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3.祖父様

ダンジョンを抜けて3人についていくと村に着いた。

といってもあまり距離がない。

ダンジョンの出入口から村が見えてたくらいだから。

見渡す限り畑、家、畑、森、畑、家、雑草、家、畑。

まさしくTHE・村である。


さらに3人についていくとある建物の中に入っていった。俺も中に入る。

その建物はどうやら居酒屋らしい。中には木造のテーブル、椅子などが配置されている。

3人の1人がカウンターにいるゴツい体をしている初老の男性に声をかける。



「ガイジュさん、こんちはー」

「お、ガキども。今日も生きて戻ってきちまったのか」

「当然だって、もうあれくらいのダンジョンなら油断さえしなければ死なないよ」



なんか随分と物騒なセリフを言う爺さんだったが、剣士の男はなんでもないように返す。だいぶ手慣れているな。



「それにしたって、今日は随分と早く終わらせて来たな。なんかあったのか?シークス」

「ダンジョンの中で迷子を見つけたんだ。知らない?」

「ど、どうも」



迷子と言われたことに若干の抵抗があったが、水を向けられたので挨拶をする。

すると、ガイジュと呼ばれた爺さんは目元を鋭くし、明らかに警戒の色を浮かべた。

怖い、怖いよ。頼むからそんなに睨まないで!



「ガイジュさん、睨むなって。怯えてるじゃねぇか」



怯えてないやいっ。



「ワリぃ。ガイジュさん、初対面の人相手だと、つい警戒してしまうんだよ。でも基本、悪い人じゃないから」

「人聞きが悪いことを言うな。元々こういう顔だ」



いや、それはそれでどうなんだ。

確かに怖い顔をしているけどシークスと接するときは顔が微妙にだが和らいでいた。たぶん、知り合い相手だと気楽に話せるんだろう。誰が相手でも適当な俺とはまた違うタイプだな。



「実を言うとこいつ記憶喪失らしいですぜ」

「本当か。ならばなんとかせねば」

「何を悪い話っぽい感じで話してんのかな?」

「あ、そういえばお前の名前聞いてなかったな。名前は覚えているのか?」



そういえば確かに名乗っていない気がする。



「俺は(みやび)凰真(おうま)だ」

「ミヤビオウマ?名前に変な区切りを入れてるんだな。」



あ、もしかしてこの世界は名字が存在しないのか。

ならば訂正しよう。



「ゴメン。凰真でいいよ」

「オウマか。俺はシークスだ。よろしく。で、この厳ついおっさんはガイジュさん」

「厳ついは余計だ」

「俺はキーン」

「ぼ、僕はニルムです」



鎧男、槍男からも順に自己紹介される。

大事なのは第一印象だからな。ここはしっかりしておかねば。



「で、オウマの寝床どうする?」

「ん?そうだな………」

『あれ?あんたたちもう戻ってきたの?』



突然、話に割り込む声が聞こえた。

そちらの方に顔を向けるとそこには一人の女性が立っていた。

見た感じ年齢は俺と大差ないと思われる。淡い青色の長髪を後ろで束ねてポニーテールにしている。

一言で表現するならば美人といったところか。



「エルサか。ちょうどいいところに来た」

「うん?何が?」

「こいつをお前の家に泊めてやれ」

「「へ?」」



エルサと同時に俺も驚きの声をあげる。

今なんて言った?女性の家に泊まれって言ったのか?

無理です。無理無理。できるわけないじゃんそんなの。

そしてエルサも否定する。



「ちょっと!なんで私がこの男を泊めなくちゃいけないの!?」

「見たところ同じくらいの年齢みたいだからな。気楽に話せるんじゃないかと思って」

「いやいや、無理あるから!

