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33.襲撃隊

脱走計画実行少し前。




――――――




「え~~とつまり?」

「屋根を飛び越えショートカット」

「バカじゃねぇの!?」



失礼な。真面目に考えてこの案を出したぞ。



「屋根を飛び越えれば盗賊に遭遇することもないし道を通らなくていいから結構な時間短縮になると思うんだけど」

「いやいやそれでもバレる可能性は大いにあるって」



まあな。それは否定できない。

だからこそ



「囮部隊の根性を見せてくれ」

「最悪だ!投げ出しやがった!」

「安心しろ。襲撃部隊には余計な戦力を割んなくてよくなったから囮部隊に戦力を投入できる」

「あんま戦力差変わんねぇ……………」

「それに今夜は月が出ない。これは助かる。街の明かりだけじゃ屋根まで届かないからな」

「そう言われれば状況は好条件に見えるわね」



だからうまくいくかなぁ?程度なんだけど。

俺はあくまで可能性を提示しているだけ。判断するのは個人だ。



「な、なるほど………!」

「いや正直言ってギリギリの策だな。結果的にうまくいくってだけで」

「確かに個々の技量に頼りすぎじゃねぇかこれ?」

「うっ………やっぱりキツいか?」



自分で言っといてなんだが個人の力に頼るところが多い。

別の方法を考えるべきか………?



「私は別にいいわよ」

「エルサ?」

「オウマは金に関しては間違ったことはしないからね」

「へ?金?」



シークスが呆けた声を出す。

俺は全力で目を逸らす。

ちっ、エルサが気づいていやがった!俺が企んでいたことを!



「それに、盗賊には後悔させてやろうじゃないの。私たちハンターに喧嘩を売ったことを!」

「「「エルサ男らしい……………(男子一同)」」」

「私は女よ!?」



今のエルサはここにいる男たちの誰よりも男らしかった。



「で、戦力の振り方はどうする?」

「この中で一番強いやつと俺で本陣に突っ込む」



正直言って二人いや実質一人で本陣に向かうのは危険だと思うが致し方ない。

皆は少し悩む素振りを見せて一人を見る。



「え?私?」

「お前がこの中じゃ一番強いだろ?」

「そうですね。間違いなく」

「強い」



どうやら満場一致でエルサのようだ。

皆そんなに自信ないのか?

そんな俺の気持ちを読んだかのようにジンクが教えてくれる。



「ハンターは強さでクラス付けされてるんだよ。一番上から(ワールド)クラス、(スカイ)クラス、(グラウンド)クラス、(レイク)クラス、(ロード)クラスといった感じに」

「へぇ~初めて知った」



なんか分かりにくいな。RPGとかで定番の(エス)クラスが最強とかのほうが覚えやすいのに。



「例で言うと俺とレイルは(レイク)クラス、シークスは(グラウンド)クラスだったはずだ」

「あ、シークスのほうが強いんだ」

「一応部隊長だから実力は確かだぞ。キュアさんはどうだっけ?」

「確かぁ、(グラウンド)クラスよぅ」

「レイルよく知ってるな」

「私物知りだからぁ」



なにそれ。物知りだとあれか。

個人情報もプライバシーもへったくれもないのか!

下手な日常過ごせねぇじゃん!



