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41.合成物

エルサの家にて―――



「第3回だったか4回、いや5~8回合成検証会を始めます!」

「お~~」

「うろ覚えなら意地張らずに言わなきゃいいのに。回数の幅が広すぎよ」



うるさいやい。意地張らずに何のための男でいっ。


俺は事前に準備していたとある物を2つテーブルの上に置く。



「で、ここに用意致しますは《フィオッグの胃袋》と《オグルーブ》でする」

「両方さっきの商店で買った物ね」



エルサの言う通り、先程の商店で偶然売っていたのを見つけて買い込んだ物。ちなみに《オグルーブ》とは、竹でできた筒、と捉えていただいて結構。

あれだよ、昔でよくある竹でできた水筒みたいな?そんな感じ。



「何を、つくるの?」

「まあ見てなって」



自然にテーブルに円を刻もうとしたら、エルサに殺されかけた。

スンマセン、調子に乗りました。


そのあといつも通り紙に適当に書いてその上に素材を置く。

イーナは初めて見るからか興味深そうに覗き込む。



「これで、できるの?」

「おうよ。なんか掛け声とかないとつまんないんだよなぁ、イメージだけでできるとかつまらん」

「楽に済むならそれでいいじゃない」

「男の夢がそこにあるんだよ!」

「随分とちっぽけな夢ね!?」



そんなこんなでパッと合成、パッと完成。

もうここらへんは流れ作業です。

でき上がったのは、見た目は《オグルーブ》と何の変わりもない物だった。



「あれ?失敗?」

「いや、これでいいんだよ。説明しよう!俺が作り上げたのは【アクアーブ】という素晴らしい代物だ!」

「いや、全然わからないわ」

「なんだと!?これだけ説明してもまだわからんのか!」

「名称だけで判断しろとか無理があると思わない!?」

「素晴らしい代物って言っただろ!」

「余計わからなくなったわ!」



これだけ言ってもまだわからないのか!

これだから下民は…………はいスンマセンでした。だから無言で首に剣先を当ててくるのやめてください。ちょっとした冗談ですから。

最終的には喋るのをやめて行動で示すことになるのか。

これ恐らく読心術のレベルMAXで覚えられるスキルだから覚えておくといいぞ。



「まあ簡単に説明すると、………まぁやってみせたほうが早いか?」

「どうするのよ」



事前に準備しておいたあるビンを持ってくる。

そのビンの中には、麻痺させた《爆魚》が2匹入っていた。



「?また爆発物作るの?」

「いんや、ちゃうちゃう」



俺はビンの中から《爆魚》を引っ張り出す。

うん。しっかり気絶しているな。

そして、その《爆魚》を、俺は【アクアーブ】の中に突っ込んだ。



「ちょおぉ~~!?」

「わぁ」

「これで完璧!」

「どこが!?」



【アクアーブ】のサイズがちょうど《爆魚》が入るくらいの大きさでちょうどよかった。もしこれで【アクアーブ】のほうが小さかったらまた作りなおさなければなくなるから。



「え?あんた何をしたいの?まさかそれで終わり?」

「おぉ、そうだ。肝心なことを忘れていた」

「そ、そうよね!まだ大事なことが……」

「水入れておくの忘れてた」

「思ったよりどうでもいい!」



何をぅ。結構重要なんだぞ。

台所を借りて水を【アクアーブ】の口から水を流し込む。

これで今度こそ終了。



「あんた何がしたかったのよ………?」

「なかなかに、鬼畜」

「誰が鬼畜だおい。これを見てみろ」



俺はそう言って【アクアーブ】の中身を見せる。

エルサとイーナが身を乗り出して覗く。



「あれ?《爆魚》が足りなくない?」

「1匹、だけ」

「【アクアーブ】はたぶん1匹ずつ取り出すタイプなのかな?取り出しやすくて助かるけど」

「いい加減説明しなさい」

「ウッス」



説明しよう。

【アクアーブ】とは、いわば四次元ポケットみたいな物で、どれだけ入れてもいくらでも入るのだ!

