6.訪問者
「ちょっと聞いてるの!?」
「………………………聞いてます」
朝から床に正座をしてエルサに説教を受ける。
エルサは朝から元気いいなぁ~。
その元気を別の方向に向けて欲しいよ。
いやホントに。俺に迷惑がかからないようにさ。
「なんでそんなことをしたのかしら………!?」
状況が読めない皆さんのために簡潔にかつ手抜きで説明しよう。
ダンジョンに行ったらエルサに殺されかけた。
すいません。丁寧に説明しよう。
まずダンジョンに行った理由がですね、無双できるかなーというちょっとした好奇心なんですよ。異世界に来たら無双するのは定番ではないですか。
確かにね昨夜は認めたよ。どうせ自分が戦っても死ぬだろうと。
でもさ、心の中でもう一人の自分が叫んでいたんだ。
無双してぇ~~~!!!
てな感じでダンジョンに行って無双してみよっかという軽いノリで行ったらまぁ見事にボコボコにされかけたよ。ボコボコにされてはないよ?モンスター相手じゃボコボコで済まされないから。
そして命からがら生き延びて戻ってみたら、エルサに殺されかけた。モンスターよりも怖いっす。エルサならモンスター相手に無双できるんじゃね?
「自覚かないようなら八つざ」
「すいません!反省しております!許してくださいませエルサ様!」
刑を食らう前に全力で許しを請う。
同い年の女子相手に情けないとか言うなよ?
この女が本気を出したらそこらへんにクレーターできるぞ。
リフォームの匠も驚くぞ。
ちなみにさっき八つ裂きと言いかけてたような気がするのは俺の気のせいでしょうか?
「今日は家から出禁!一日中反省してなさい!」
「うぇ~~い」
「返事ははい!」
「イエス、マム!」
「…………………………………………………………こいつ殺すか」
「嘘です!冗談です!はい!」
ヤバいヤバいよ!なんかオーラ纏ってるよ!
エルサが超サイ○人に進化した!?
あとセリフがめっちゃ怖いから!
――――――
「それじゃ行ってくるから」
エルサが家を出ていく。
エルサに留守を頼まれて見事に一人ぼっちになりました。
本当に留守を頼またのかだって?
……………………………………………………君は聞かないほうがいい。
「まぁやりたいことがあったから別にいいけどさ」
俺だってニートに成り下がるつもりはない。
やれることはなんでもやろう。
ここに取り出しますは《合成の書》。そして光苔。
もう俺がやろうとしていることはわかっちゃったかな?
昨日やろうと思っていたがやりそびれたこと…………合成の検証。
この本に書かれていた物がこの世界に実際に存在していたのだから合成のほうも充分に可能性はある。
さっそく試してみようとするが………
「しまった。白石を忘れていた」
《合成の書》によれば光苔と白石を合成させることで【ブライム】を生み出すことができる、と書かれている。
ほとんどが図ばっかりで不確定要素ばかりだがやってみないことには始まらない。
そういえば昨日は光苔を採取しただけで終わらせたんだよな。えーと、どうしよ。岩壁を掘れば勝手に出てくるとか言ってた気がするけど外出たら命が無いからなー、俺の。
「おーい、オウマいる?」
頭をフル回転させていると玄関のほうから声が聞こえてくる。
この声はエルサじゃないな。誰だ?
玄関に行きドアを開けると
「よ、オウマ。元気にしてる?」
「すいません。人違いです」
「いやお前オウマだよな!?なんでドアを閉めようとする!」
俺が閉めようとしたら足を挟んで阻止してきた。
仕方なくドアを開けるとシークスが立っていた。
そう言うがシークスよ。
親に不審者を見つけたら関わるなと教わらなかったのか?
「お前街に帰ったんじゃなかったのか?」
「街から来たとは言ったが今すぐ帰るとは言ってないぞ」
「てことは泊まってるのか?でも宿屋無いんだよな?」
「隣村に泊まってそこから行き来している。あまり遠くないから一晩あれば帰れるぞ」
「それにしたって来るの早くね?」
「《クラシック》で死んでたから」
「なにやってんのお前!?」
どうやら酒飲んでてガイジュのおっさんと酔い潰れていたとか。
ちなみに《クラシック》は昨日訪れたガイジュが経営している酒場。
ん?ちょっと待てよ。
「俺もそっちの村に泊まればよかったんじゃ」
「あぁー、それはなー」
良い案だと思って言ったらなぜか歯切れ悪そうにするシークス。
うん?なにかあったのか?
「お前はやめといたほうがいい、うん」
「そう言われたら気になるのが男の性だぞ」
「…………そうか。なら止めない。自分の貞操がどうなってもいいと言うのなら」
「いやー!でも友達の意見は聞いたほうがいいよな!危ない橋は渡らないほうがいいよな!」
シークスよ。何があったのだ?
聞きたくても聞いたら自分の尊厳が失われそうだからやめておこう。
友達の意見は聞くべきだよね!
「で、何の用だ?」
「出禁喰らったって聞いたから笑いに来た」
「すいませ」
「ゴメン!冗談だから!閉めないで!」
俺が閉めようとすると全力で阻止してくる。
この男はどうやら俺にとって邪魔でしかないようだ。
「本当はお前を誘おうと思ったんだよ」
「何にだよ」
「一緒にダンジョン行かね?」
「俺ダンジョンに行って出禁になったんだが」
「あぁ、なるほど。まあバレなきゃ大丈夫だって」
「俺を樹海の底に埋める気か?」
「…………………なんでエルサにバレたときの刑罰まで想像してんの?」
え?なにかおかしいか?
エルサだったら本気でやりかねないと思うんだけど。
「そういえばキーンとニムルは一緒じゃないのか?」
「あいつらは《オルノ》でやること残ってるから今日はいないよ」
「《オルノ》?」
「さっき言った三途の村だ」
「あぁ呪われた村か」
もうすでに俺の頭の中で超危険区域に指定されている。
何があっても一生行くもんか。
「で、なんで俺を誘おうと?」
「いや、昨日エルサに責任押し付けちゃったからさ。俺もなにかできないかと思って」
「そんな律儀にしなくていいのに」
申し訳なさそうな顔をするシークス。
それはしょうがないだろ。むしろ俺が迷惑かけて申し訳ないと思ってるんだから。
なんだかんだ言って根はマジメなんだな。
「しょうがないな。付き合うよ」
「お、いいのか?」
「お前が誘った話だろ」
「いや、樹海の底に埋められても大丈夫なのか?」
「冗談だからな!?そこは気にしなくていいところだからな!?」
冗談のつもりで言った話なのに本気で受けとるのか。
さすがのエルサもそこまでは……………………………しないよね?
「よし!本人の了承も得たことだしさっそく行くか!」
「ちょっと待て!俺武器を持ってないけど大丈夫なのか!?」
「はなっから戦力に数えてない!」
「腹立つけど本当のことだから反論できねぇ!」
そんなこんなでダンジョンに行くことになっちゃいました。