「で、エルサは(スカイ)クラス。まあ話の流れで分かってたか?」

「まあなんとなく。でもエルサで(スカイ)クラスなら(ワールド)クラスは相当なのか?」

「聞いた話では轟刃級モンスターを一人で討伐できるレベルとか」

「轟刃級って?」



絶対ランク付けの気がするが。



「幻獣級、紅蓮級、轟刃級、蒼乱級、甲獣級。目安は幻獣級は幻獣種全般で甲獣級はお前も知ってるところでスコイズンとかか」

「うはぁ、マジっすか………」



なら皆がエルサを選んだ理由も納得はできるな。

(スカイ)クラスの実力者なら安心できる。



「そういえばさ。なんでお前も?」



そこにシークスが不満の声をあげる。


うるさいなぁ。俺だって好きでやるつもりはないんだぞ。

死ぬかもしれないんだし。


俺はずっとポケットに突っ込んでいた物を取り出す。



「お前らコレの使い方知らないだろ?」

「それなに?」

「あ、それ【エクセード】だっけ?」



どうやらエルサは知ってたみたいだ。

というか当然か目の前で実験を行ったんだから。

でもあのときとは違う。



「【エクセード7倍】だ」

「どういう意味?」

「通常の7倍爆発という意味」

「は!?これ爆発すんの!?」



この【エクセード】には7体分の《爆魚》を合成させてある。

それだけあれば可能だろう。



「これを使って村長の家の屋根をぶち抜く」

「バカがいるぞ!」

「しょうがないだろ!屋根伝いで移動するんだから!自然にこうなるんだって!」

「1回降りればいいだろ!?」

「そんなことしてたら盗賊に見つかる!」

「爆発で充分バレるわ!」



ぐぬぬ………!



「まあオウマの言うことも一理あるんじゃないか?」

「ジンク何言ってんの!?」

「むしろ盗賊感覚で言えばそんな爆発が起こったところで目の前に獲物がいたら逃がさないと思うしな」

「ほらな。囮部隊が頑張ってくれればなんとかなるんだよ」

「それはイコール囮部隊にものすごい負担がかかることと同義ではないのかね?」

「いちいちうっさいなー。よしやろうども突っ込むぞー!」

「強引すぎんだろ!」



シークスがいまいちやる気になってくれない。

しょうがない、この手は使いたくなかったんだが………。



「リリィ」



リリィを手招きで呼び寄せる。

そしたら迷わずに来てくれた。



「な~に?」

「シークスお兄ちゃんがこれからリリィのために頑張ってくれるみたいだからさ、応援してくれない?」

「うん、わかった!」



リリィはそう言うとシークスの元に近寄る。

うん。いい子だ。だからこそ少し騙すことに罪悪感を覚える。



「シークスお兄ちゃん!これから忙しいことになるかもしれないけど頑張って!応援してるよ!」



違うよリリィ、忙しいことはしない。大変なことはするけど。

さて、そんなことよりシークスはどうだ?


シークスはゆっくりとリリィに近寄ると声をかける。



「リリィちゃん、ありがとう応援してくれて。それだけで俺たちは充分頑張れるよ」



あれ?思ったより効果が薄い?


シークスはそのあとなぜか奥の部屋に向かう。



「シークスどうしたのよ」

「ゴメン。そっとしておいてくれ」



シークスはそう言って扉の向こうに消えてった。

数秒後、扉の向こうから絶叫が聞こえてくる。



『うおおおぉぉ~~~!俄然やる気出てきたあぁぁ~~~~!神様俺をこの世に生んでくれたことを感謝します!!』

「お前の存在理由それでいいのか!?」



シークスは扱いやすくて助かる。



「ふむ。大声を出して迷惑をかけないように部屋を変えたのか。なかなか考えたな」

「いやジンク。余裕で聞こえてきたから!それにそもそも迷惑なんて『おい、なんかこっちから絶叫が聞こえなかったか?』ほらぁ!思いっきりかかってるぅ!」



あいつ大声出しすぎだボケ!



「よし!それじゃ計画通り行動するわよ!皆生き延びてね!イーナとキュアさんとリリィちゃんはここで待機!さぁ行くわよ!」

「「「おぉぉ!」」」

「シークスを見捨てていいのか!?」

「いいもなにも」



エルサはドアを開き家の向こうを見る。

そこには一見すると一人が多人数を相手に無双している光景が繰り広げられていた。



「もう突っ込んでるし」

「シークスぅ~!?」

『キサマらくたばれやぁぁ~~~!幼女がどれほど美しいものか体に教えてやる!』

「シークスくん!戦う理由変わってますよ!」



そう言いながらニムルたちも参戦していく。


こうして決戦が始まった。




――――――




「どうやらちゃんと引き付けてくれたみたいね」

「そんじゃ行くか」



俺とエルサは屋根の上に登り疾走する。

でもまあ初めての体験というだけあって



「うおっ!?落ちる!」

「気をつけなさいよ!落ちたら元も子もないじゃない!」



何度か落ちそうになったりした。

馴れないことはするもんじゃないね。


でも気分は優れている。

なぜなら………!