ただし魚限定。

もちろんエルサたちに四次元ポケットとか言ってもわかんないだろうからそこらへんは誤魔化して伝えた。



「だがそれだけではないのだよ。むしろこっちが本命」

「勿体ぶらずにさっさと言いなさいよ」

「えぇ~、どっしようかなぁ~?」

「よし帰ろうイーナ」

「ゴメン!言うから!帰らないで!」



エルサは変なところで冗談が通じないから本当に困る。



「極端に言えば増殖機能ってところだな。テキスト読んだ限りだと水に浸すだけで増えるらしいぞ」

「へぇ~、爆池の筒版ってところ?」

「便利」

「これでコストには困らない………!いくらでも【エクセード】が作れるぞ!」



後日、1日に1体しか増えないことを知って号泣したのはまた別の話。




――――――




「さて、【アクアーブ】も作ったから今度はもう1つ別なやつを作ろうと思う」

「なに?まだあるの?」

「拷問器具なら、大歓迎」

「ここにある素材を用意した」



イーナの発言は綺麗にスルーし話を進める。

不満気な顔をしても無駄だぞイーナ。可愛いけど。



「用意する素材は《紅蓮石》と《フィオッグの胃袋》!」

「あ、また《フィオッグの胃袋》使うの?」



エルサが嫌そうな表情を見せる。

正直言ってね、俺も胃袋なんざ好きで手に掴んでるんじゃないんですよ?でもしょうがないのです、素材なのだから。

いくらでもこの手を汚してみせましょう。



「《紅蓮石》はこのダンジョンの3層から採掘できるらしいけど今回はあるヤンデレ鍛冶師のご協力の元、用意しました!」

「そこで名前伏せた意味あった!?丸分かりなんだけど!?」

「ヒント、この中の誰か」

「はい消去法でイーナに決定!なんてわかりやすい問題よ!」

「………………私は、ヤンデレじゃない」

「なぜ認めない!?前科がありまくりでしょう!?」



なるほど。自分では普通だと思っていたのか。

感覚も大分狂っているなイーナは。

そこは自覚症状持とうぜイーナさんよ。



「まあイーナのヤンデレはどうでもいいとして」

「どうでも、よくない。結構、重要」

「ならヤンデレは置いといて」

「うん、わかった」

「その2つがあんまり変わってないように聞こえたの私の気のせいかしら!?」



気のせいだろ。きっと、たぶん。

さて、エルサの発言は左耳から右耳にすり抜けて、と。



「さっさと合成させちゃうか。ほいっと」



もうホントに適当にやっても合成できるようになってしまったなぁ。感動も何もありはしない。いや元々なかったけどね。

そうして出きたのはプラスチックで出来た蓋のある大きい箱。



「これで【ストホルド】の完成や!」

「なんか語調おかしくない?」

「いやなんか乗りで関西弁を」

「関西弁は知らないけどね!?どうせ日本とか言うところの言語なんでしょうけど」

「さっすが理解の早いことで」



どうやらこの世界に関西弁は存在しないらしい。

英語はあるくせに。主にロリコンとか。

それで早速【ストホルド】の説明をしようとすると、イーナが質問してきた。



「日本って、何?」

「っ!」



ミ、ミスったぁ~~!

そういえばエルサ以外はこのこと知らなかったんだったぁ~~~!

な、なんて言い訳を………!そうだ!ちょっと記憶が混雑しているってことにすれば……!



「オウマは日本という世界から来たのよ」

「ノォ~~~~!」



言いやがった!もろ言いやがった!

だがイーナの反応は思っていたのとは違く、



「ふうん、わかった」

「え?そんなにすんなり受け入れちゃうの?」

「オウマが、何かを、隠していたのは、皆、知ってるから」



あ、そういえば記憶喪失ではないことはもうとっくにバレてるんだっけか。

………………1度水面下でどのように話が進んでいるのか確かめたいものだ。



「その箱の、説明」

「お、おう。これは【ストホルド】って言って一言で言えば簡易冷蔵庫」

「私たちにわかる言語でお願い」

「ウッス」



おぉう、般若になっとるでエルサが………。

まあ冷蔵庫って言ってもわからんか。



「一種の保存箱的な?この箱に入れておけば食料はその状態を保ったまま保存が可能なのだ!いつまでもな」

「へぇ~~、それはすごいわね」

「だろ!?だろ!?」



これで旅に出るときも食料の状態を気にしなくていい!

随分と便利な物があったもんだ!

なんで【アクアーブ】と同じ素材、胃袋で冷蔵庫が出来たのか気になるがそこは目を瞑ろう。



「よっしゃ!これで俺の準備は完了っと。あ、それでエルサに聞きたいことがあったんだけど」

「なに?」

「質屋とか換金できるところって街にあるか?」

「ま、まさか襲うつもり!?」

「なぜに襲撃せねばならん!?」

「いくら、金が、欲しい、とはいえ、やって、いいことと、やって、悪いことが」

「それぐらいわかっとるわ!あんたらは俺をなんだと思ってるんだ!」

「「金に純粋な男」」

「否定できねぇ!」



あれ?つまり襲撃になっちゃうのか?いや、さすがの俺でもそれくらいの常識は持ち合わせておりますよ?いくらバカでも限度があるからな?



「ま、冗談半分は置いといて」

「ちょい待て。もう半分は一体なんだ」

「「金に純粋な男」」

「ええい!そこはハモんなくていいわ!」



確かに冗談半分だったな!



「で、なんでそんなことを?」

「いや、今俺ダイヤモンドあるじゃん?目に見える形で残したいと思って」

「要約すると現金にして喜びに浸りたい、と」

「なんか全然違う言葉になってるけど!?」



ピンポイントで当たってはいるが。



「オウマ、ダイヤモンド、持ってるの?」

「あぁ、まあ色々あってな。手に入れたんだよ」

「へぇ」



これもイーナは知らなかったっけ。

よく考えればエルサ以外に伝えていないこと結構あるな。

後々めんどくさそう。



「あとついでに刀も換金できればって感じだな」

「あれ速攻で売っちゃうんだ………」

「金にするつもりで強奪したからな」

「言ってるセリフがただの盗賊!」



もしかしたら俺の思考回路盗賊似かもしれん。



「街に行けばあるわよ。だけど1度換金したら量が面倒になると思うから学園を卒業したあとのほうがいいでしょうね」

「ちぇ、しょうがねぇなぁ」

「……………ホンット盗賊に似ているわよねぇ」



俺が盗賊になりそうな時はエルサが止めてくれ。

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