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47.新装備

森林ダンジョンのDエリア。

そこは蒼乱級のモンスターが出現する区域。

そのため新米ハンターは近寄ろうとはしない。


そのエリアに足を踏み入れた二人がいた。



「というどうでもいい前置きは置いといてさっさと行くか!」

「あ、スルーでいいのね………」



今日は昨日のリベンジマッチ。

と言ってもいろいろとめんどくさいので他のモンスターとは遭遇せずに千輪の花を咲かせるモンスター――リルグリールの討伐を最優先に行う予定だ。

ルゴドルドから奪われた物を取り戻せるのなら取り戻したいもんだけど1度奪われたら取り戻せたためしがないとか。だから奪われた剣は速効で諦めた。

ところで、肝心の俺たちの装備と言うと………



「でさ、エルサ。その鞭いったいどこで手に入れたのさ?」



『エルサ 装備変更・剣→鞭』



「これはイーナから借りたのよ」

「大丈夫とか言っといて結局借り物かよ!………あれ?でもイーナなら新しい剣作ってくれたんじゃ」

「残念ながらインゴットやら素材やらが足りないらしいのよ。元々周りが森で囲まれてる村では鉱石類は集まりにくいだろうし」



確かに言われてみればその通りかもしれん。



「でも鞭って……エルサ扱えるのか?」

「まあ学園で全種類の武器は一通り習得したわね」

「マジで!?それって強制……?」

「大丈夫よ。授業は選択式だから自由。というか私ぐらいだったわね。全武器の授業受けたの」

「だろうな!それが一般だ!」



しかもたった1年でそれをやり遂げるという人外さ。

改めてエルサは普通ではないと思い知らされる。

ちょっとだけエルサの人外に慣れたかも。



「オウマのほうはそれ使うことにしたのね。名刀」



『オウマ 装備変更・剣→【不知火】』



「ん、本当は売る予定だったけどこうなったらしょうがない。それに元々俺の世界じゃ刀が主流なんだよ」

「へー、それはまた変わってるわね」



俺は盗賊から頂戴(強奪)した刀【不知火】を腰のベルト差している。ついでにあのブックホルダーのベルトもつけて【合成の書】を入れている。



「ちなみになんでそのベルトもつけてるの?邪魔じゃない?」

「そんなの決まってんじゃん!よくあるじゃん、衣装変えやらイメチェンする主人公。そういうときって大抵主人公が修行して強くなりましたよー的なテンプレ!ワン○ースとか!」

「あんたの世界のテンプレなんて知らないわよ!というか特に大した理由ないじゃない!」



まあ俺がイメチェンしたからと言って確かに強くなるもんじゃないけどな!しかもイメチェンて言うほどイメチェンしてないし!

でもさ………なんかやってみたかった。

おいそこの中二病って言ったやつ、覚えてろよ。


さすがにぶっつけ本番で新装備を試すつもりはない。手始めにザコ相手に刀や鞭で闘う。

最初は剣も刀も同じだろーとか思ってたけど想像以上に難しいわこれ。重さも違うし刀はそもそも片刃だし切れ味は刀のほうが上だけど剣と違って使い勝手が変わってくる。

そしてそれはエルサも同じ、はずなんだけど…………。

めっちゃ使いこなしてました。そりゃあもういつも鞭を使ってたんじゃないかと思うぐらい。鞭で首を絞めたり、痛めつけたり。

そのことについて聞いてみたら。



「トレニター学園で全武器の講習は一通り受けてマスターしたから」

「1年間で可能なのかそれ!?」

「そういえば同時期でこんなことしてたの私ぐらいだったわね」

「そりゃあそうだろうな!」



エルサに常識という名の2文字は存在しないのか。

あと余談だけど



「え?俺が倒すの?」

「鞭じゃ相性悪くてね。討伐対象が植物類だから斬撃系統の武器のほうがダメージの通りがいいのよ」

「でもほら、そこはさ。エルサだから鞭で倒しそう」

「私にも常識はあるから!できることとできないことってのがあるでしょ!?」



こんな感じで俺がメインで闘うことになった。

いやはや、いくらエルサのサポートがあるとは言え蒼乱級と闘えってか………。死ななきゃいいなー。


とまあおNEW装備をお見せしたところで千輪の花採取クエストいってみよー。




――――――




「あれが千輪の花?」

「そうよ。大きさは普通の花とあまり変わらないから下手に攻撃を当てないようにしないとね」



俺たちは見上げてそこにある花を見つめる。

千輪の花はカーネーションに似ており色がエルサの髪の色と同じ淡い青色。ただ大きさは俺の知ってる普通よりちょい大きめ。とまあここまでくるとただの花だな。



「………………………あれを採んの?」

「………………………あれを採るのよ」



…………………………咲く場所以外はただの花だな。


俺とエルサの目の前には2メートルを越える大きさを持ち大きな口を開けその体(茎?)から触手(蔓?)を2本生やし、その頭に千輪の花を咲かせた植物……………モンスター《ブルングルズ》がいた。