「それにお前の家は広いだろ?一人くらい泊めても問題はないはずだ」



ガイジュが正論を言うとエルサは押し黙る。

でも、それだと俺も困るので意見を出してみる。



「ここには、宿泊施設みたいなところはないのか?」

「ここは村だぞ?誰かが宿泊することがまずない。街に行けばあるだろうが距離があるからな」



どうやらこの村には宿泊施設はないらしい。

困ったな。本当にエルサの家に泊まるしかなさそうだぞ。

エルサも思案顔をしている。俺を泊めるかどうか悩んでいるのだろう。



「……………まずは、お祖父様に相談するべきではないかしら?その話はそれからだと思うのだけれど」

「確かにそれはそうだな。それじゃ行ってこい」

「なんで私!?」

「俺はここを離れるわけには行かないからな」

「…………(ギッ)」

「い、いや。俺たちはまず街から来たんだぞ。無理に決まってるだろ?」



エルサがシークスを睨んで、シークスは慌てて反論する。

シークスたちは、街から来たのか。この村に住んでいるわけじゃないんだな。それならしょうがない。

しょうがないからさ、エルサよ。そこらで許してやれ。睨みすぎ。



「それなら街に連れてってやりなさいよ」

「だからさ、俺たちで保護することが難しいって。俺たちはハンターだぞ?」



シークスがそう言うとエルサはたじろぐ。

ハンターってなんだ?あれか、RPGで有名なやつか。モンスターを狩りまくって英雄気取りしてるやつか。

新しく聞いた言葉に適当に検討をつけて、会話の行方を見守る。


なんで、会話に参加しないのかって?

だってさ…………………エルサが怖ぇんだよ。

下手なことを言ったら俺まで巻き添えを喰らう。


すると、キーンが言葉を発する。



「まず連れてけ」

「お祖父様のところに?」

「………………(コクッ)」



話の終わりが見えてきた。

どうやらエルサのお爺さんに会わせる気らしい。

別にそれは構わないが……………。


あることが気になり、近くでビクビクしているニルムに聞く。



「エルサのお爺さんってどんな人?」

「あ、え、えっとこの村の村長ですよ」



ニルムは緊張しているのか、しどろもどろに答える。

ほぉ、なるほど。確かに村長に会わせるというのは妥当なところだな。…………ん?ちょっと待てよ。



「もしかしてエルサって」

「あ、えっと、村長のお孫さんです」



マジかー。

ずっとそこらへんの村娘だと思ってました。

RPGで俗に言う村人B程度の存在だと思ってましたよ。




------




「記憶喪失とな?」

「うん。どうやってダンジョンの中に入ったのかも覚えていなくて」



目の前で村長と会話をするエルサ。俺はその会話の行方を見守る。


……なんか俺の思ってた村長とイメージが違うなぁ。

ちょっと厳格っぽい感じの人をイメージしてたんだけど、目の前の村長は能天気さを感じる。



「ふむ。それならエルサ。お前の家に泊めてやんなさい」

「うげっ。お祖父様までそんなことを……」



年頃の女の子がうげっとか言うんじゃありません。



「一番妥当な選択肢だと思うのじゃが」

「………………………………分かったわよ。泊めればいいんでしょ」



どうやら泊める方向で話は決まったらしい。

村長は自分の孫の家に同年代の男が泊まることに何も反応は示さないのだろうか。



「ところで少年よ」

「………?あ、俺っすか」



俺らが部屋から立ち去ろうとすると村長が手招きをする。

耳を寄せて村長が喋りだす。



「君はエルサをどう思うのかね?」

「ブフォ!?」



真面目な表情をするもんだから何事かと思ったら何言ってんのこの人!?



「ど、どうとは?」

「好意があるかどうかという意味じゃが?」



あぁ、この人正気じゃないな。

今日始めて会ったばかりで記憶喪失という胡散臭い男にこんなことを聞く人が存在するのだろうか。

いや、目の前に存在していたな。



「エルサもいい年頃なんじゃが、生憎村は小さくて近い年頃の男がおらんのじゃよ。そなたなら丁度いいかと思ってのぅ」

「それだったら多少年の離れた男でもいいんじゃないですか?」

「エルサの好みは同い年の男じゃからのぅ」



どうやらエルサの好みは同い年の男らしい。

いや知らんがな。

まずそもそも本当に同い年なのかどうか。



「ちなみにエルサの歳は?

「16じゃよ」



おぉ、マジで同い年だった。

エルサも変な好み持ってるよな。なんで同い年にこだわるのか俺には分からん。



「俺とは今日会ったばかりですよ?なんで大丈夫だと言い切れるんですか?」

「勘じゃよ」



あぁダメだこの人。もう元には戻れない。



「わしはこう見えても見る目だけはある。そなたは信用できる男じゃよ」

「は、はぁ」



村長は自信満々に言う。

いろいろとおかしいところはあるけど、信用されてるっていうのは嬉しいな。



「ま、まぁ。考えておきます」

「うむ。それと、1つ言っておきたいことが」

「はい?」

「エルサと付き合うことになったらわしに教えといてくれよ」



やっぱりダメだこの人。頭を棍棒でぶん殴っても戻らない可能性がある。

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