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40.講習会

ある日の午後、というか普通に変人料理対決を終わったあと、エルサ先導で俺とイーナはエルサの家にて非公式学園入学講習会を受けていた。



「で、先生よ。いったい何を準備すればよろしいのかね?こちとらやりたいことがあるのだが」



俺が問いかけると先生(エルサ)がいつの間にかかけていた眼鏡をクイッとあげて言い放つ。



「まさか手放しで入学できるとでも?もちろん必要な物はあるのよ」

「入学金とか?」

「入学金なし、完全タダの税金で動いている公立です」

「賄賂?」

「はい、イーナは黙りましょーねー。そんなわけないでしょうが」



イーナは何故か不思議そうな顔をする。

イーナよ、そんな賄賂で世界が成り立っているとでも言いたげな表情はやめてくれ…………。



「といってもたいしたことはないけどね。まずはトレニター学園への移動手段について話しますか」

「うん?もしかしてエルサもついてくんの?」



おいエルサよ。なんだそのしまったとでも言いたげな顔は。



「え、えっとね、ちょっと私も街のほうに用事があるのよ。決して他意はないから!」

「お、おぉ……」

「ちなみに、用事とは?」



疑問に感じたイーナが尋ねる。

確かにその疑問はもっともだ。



「ま、街に行く前に《ビザノ》にも寄りたいけどね」

「あぁ、そういえばなんかある、とか言ってたな」

「そ、ある素材の回収をしてて、目標数集まったからそろそろ行こうかな~、て思ってたのよね。ちょうどよかったわね」

「えぇ………………」

「なんで嫌そうな顔するのよ!まるでお前の用事ごときになんで付き合わされなければならないんだ、と言わんばかりに!」



それ正解。



「そもそもどこにあるんだよ。そのピザってのは」

「ビ・ザ・ノ!誰も食い物なんて言ってないわよ!あんたまともに言葉を覚える気ある!?」

「俺は覚えたくないわけじゃない。ただ頭が覚えようとしないんだ」

「それ記憶力無いやつの言い訳ぇ~~!ついでに言うと覚えようとはしてないわね!?」



バレた!うまい感じに誤魔化したと思っていたのにバレた!