「屋根の上を走ってみたかったんだよなぁ~~~!」

「あんた少しは黙りなさいよ!バレないためにこんなルートを通ってるんだから!」



いや~漫画でこのシーンを見たとき是非やってみたいと常々思ってたんだよ!まさか異世界でやる機会が来ようとは夢にも思わなかった!



「月が無いのはちょうどよかったな」

「そうね。村の明かりはあるけれど隠れながら走るのは辛かったから」



今日は運がいいことに月が出ない。

タイミングがいいことこの上ない。



「あ、見えてきたわね」

「よし、【エクセード7倍】の力見せてやる」

「派手になりそうねぇ」



爆発音で盗賊が来ないか、という懸念もあった。

でも盗賊の性格を考えてそれはないとなった。

盗賊は目の前にある事象を優先する場合が多い。目の前に敵がいれば何があってもそっちを優先すると踏んだからだ。

囮の負担は増えるけど我慢してもらおう。


そして村長の家まであと一件というところで【エクセード7倍】を使用する。



「よっしゃ!くたばれやぁあ~~!」



ピンを引き抜き村長の家の屋根に投下。5秒後、爆発が起こる。


ドゴォン!!!


煙が舞う中、どうなったかを確認する。

その結果、見事に穴が開いていた。


すんません村長!穴を開けてしまい申し訳ありません!これはしょうがないんです戦略的爆発なんです!いやちょっとは壊してみたかったという気持ちはあるけど本命は作戦ですよ!?本当ですよ!?



「飛び込むわよ!」

「よっしゃあぁ!」



そしてエルサと同時に最後の一件を飛び越え穴に飛び込む。

少しの浮遊感、気持ちいいと思いつつも着地する。

そのときに爆発によって飛び散った木の破片を踏んでしまい少しバランスを崩して着地してしまう。

その結果



「痛ぁぁあ~~~!」

「うるさいわね!男なら少しは我慢しなさい!」



くそっ誰だ!こんなところに木の破片を置いたのは!

あ、俺のせいか。



「足が痺れる………!」

「情けないわね…………」



そもそもこちとら一般高校生だぞ!そりゃあ屋根から飛び降りとか高校生やってみたいランキングの上位に食い込むだろうけど体が追い付かないって!いや木の破片が無きゃうまくやっていた!絶対そうだ!



「ほう。本当にここまで来たのか」

「屋根をぶち抜くとかそんなことするか普通?」



顔を上げて立ち上がるとそこには3人いた。

片方はなんかすごそうな格好をした盗賊。

もう一人はマウルだった。そして村長もいる。

盗賊が1歩進んで口を開いた。



「さあて、ここまで来た褒美に俺が相手してやる。俺は《滅す獣》(フラスト)の幹部だ。喜べ」

「え、無理」

「オウマ、そこ真顔で返さなくていいから……」



この状況で喜べるやつはただの戦闘狂(バトルジャンキー)だろう。



「まあフラスコはどうせそんなやつらばかりなんだろうけど」

「おい、誰がフラスコだ。《滅す獣》(フラスト)だ。間違えんなクズが」

「おい!それじゃクズに失礼だろ!謝れ!」

「お前はそれでいいのか!?」

「オウマ、今はそんなアホ争いをしている暇はないわよ?」

「「誰がアホだ!」」

「あれ!?二人とも敵に回した!?」



失礼な!誰がアホだ!

こんなやつと同類にされるとはエルサの見る目も落ちたもんだ!



「ナルゴ、少しは冷静になれ」

「あぁ、わかってる。まずはお前からやるか?」



ナルゴと呼ばれた男が俺を指名してくる。

お?これは俺の出番か?

そう思いながら俺は高々に告げる。



「しょうがない。そこまで言うなら相手してやろう。エルサが!」

「あんたは!?」



だって死ぬもん。

一般高校生ですよ俺。

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