表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/59

4.幻獣種

村長の家を出てエルサの家に向かう。


そして、思う。


これって同棲じゃね?



おぉ!やべぇ!この歳になって俺も遂に同棲か!

は!同級生のやろうども!ざまぁみろ!

俺のことを散々バカにしやがって!

血の涙を流してる光景が目に浮かぶぜ!


………………………………。

よし、落ち着こう。これじゃ俺が変態みたいじゃないか。

俺は紳士なんだ。惑わされてはならん。



「あんた早く入りなさいよ」

「はっ!」



エルサに声をかけられ現実に意識を引き戻される。

危ない危ない。なんだか自分が一瞬変態になってた夢を見た気がする。気のせいだな。うん、気のせい。



「しかし、思った以上に…………」

「な、なによ。何か変?」



いや、別にそういうわけじゃない。むしろ綺麗にしてあった。

そうです。なんということでしょう。

物は無駄のないように、なおかつ見た目よく置されている。

その上で派手な装飾にならないようにしている。



すんません。正直来る前はバカにしていました。

どうせ汚ぇゴミ屋敷なんだろうなと思っていました。



「あんた今バカにした?」

「いえ!そんなわけはありません!」



この女!俺の心を読んだだと!?バカな!



「そこらへんに腰掛けといて」

「うい」



エルサが奥の扉を開けて部屋に入っていく。

エルサがいなくなったところで再び周りを見る。

ふむ。なんか俺の想像してたところと違う。

てっきりぬいぐるみとかのふわもふ系で埋めつくされてるもんかと思ってたけど………エルサだからしょうがないか。


さて冗談は置いておいて、異世界だからこんなもんだろうと納得しておく。

そして、制服の内ポケットからあの本を取り出す。

それは《合成の書》。


―ちなみになんで制服の内ポケットに本が入るのかというと本自体があまり大きくないことと内ポケットが無駄に大きいから。―


俺がこの本を取り出した理由はこの本に何かがあると思ったからだ。そう思い開いてみる。


そこには相変わらず中二病みたいな単語がたくさん並んでいた。

ほんとワケわからん。



そのとき扉が開く。そこから現れたのはエルサ。



「おまたせー……て何読んでるの?」

「ん?あ、あぁなんか中二病くさい本」

「?中二病ってなに?」

「ゴメン!やっぱりなんでもない!」



危ねぇ。迂闊に喋るとアウトだなこれ。

あ、でもちょうどいい、確認してみよう。



「あのさ、《ブライム》って知ってる?」

「ブライム?なにそれ」



なんだ、知らないのか。それならその素材はどうだろう。



「それなら《光苔》は?」

「それは知らない人いないんじゃない?」



あ、これはあるの?

エルサが指を指す。その先を追うと松明のようなものがあった。

ダンジョンでキーンが持っていたものに似ている。

それに松明というより………何か塗られているように見える。



「あの木の先に塗っているのが光苔を調合したものよ」

「え、そうなの!?」

光苔(ひかりごけ)を水と小麦粉と調合してできたものを木の先に塗るだけ。光苔は暗闇の中、光るから重宝されているのよ」



ほぉ~~、なんかどっかで有名な光蟲みたいな物だな。

でも、なんか心許ないんだよな、あの光。

現実世界でLEDとかそういうのを見慣れたせいか光が弱々しく感じる。光で照らされる範囲もあまり広くないし。



「それとさ《白石》ってある?」

白石(はくせき)?そこらへんの岩壁を掘れば出てくるわよ」



どうやら白石はこの世界にとって石ころ程度の存在らしい。

でもそれならそれで都合がいい。

試したいことができた。



「よし、ちょっと出掛けてくる」

「どこ行くつもり?もう暗いわよ」

「遠くには行かないって『ギュルルル………』……………」

「ハハハッ。とりあえずご飯食べようよ」



恥ずかしくなり俯く。

俺の腹め。そんな正直に鳴らなくてもいいじゃないか。

確かに今日は走りまくって疲れたけど。


そうして大人しく待っているとエルサが器を運んでくる。



「作り置きしたものでよかったら食べといて」

「ありがとな」



エルサがテーブルの上に並べる。

器に盛り付けられていたのは野菜炒めみたいな物だった。

というかこれ野菜炒めじゃね?

現実世界と大差ないよこれ。


そんなことを考えているうちに他にも米やらスープやら並べられていく。

もはや普通の食卓になってしまった。


なんか俺のイメージしてた感じと違うなー。

てっきり異世界ならではのグロテスクメニューが出てくると思っていたのに。面白くない。

俺もエルサも椅子に座り、とりあえず食べることにする。



「「いただきます」」



まずご飯を食べてみる。

…………ふむ。普通のご飯だ。というか現実世界より旨い。

次に野菜炒めを食べてみる。

…………これまた旨い。材料はレタスとか使ってるだろうことは予想できるがやっぱり旨い。

最後にスープを口に運ぶ。

…………ふむ。



そうして全部食べ終わり一息つく。


旨かったぁ~~~。


いや、ほんとですよ?