「なんかキモいぃぃ~~~!」

「さて、さっさと倒しますか。ほら、触手が飛んでくるわよ」



え?と思うと同時にブルングルズが触手を飛ばしてきた。



「ぬおぉぉ~~~グハァ!」



触手が体に当たる寸前にエルサが俺を蹴飛ばして接触を避けることに成功した。結局俺はダメージを受けたが。



「そこは触手を蹴るところじゃねぇの!?」

「うるさいわね!咄嗟だったんだからそこまでできないわよ!」

「咄嗟で人を蹴るのは人間としてどうかと思うんだけど!?」



そんなことを喋っている間にも触手の二射目が飛んでくる。今度はよく見て半身をずらすことで回避した。回避技術に関してはエルサにとことん叩き込まれてきたから少しは自信がある。

俺はようやくこのタイミングで刀を抜く。【不知火】の赤い刀身が今は心強い。

再び触手が飛んでくる。また半身をずらして回避。そして回避ざまに全力で刀を斬り込む。



「フンッ!」



思ったより力が入ってなかったか半分ほど食い込んで止まった。すぐさま刀を引き抜き触手から距離をとる。



「ちょっと下手くそ!もっとうまくやってよ!」

「うるせぇ!攻撃を受けてないだけでもすごいと思え!」



実際少なくともミラノ襲撃事件のときだったならば俺はこんなうまくは立ち回れなかっただろう。エルサの地獄の猛特訓の成果があったってもんだ。



「ブルングルズの弱点はあのデカい口の上にあるコブ!触手は全部私が処理するから一撃で決めなさい!」

「んな無茶な!?」

「カウント!3!2!1!」

「ちょ、ちょっと待てぇ~!」

「………0!」



0と叫んだ瞬間にエルサは前に躍り出た。ブルングルズはそれに気づいたかエルサに向かって触手を繰り出してくる。

エルサは1度足を止めたかと思ったら鞭を動かした。動かした、というのは鞭の軌道が見えなかったからだ。そして数秒遅れで当たりかけた触手が思いっきり弾かれる。

うおぉ!?鞭で弾きやがった!

だがさらに2本の触手も襲いかかる。エルサはそれでもバックせずに立ち位置は変えないまま再び鞭を持った右手を動かす。それだけで鞭は2本の触手を絡み取っていた。そしてエルサはそれを思いっきり地面に叩きつける。

……………………うん。心配するだけ無駄だな。


俺は邪魔にならないように横側からコブを狙う。回りこんで走った瞬間に目の端から飛んでくる物が。

て、触手ぅ!?



「うおぉお!?」



驚きで地面に足を引っかけて転んでしまう。次の瞬間、頭上を触手が通りすぎる。

いったい何があったと思いエルサのほうを見ると鞭を振り抜いたエルサの姿があった。

………もしかして鞭で弾いた触手が飛んできたのかこれ。

その直後にエルサから声が飛んでくる。



「ゴメン!そっちに触手いった!」

「言うの遅いわ!死ぬかと思ったぞ!」



軌道が俺の脳天だったからもし転んでなかったらと思うと夜も眠れねぇよ!いやまだ寝てないけども!

俺は即座に立ち上がり触手に向き直る。

今俺とブルングルズ本体との間にブルングルズの触手3本に大立ち回りするエルサ、そして俺の目の前にある触手がある。

ブルングルズ以外と器用だな!3本と1本でわかれて二人を抑えるかよ!

