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44.恋慕心

そんなこんなで無事にビザノに着くことができた。

ロネは独特な女の子で………。いや、エルサもイーナも充分独特だけども。

ちなみに聞いた話、ロネはどうやらクリエイトハンターになるらしい。まあ自分で料理人って言ってたくらいだからねー。何はともあれ同じ学園に入学する友達ができたのは嬉しいことだ。これでぼっちにならずに済む!



「とりあえず村長のところに向かうわよ。依頼されてたやつを処理しないといけないし、何も言わずにここに滞在するつもりもないから」



エルサがそう言って先頭を歩く。

確かエルサはピザ……ではなくビザノから依頼を頼まれていたんだっけか。その時に道でも覚えたのか?


少し歩いた先に周りとは違う印象の家があった。どうやらここが村長の家みたいだな。

………………………………。



「なんで渋い顔してるのよ?」

「村長にはいい思い出がないからなぁ…………」

「忘れなさい。お祖父様に関する情報、存在全て忘れなさい」

「自分のじいさんの存在を無くそうとするなよ!?」



まあ対面してみるに越したことはないだろう。

そう思い家に入ろうとするとなぜかエルサが俺に先を譲った。

やっべぇ。すんげぇ嫌な予感がする。

恐らくイーナもロネも悟っただろう。



「エルサ?いきなりどうしたのかな?」

「いや、なんとなく、ね?」

「よし、エルサ。先に入ってもらおうか!」

「嫌よ!先に入りなさいよ!レディーファーストって言うでしょ!」

「その言葉の通りならエルサが先に入るべきだと思うんだけどなぁ!?」



レディーファーストの意味を履き違えるでない。



「っ!それならイーナ、お先にどう!?」

「嫌」

「真顔で拒否られた!」



イーナ、なかなか精神的にくる断り方したな。

さすがだ。変なところでドSパワーを発揮してきたな。

ちなみにイーナはたぶん俺の目測半分Sで半分Mだと思う。



「それなら、ロネは…………!」

「グボハァ!?」



エルサの言葉が続くことはなかった。

なぜなら、家のドアがいきなり開いたかと思うとそっからいきなり後頭部に蹴りをくらったから。

俺はその勢いで思いっきり倒れる。



「……っ!誰だ!俺の後頭部に飛び蹴りを放ったやつは!」

「ドアに背中向いてたはずなのによくそこまで具体的に状況を理解できたわね」

「日々の、賜物」

「イーナちゃん?どういうこと?」

「エルサは、いつも、オウマを、蹴るから」

「んなっ!誤解よ!殴ってるだけよ!」

「まず女性陣は俺の心配してくれねぇの!?」



あまりの扱いに涙が出そうだ!

てか今までイーナは見てみぬふりしてたのか!?

援護してくれよ!