特にスープ。コーンスープだと思われるけどこれまた絶品でした。

現実世界でこんなに旨い飯は食わなかったかもしれない。



「ごちそうさまでした」

「どう?」

「美味しかった。もう満足です」

「ふふ。それならよかった」



エルサが満足そうな表情をする。

しばらくこの余韻に浸っていると、エルサが声をかけてくる。



「そういえばオウマ、あなた何かやろうとしてたみたいだけど」

「おっとそうだった。忘れるところだった」



できれば夜の内に済ませておきたいことだったんだよな。

すっかり飯が旨かったせいで忘れてた。



「ここらへんで光苔が生えてるところって分かる?」

「光苔なら森にある岩に生えているわよ」

「OK。ありがとう」

「なに?光苔を取りに行くの?」

「そ、ちょっとやりたいことがあって」



そう行って家を飛び出す。

村を少し出て森に入るとそこかしこで光が見える。

そのうちの1つに近づく。

どうやら岩から光が出ているらしい。

そして、よく見てみるとどうやら苔らしいものが着いていた。恐らくこれがエルサの言っていた光苔なのだろう。

本を取り出し、書かれている絵と見比べて間違いないことを確認する。確認したあと本を戻し、さっそく採取する。


といっても苔の採り方ってよくわからないな。適当に採ればいいかな?

そう思い手を伸ばし苔を採る。感覚は普通の苔と大差はない。

ただ普通の苔と違って発光しているということだけ。

採取した苔はポケットに入れる。


ポケットいっぱいになるまで採取した。

これぐらいでいいかなと思い、森をあとにする。

家に着くとエルサが出迎えてくれた。



「おかえりー。どうだった?」

「いっぱい採取できた」



そう言ってポケットを叩く。それを見て呆れるエルサ。

むぅ。なんだよ、なにかおかしいか?



「あそこの棚にビンあるからそこにでも詰めておけば?」

「お、いいの?サンキュー」



ありがたい。

いつまでもポケットに入れてたら苔臭くなるから。

棚に置いてある空のビンを1つ取りその中に苔を詰めていく。

全て詰め終わったあと、栓をして棚に戻す。



「そろそろ寝るわよ。向こうの部屋空いてるからそっち使って。あと着替えとか欲しい?」

「そうだな。着替え持ってきてないからあるなら助かる」



着替えを受け取る。どうやら俺のために事前に用意してくれてたらしい。本当に助かります。

さっそく着替えようと思い脱ごうとすると、なにか重い。

あ、そういえばズボンのポケットに入れっぱなしにしてたな。


ズボンのポケットに入れっぱなしにしてあった、ドラゴンの牙と宝石を取り出す。

すると、エルサが目を見開く。



「ちょっ、あ、あんたそれらどうしたの?」

「うん?ダンジョンの最深部かな」



うん、ドラゴンが邪魔で奥までは見えなかったがボス部屋っぽい感じがしたからとりあえずそう言っておく。

すると、エルサが震えだす。



「嘘でしょおぉ~~~!!!」

「な、なに!?いったいどうした!?」

「ま、まずその牙はドラゴンの物じゃないの!」

「まあね、ドラゴンの正面で拾ったから」

「しょ、しょうめ………とにかくあなたヤバい物持ってきたのよ!?」



エルサが混乱に陥っている。

いったいどういうことなのか。

説明してもらうと、



ドラゴンは通称、幻獣種と呼ばれる種族のモンスター。

モンスターは獣兵種、大獣種、超獣種、幻獣種があり、その中でも幻獣種は存在自体が貴重で遭遇することも困難だと言われる。

ただし、幻獣種は会ってはならない存在でもある。

その存在から厄災種とも呼ばれ、幻獣種がその姿を現す時は必ずこの世界が滅ぶレベルの厄災が起こるのだという。

過去に1度、現れたことがあり、その時は森や山を全て削り、平らな大地に変えたらしい。その大地は今もなお存在し《災縁の地》という名で呼ばれている。



とにかく、幻獣種は存在してはならず、存在した場合は死ぬことを覚悟しておけ、ということらしい。


………………マジで?



「え、それじゃ俺マズいことした?」

「マズいどころじゃないわよ。まさかこの村のダンジョンにドラゴンがいたなんて………!」

「で、でも!ドラゴンは寝てたから!大丈夫!まだ大丈夫!」

「…………もし最深部まで到達したハンターがいたら?」



そのときを想像してみる。


………………死んだなこれ。



「こ、これはここだけの秘密にしておこう」

「そ、そうね。下手に刺激すると大変よね」



とりあえず知らなかったことにしておく。

悪いことからは目を背ける。

これ生きていく上で大切なことですよ?



「それと、その宝石はどこから?」

「ドラゴン部屋」

「…………………………あんたいったい何やってるの?」

「…………………………出来心でつい」



エルサが呆れたようにため息をつく。

しょ、しょうがないんだよ!人間の本能が働いちゃったんだ!

………まあ、確かに随分無茶したなぁとは思わなくもないけど。



「その宝石は《ダイヤモンド》と言って宝石の中でも最高級の物よ」

「へぇ~そうなんだ~」



若干棒読みで返事をする。

ダイヤモンドってそのまんま。現実世界と変わらねぇじゃん。

色が青色なのは同じかどうか知らんけど。

ん?ちょっと待てよ。



「これ売ったらどれくらいする?」

「この大きさなら1Nはくだらないんじゃないかしら」

(ネガ)ってなに?」

「お金の単位よ。小さいものから(ラーツ)(メルツ)(ネガ)。1000Lで1M、1000Mで1Nてところ」

「なるほど、長さの単位みたいだな」

「なにが?」

「あ、いやなんでも」



ふむ。ややこしいな。

で、その中でも最高の単位の1N。

基準がないからよくわからないな。



「服1着ってどれくらい?」

「10Mってところかしらね」



となると、1Nはその100倍だから………。



「このダイヤモンドすげぇぇ~~!!」

「だから言ったでしょ!?」



この世界でのダイヤモンドは恐ろしく高級なことがわかった。

実際のダイヤモンドの価値とは異なるのでご了承下さい。

あくまで異世界での値段です。


ちなみに凰真が手に入れたダイヤモンドは片手で持てるサイズです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