいか?」
「え、なんで?」
「これだったらいける気がする」
俺のダンジョン経営が始まる。