「ハッハッハ。若者は元気でいいなぁ!」



高らかな声が聞こえ振り向くとそこには笑っているじいさんがいた。おい、じいさんが蹴った犯人だろう。



「あ、村長。お久しぶりで」

「エルサか。ジエルは元気にしてるか?」

「いやぁ、元気すぎる余り蹴ってしまいそうですよ」

「相変わらず仲のいいことだな!」



あとで聞いた話だけどジエルというのはエルサのじいさん、つまり村長の名前らしい。やべっ。初めて知ったわ。



「しかしなんでもかんでも蹴るのはよくないぞ。限度は覚えておきなさい」

「初対面のうえ不意打ちで飛び蹴りやった人が何言ってんの!?」

「あれはコミュニケーションだからセーフ」

「物は言いようか!」



エルサが苦手そうにしている理由がわかった。

めんどくさいじいさんだ。村長というのはめんどくさいやつしか勤まらないのか。

というかこのじいさん本当に老人なのか疑わしい。

村長と同年代と言うが元気すぎるだろ。

ほら、イーナとロネなんか関わろうとすらしないぞ。



「で、村長。これ頼まれてたやつです」

「おぉ、ありがとう。どうする?1日ぐらい泊まっていかないか?」

「NO、パス、拒否する!」

「何の、三原則?」

「オウマくんは遠慮ないね」

「それじゃ、有り難く」

「俺の発言スルーされた!」

「オウマ、よく考えなさい。そろそろ夜になるわ。目の前にベッドや料理があるのにわざわざ野宿するとでも言うの?言わないわよね?」



うぐっ……。エルサの言うことがめっちゃ正論すぎる。



「というわけでお言葉に甘えさせてもらいます」

「気楽にな」



とりあえず言えることはこのメンバーでの俺の立ち位置がかなり低いということだな。




――――――




じいさんに提供して貰った家に入る。

そこはそれなりの広さがあったから4人で生活する分には問題なさそうだ。



「んじゃ、疲れたからしばらく寝ようっと」

「そういえば」



早速疲れを癒すため寝ようとするとイーナが突然今思い出したかのように言った。



「どうした?」

「オウマも、同じ家で、過ごすの?」

「何か問題でも?」

「確かに男の子と一緒の家で過ごすのって抵抗あるよねー」



ロネまで同意し出した。

おいおい、何を言うか。



「なんにも問題ないだろ?」

「なんでオウマくんはそんなに抵抗なく受け入れてるの?もしかして下心?」

「1ヶ月間同棲してれば下心なんかなくなるぞ。」



今さら何を言うんだ。それこそ今さらだろうに。

何故かイーナはエルサを睨む。それに対してエルサは目線をわかりやすく剃らす。珍しい光景だな。

その様子を見てロネは何か理解したように微笑む。

今思えば同棲に恐らいほど抵抗が無くなった気がする。

でも1ヶ月間同棲してみ?下心なんざ未来永劫なくなるから。



「なるほどなるほど。もしかしてオウマくんとエルサちゃんって付き合ってるの?」

「グボハァ!?」



この効果音は決して驚きで吹いた音ではない。エルサに殴られたことにより出た音です。

漫画であればここで壁に顔がめり込んでる事態になる。

でもここは借家だからその展開は無しで。



「ちょちょちょっと!そ、そそそそんなわけないじゃない!」

「そんなわけないんだから殴るのやめてほしいなぁ!?」



なんでそんなに動揺する必要があるんだよ!

これ絶対俺被害者だよな!?



「ふぅ~~ん、そっかそっかぁ」

「……………ロネ?いったいどうした?」

「…………ねぇ、オウマくん?今晩、私と一緒に寝ない?」



そう言っていきなりロネが左腕を抱いてきた。

胸を押し付けて。ちなみにロネは巨乳。

俺は思いっきり顔を赤くする。



「んなななな!ロ、ロネ!?いきなり何を言ってんの!?」

「だってー、エルサちゃんと付き合ってないんでしょ?なら別に構わないよね?」

「いやいやいや、おかしいから!付き合ってなかったらなんでそうなんの!?」

「あ、それとも一緒にお風呂のほうがよかった?」

「いえ、それは間に合ってます」

「……………………………なるほど、経験済みか」



ロネが俺の腕を抱いてまま小声で呟く。

思わず真顔で答えてしもうた。

ロネはいったい何がしたいだよ!

そこでイーナが割り込んできた。

おぉ!助け船か!と思い期待の目をしたのだが……………何故かイーナは俺の右腕をとるとそのまま腕を絡ませて胸に引き寄せた。表現を変えて言ったけど単刀直入に言うと俺の右腕を抱いてきた。



「イーナさぁ~~ん!?」

「オウマは、渡さない」

「ちょっと待とうか!会話は成立させようぜ!コミュニケーション大事!」

「私も、一緒に、寝る」

「会話を成立させろって言ってんだろぉがぁあ~~!コミュニケーションなめんなよ!」



イーナとロネが無意味に火花を散らす。

人を巻き込まずに勝手に勝負してくれ!

俺が巻き込まれる意味がわからん!

あ、あ、あ!エルサのバックに阿修羅が!阿修羅がおるで!



「オウマくぅ~~ん?何をしているのかなぁ?」

「ちょっと待て!これは俺は関係ない!というか何でエルサが怒んの!?そこ納得いかないぞ!?」

「…………へぇ、ホンットに心当たりがないと、そうなんだー、ソウナンダネー」



ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。

俺の経験と身体と脳裏と直感が告げている。

次の返答次第で、俺は………死ぬ。

よし、ちょっとだけ脳内シミュレーションしてみようか。


1.『それよりも飯食おうぜ!』

→『大丈夫。オウマは食卓にいないから』


どうやら俺は食われる側らしい。


2.『…………!(全力ダッシュ)』

→『…………………(超高速ダッシュ)』


リアル鬼ごっこになったら絶対に勝てやしない。


3.『サッ(イーナとロネを盾に)』

→『ドガッ(盾が無いかのようにワンパン)』


エルサの前では盾は無いも同義だろう。


どうする!?どうする!?どうする!?

その結果、導き出された答えは………!



「もしかして………嫉妬してるの?」



4.『もしかして………嫉妬してるの?』

→GAME OVER


一番やってはいけないことをしてしまった………。


俺は顔を青ざめながら顔をあげるとそこには何故か驚きと驚愕の表情をしたエルサがいた。

…………………あれ?



「は、はぁ!?し、ししし嫉妬なんてそんなのあるわけないじゃない!」

「えぇと、エルサさん?」

「え、あ、そうだ!もうそろそろ晩御飯にしましょう!うん、そうしましょう!」



そう矢継ぎ早に告げてエルサはキッチンがあると思われる部屋に行った。

これは……………………正解だった?

よかったぁ~~~!俺ここにきて死ぬのかと思ったぁ~~~!



「オウマ、なかなか、やる」

「元はと言えばお前らが原因なんだからな!?」

「いやぁ、面白い反応ごちそうさまです」



そうやってこの日を俺はやり過ごした。

ちなみにもちろん寝るときは別の部屋で寝させてもらった。

同棲に慣れてるのと一緒に寝ることはまた別だからな!?

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