エルサはドサッと机の上にデカい地図を広げた。



「いい?このミラノの北にはダンジョンが存在する。それはわかるわね?あんたも何度か行ってるんだから」



エルサは地図の一点を指差して説明する。

そういえばダンジョンと言えば聞きたいことあったんだよな。



「そういえばハンター以外はダンジョン出入り禁止って言ってたんだけど俺よかったのか?違反してね?」

「忘れたの?このダンジョンは《ミラノ》が所有権持ってることを」

「あ、もしかしてダンジョン管理局の耳も届かないのか?」

「そうね!耳も届かないし目も届かないわね!」

「ダンジョンに耳あり、ミラノに目なし?」

「イーナはうまい言葉言いたいからって無理矢理造語をつくらなくてよろしい!意味の一生通じない新世代言語になってるじゃない!」

「そこは近未来言語だろうが!」

「どっちでもよくない!?そここだわる!?」



え~と、要約すればダンジョン管理局は村の圏内にあるダンジョンには手を出せない、と。ついでに言えば下手に他のダンジョンに突っ込めば俺はムショ行きだと。

覚悟しておこう。俺ならわかってても突っ込む可能性大だ。



「話はそれたけど、そのダンジョンのさらに奥には《霧の峡谷》が広がっていてその先には行けないようになってるわ」

「なんでだ?時間をかけてでも行けばいいのに」

「霧よ。峡谷全体が霧で覆われてて先が全く見えずに峡谷に落ちた人は後を絶たないわ」



なんだかその先に行ってみたくてウズウズしてきたが今は抑えなければ。行っても死ぬだけだ。俺が。



「で、東に10㎞行った先には《オルノ》があるわ」

「思ったより近っ」

「で、西に円を描くように30㎞行けば《ビザノ》にたどり着くわ。そこから東南東に約45㎞進めば《タウネス》に着く」



ふむ。地図を見ながらだからだいたいの地形はわかった。

あくまでだいたいだぞ。だいたい。

あ、そういえば《タウネス》の他にも街はあるんだよな。



「確か《マネニー》には3つ街あるんだっけ?」

「そ、ダンジョンが付近に多数ありハンターの数が最も多い《ウィード》。職人が集まり経済が活性化された《タウネス》。《マネニー》の王家が住み貴族たちで構成されている《ロイヤル》。で、トレニター学園がある街は《ウィード》ね。《ウィード》に行くなら《タウネス》を通ったほうが早いから、《タウネス》を1度経由して向かうわ。《タウネス》からは南下していけばいずれ《ウィード》に辿り着くわ。ダンジョンが近くにあるから少し注意が必要だから覚えておいてよ。いざとなれば自衛も必要なんだから。まあそのために今まで特訓してたんでしょうけど、あ、修行だっけ?ま、どっちでもいっか。それで、辿り着いたあとは……」

「エルサ、そこまで」

「どうしたの?」

「オウマが、死んでる」



エルサはチラッとオウマのほうを見る。


オウマ

→ベチョオォ…………………



「なんか表現できない状況になってるぅ!?」

「ワレワレハ、ウチュウジンダ」

「ゴメン。ウチュウジンって何?」

「ワレハ、オクマンチョウジャダ」

「言い直した!?」

「しかも、願望まで、混ざってる」



エ、エルサめ…………!俺の頭が追い付かないことをわかっててあんな呪文を「呪文は言ってないから」思考にまでツッコまなくてよろしいぃ!

とうとう思考回路の途中でツッコむまでに成長を遂げていたとは………。これ以上に読心術のレベルを上げたらどこまでいくんだ?



「え、えっとな、タルタルがウルウドでウルウドがロドムドだろ?」

「あんたが喋る単語のほうが呪文に聞こえるんだけど!?」



その後、数分で状態が回復しました。



「ちょっとした旅になるからために食料品等も買い込んでおきたいのよね」

「そんじゃ、これから行くか?」




――――――




村を歩いているとある店の前に辿り着いた。



「あれ?ここじゃあんま見ないやつとかあるな」

「そりゃそうよ。ここの店は街から取り寄せた商品を販売しているんだから」

「なるほどね。小売商店か」



商品を見れば日用品から雑貨、食料品まで様々あった。

恐らくいろんなメーカー……じゃなくて、生産者から取り寄せたんだろうな。



「あれ?これ………」



そんな中で俺はある物を発見する。

黒色の臓器に見える物を手に取って確認し、店長に尋ねる。



「おい、これなんて素材だ?」

「あぁ、それか?フィオッグの胃袋だな。調合すれば漢方薬にもなるんだが………これは俺としちゃハズレ引いちまったな」

「よし、売ってくれ。欲しい」

「は?あんた正気か?」

「ちょっ、オウマ!?」



いくら胃袋とはいえ漢方薬になるなら損はないと思うのだが店長曰く、普通は別素材を用いてやるところをこの素材を使うとあまり品質がよくないとか。なら持ってくるなよ、と言いたい。てか言ってやった。

でもまぁ、俺は関係ない。漢方薬も媚薬もつくるつもりはないからだ。



「………………………(シュン)」



なぜか俺が『媚薬』、と心の中で呟いた瞬間イーナが残念そうな顔をしていた件についてはもう流石としかいいようがない。

もう君たちの読心術には驚こうにも驚けないぞ?慣れてしまったから。



「オウマ?何する気?」

「まぁ見てなって。あ、店長!これもくれ!」

「まいどあり」



そうやっていくつか購入する。

いやぁ、ここでは入手できないかと諦めていたが思わぬところで収穫。ちなみに金に関してはエルサに協力してもらいました。

し、出世払いで………。


だが、これでうまくいけば………………

今度こそ俺の無双だぁ~~~!


そのあと肝心の食料を買わないまま帰ってしまったが細かいことは気にしない。

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