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23.犠牲者

「へぇ~~それが【パララインド】?」

「おう」



リリィに襲われた翌日、【パララインド】の合成に成功した俺は実験を行っていた。

実験というのは…………そこらへんにいる蟻を麻痺らせるという、



「あんた悲しくないの?」

「悲しいぞ!悲しいけど実験は必要だろ!?これはしょうがないんだ!」



正直言ってしゃがんで蟻を触るだけの作業は端から見ても虚しい。

くぅ!実験だ。これはあくまで実験なのだ。

耐え抜け…………!



「よし、これぐらいでいいだろ。とりあえず予想と大差ないからダンジョンに行ってみるか」

「そうしましょう」



合成して出来上がった【パララインド】は手袋(片手用)だった。

手に身に付けて触れば麻痺を引き起こす。

20センチ以内限定で。

そしてこれからダンジョンに行くため準備をする。

といっても俺はとりあえず何も準備することがないので昨日イーナから貰った両手剣と【パララインド】を手に持つ。

エルサというと、



「………………お前案外似合ってるもんだな」

「そう?」



エルサは戦闘用と思われる服装を着て胸当てのプレートを身に付けただけの簡単な物だった。

でもなかなか似合っていた。

やっぱりエルサもハンターなんだな。


エルサが手に剣を持って立ち上がる。



「あんたはその剣イーナから貰ったんだっけ?」

「そ、あとでお礼言わねぇと。で、早速行くか?」

「午後に露店を開きたいなら今のうちに行きましょう。今の時間帯なら人もほとんどいないと思うし」



それはつまり未だこの村の知名度が低いということなのだろう。

いや、少しでも街の人に知ってもらえている分だけでもまだマシかもしれない。

街の人は村の存在さえ知らないという話だから。



「よっしゃ!目指すは《爆魚》!捕まえろエルサ!」

「いやあんたの仕事でしょ!?」



これにてダンジョンに向かう。




――――――




「で、なんで俺を巻き込む」

「ん?文句はあるか?」

「あるね!ありまくりだね!人が休憩しているときに何巻き込んでくれちゃってんの!?」



シークスが文句を言う。


いや、あれだろ。道端にゴミがあるとするだろ?

それを捨てれば優しい人だろ?

つまり俺は優しい人だ。

この理屈が分からないやつは全員バカね。



「俺には酒屋でじいさんと一緒に酔い潰れて寝てたようにしか見えなかったぞ」

「それは偏見だ。午後の戦いのために集中力を高め瞑想していただけだ」

「それこそ偏見だろ!?いい表現にしすぎだ!」



見方は人それぞれだと思う。



「で、オウマ。なんでシークスを?」

「簡単だ。おと…………犠牲にするだけだ」

「今囮って言いかけたな!しかも言い直してもたいして意味変わってねぇし!儚い犠牲が生まれるだけだし!」

「どこに儚い犠牲が生まれるんだ?」

「もはや儚いとさえ思ってねぇぞこいつ!」



そうこう言ってる間にダンジョン到着。

さすがにダンジョンに踏み込んだ瞬間二人とも真剣な顔つきになる。



そして数分で2層到着。


早い!早すぎる!

ダンジョンに入ってまだ五行なのに!


結果だけ言えば、エルサが強すぎました。

鬼神の名に恥じない勢いでした。

エルサが暴れている間俺とシークスはただ眺めるだけ。



「やっぱ鬼神だな」

「あぁ、鬼神だ」



俺たちが怯えていたのは言うまでもないだろう。



「この先に例の池がある空洞に差し掛かるわ」

「よし、それじゃこれ持てシークス」



そう言って俺はシークスにある物を渡す。

見た目はハンドクリームの容器に見えるが中身は全く別の物だ。



「これなんだ?」

「それはあとで。これを持ってここで待機。俺とエルサが空洞に入って3秒したらその蓋を開けろ。いいな?」

「いやちょっと待てって、これどういう…………」

「それじゃよろしく頼んだ!」



シークスの質問を無視して池に向かう。

説明しないのはごく単純。言ったら断られるのが目に見えてるからだ。


岩壁に大穴が開いてるのが見えそこに入る。

するとそこには、



「池?」

「でしょ」



大きな水だまりを【ブライムペンダント】の光で照らす。

そこには石で囲まれたちょっとした池が出来ていた。



「なるほどね。こんな風になってるのか。何か泳いで「うおぉ!?モンスターが沸いて出てきたぁ!?」いるのが見えるけどこれが《爆魚》か?」

「今シークスの叫び声が聞こえたんだけど!?あとついでにモンスターの音と思われる物が多数!」



ふむ。どうやらちゃんと指示通りの行動をシークスはやってくれたらしい。儚い犠牲に感謝。



「大丈夫。あいつは元々囮にするつもりで連れて来たから」

「うわぁお。清々しいくらいに友達を売ったわね。どうせさっき渡した変な容器に秘密があるんでしょ?」



売ったとは酷いな。

勝利への礎とでも言ってもらいたいもんだ。


俺はポーチからその話題に出た容器を取り出す。

話題というか確かにこれのせいなんだけどな。



「これは【カフューム】て言って、片手間で作った合成物だ」

「素材を集める暇あったっけ」

「これの素材集めがそこらへんの店で買えたから手間はかからなかった。で、これの特性が」

『オウマァ!テメェあとで覚えてろぉ!モンスターどもかかってこいやぁ!』

「その匂いを嗅ぎ付けたモンスターを引き寄せる」

「………………………怖っ」



【カフューム】の使い方はごく簡単。

この容器に入っている液体からは恐らくモンスターにしか分からないであろう匂いが発せられる。

その匂いに魅了されモンスターが沸いて来るというもの。


音を聞く限りそれなりにモンスターを引き付けてくれたみたいだ。

これで安心して《爆魚》の捕獲に集中できる。


とりあえず目につく《爆魚》に触る。

すると、《爆魚》は一瞬ビクッとしたがすぐに沈黙し動かなくなる。



「生きてるよな………?」

「《爆魚》の心配をするくらいならシークスの心配をしたら?」



もしかしたら死んでても合成できるかもしれない、と早々に割り切り、ビンに詰める。

そんなことを繰り返し計10匹を入手する。



「まだ何匹か残ってるぞ?」

「全部捕獲したらこの池に誰も住み着かなくなるじゃない。《爆魚》は稀少種とまではいかないけれども数が少ないのよ?滅多に爆池なんて見つからないし」

「あ、そっすか………」



できれば合成で作る際のサンプルでもっと欲しかったけどそういう事情ならしょうがない。

ここで捕まえすぎて《爆魚》が2度と入手できなくなったら元も子もないし。



「さて、そんじゃ戻る…………とぉ!?」



戻ろうと思い後ろを振り向くとそこには出入り口があるはずだがそこにいたのは蠍らしき物体だった。



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