……………さて、いつもなら全力で逃げたいところだけども



「すぐそっちに行くから少し待ってて!」

「いや大丈夫!そっちやってろ!」

「んなっ……!?」



俺はエルサに目で訴える。エルサはそれを感じとったか自分の目の前にある敵に集中をし出した。

俺はそれを見て自分の目の前の触手に集中する。



「いつもなら逃げるけど、もうそれは止めたんだ」



刀を眼前に構え少しずつ距離を詰める。

ベルトに引っかけてある物も目で確認し次にとるべき行動を頭で組み立てる。



「頼ることに慣れたら変わることを捨てたも同然。頼るだけじゃダメなんだよ。自分でやらなければならない。だから―――」



一応作戦は立てたけど、いつにもまして危ない作戦だなぁ……。でもまあ、こういうのはあれだな。

死ぬよりマシだ。



「――――――お前は俺がぶっ潰す!」



次の瞬間にブルングルズ本体に向かって全力疾走。

それを防ぐようにして触手が俺に向かって飛んでくる。

俺は触手の先だけに意識を集中させる。刀の構えを数㎜単位で調整。衝突まであと3秒。いや2秒。

当たる、その瞬間――――。



「こんのぉお!」



ガキィ!

刀で触手をパリィする。刀の先が触手の先端を捕らえ横に弾き飛ばす。俺は少し体が揺らいだが体勢を無理矢理立て直し構わず全力疾走を続ける。



「エルサ、蹴ろ!」

「え?はぁあ!?」



エルサはこっちを振り向き驚愕の表情を浮かべたが言葉と状況だけで判断したのかこっちに向かって正面を変える。

おいおい、それじゃ触手の攻撃受けるだろ、と思ったのも束の間、エルサの背中に向かってくる触手が。

エルサはそれらを目だけを後ろにやる。そして体は俺に向けたまま右手の鞭で2本の触手を絡み取り、左手で1本の触手を鷲掴み、足で踏みつけた。

そしてエルサは残った右足をこちらに差し出してくる。

俺はその足にあまりエルサに負担がかからないように勢いを殺さずに自分の両足を乗せる。

エルサは少し顔をしかめたがうまく体のバランスをとってそのまま蹴り飛ばす。

いわゆるオーバーヘッドキックのボール人間ver。

良い子の皆は真似しないでね♪


そして触手も飛び越えた先には――――弱点であるコブが。



「うおぉお!」



コブに向かって刀を思いっきり突き刺す。緑色の液体が飛び散り体のところどころに付着する。俺は突き刺した刀をそのまま抜かずに斬るようにして横薙ぎに斬り払う。

再び液体が飛び散った。

刀を抜いた反動で地面に落ちそうになる。

そこへブルングルズが大きく口を開けて俺を飲み込もうとする。


………っ上等!


俺は右足と左手でブルングルズの口を一時的に抑え右手でベルトにぶら下げていた――――【エクセード】を取りだしピンを引き抜く。


―――今回用いた【エクセード】は10倍。今朝でちょうど【アクアーブ】の中に爆魚が10匹集まったことで合成して製作に成功した。予備知識だけども、現実にある手榴弾なんかと違って【エクセード】はレバーというものが存在せず、ピンを引き抜くだけで爆発を引き起こせる。―――


その【エクセード】をブルングルズの口の奥に投げつける。次の瞬間、凄まじい轟音。そしてそれに続き爆発が起こり爆風で俺は吹き飛ばされる。



「うおぉ!ガハッ、いっつぅ~~」



地面に背中から倒れる。その痛みに顔をしかめるがすぐに体をお越しブルングルズの生死を確認する。

そこには俺がいつの間にか落とした刀を左手に持ち倒れたブルングルズのコブに突き刺しているエルサの姿があった。右手には鞭が握られたまま。



「エルサ!ブルングルズはどうなった!?」

「えぇ、無事に討伐完了よ」



エルサのその言葉を聞いた瞬間に俺は安堵の表情を浮かべる。

やっぱり1ヶ月経っても慣れないものは存在する。というか1ヶ月経った今でも戦闘経験はあまりない。

普通の異世界物の小説って1ヶ月あればすごい数闘ってるよな主人公。なんか俺差別されてる気がする。



「あ、そういえば千輪の花は?無事?」

「無事と言えば無事ね。たく、【エクセード】なんて使えば採取対象の千輪の花まで爆発に巻き込むところだったじゃない。なんか爆発の威力は前より上がってるけど」

「うっ………すまん」



エルサはブルングルズの死体に近づくと頭に咲いている花をブチリとむしとった。

それを手に持って俺の元に来る。



「これでやっと終わりだな。あ、ブルングルズの死体はどうしよう」

「今さら何を言ってるのよ。モンスターの死体は放っておいてもダンジョン自体がその死体から養分を吸い数時間で自然消滅する、………これ筆記に出るからね」

「んな!マジかよ!」



俺は必死に頭の中に刻みつける。


まあとにかく無事クエスト完了ってことで。

予告ですがあと2話程度でビザノ編は終了。その後にちょこっとだけ《その後のシークス編》を書きたいと思います。

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