表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/59

22.好意的

事前に説明しておこう。


露店というのは商人が選び抜いた商品を道端に並べ、誰の目にも届きやすいようにして売る方法のこと。

店舗を構える場合とは違って売る商品に限りがあるうえ、場所も限定されるがこれはこれで趣があり、好まれやすい。

だから店舗を構えずに露店を開いて商売をする人は決して珍しくもないらしい。

それはすなわち露店は商人の性格、心意気が表に出やすいとも言える。つまり商人が自分をアピールする場とも言えるだろう。

露店とはそういうものなのだ。

決して…………



男女がくっついてイチャつく場所ではない。




「え、え~~とリリィ?そろそろ離れてくれると嬉しいんだけど」



俺は右腕を掴んで離さないリリィを見ながら言う。


なぜだ。なぜこうなった。

俺は何も悪いことはしてないぞ神様。



「嫌!オウマお兄ちゃん最近かまってくれないんだもん!」



リリィはそう言うとより強く腕を抱いてくる。


これはこれでリア充気分を味わっていることになっているが、なぜか全然そんな気持ちにならない。

まあ相手は年下だからな。変な気持ちを持つほうがおかしいか。



「お兄ちゃんはな、忙しいんだ。分かってくれるか?」

「私も忙しいよ!」

「それならなぜ来たのかね!?絶対勢いで言ってるでしょ!」



先程までの経緯を説明すると、


〈リリィが現れた〉

〈オウマは《隠れる》を使った〉

〈リリィは《高速移動》を使った〉

〈リリィは《オウマの右腕》を捕獲した〉

〈オウマは困った〉


といった具合。

ようするに一方的にやられた。

情けないとか言うなよ!?マジで早いからな!



「ねぇ遊ぼうよぉ~。(リアル)鬼ごっこしよう?」

「不穏な空気が漂ったのは俺の気のせいか」



なぜか鬼ごっこの前にリアルという言葉が聞こえた気がした。

そこから連想されるものは俺は1つしか思い浮かばない。

連想するのは決して鬼を賭けた遊戯ではない。生死を賭けた遊戯だ…………!



「大丈夫だよー。私が襲うだけだから」

「全然大丈夫じゃないぞそれ!?少なくとも子どもがやっていいことじゃねぇ!てかそれ俺が逃げる前提の鬼ごっこ!?」



生死は賭けてなかった!男の体裁を賭けてた!

これはこれでいろいろとマズい!

あとリアルの方向性がおかしいことに気づいてほしい。



「心配しないでオウマお兄ちゃん。優しくするから」

「まさかの事後処理まで話が進んでる!?しかもそれどちらかというと男のセリフな気が!」

「(ポッ)そ、そう………。わかった。優しくしてね」

「違ぁ~~~う!俺はやらないから!そこは誤解すんなよ!?」



最近の子どもは最悪だ!教育悪すぎない!?


そんなとき救世主が現れた。



「おう、たっだいま~~と、オウマ。なんで感動した目で俺を見る」

「あなたは神様じゃ…………」



思わず拝んでしまう。


現れたのはシークスとキーン、ニムルの3人組。

そろそろダンジョンから戻ってくる頃かと思ってたけどナイスタイミング!



「あれ?オウマくん。その子どうしたんですか?」

「迷子?」

「いや、遊びに来た子」

「リリィと言います!」



可愛らしく敬礼をするリリィ。


うん。俺のときもこれぐらい礼儀正しければ扱いも楽になるんだけどね。どうも人前だと猫を被ってるようだ。


ニムルとキーンがリリィの可愛さに和んでいる。

そんな中、



「………………………」



なぜかシークスだけ時が止まっていた。



「シークスくぅん?」

「……………………」



声をかけても反応はない。



「(コチョコチョ)」

「……………………」



コチョコチョしても反応なし。

これはなかなかやりごたえがありそうだ。



「(パチン)」

「……………………」



デコピンでも動く気配がない。

ならばこれならどうだ!



「て、ちょっと待てぇ!お前その剣どこから持ってきた!?」

「あ、これか?最初にイーナ来て護身用にってくれたんだよ。ちなみにお返しはちゃんとしたぞ」

「よしわかった!入手経路はわかった!ならあとはその剣を振りかぶらずにしまおうか!」

「そんなことしたらシークスを起こせないだろ?」

「目の前にいるだろ!?というかそれ起こすどころじゃねぇから!この世にいられなくなるから!」



ちなみにイーナへのお返しには【ソーフル】を何十個かプレゼントした。ただそれじゃ足りないよな。

こちとら剣貰っちゃったし。

でもタイミングはいい。これでこいつに引導を渡せる…………!



「それよりもこっちこい!」

「ぬおっ!?」



シークスに住宅の隅っこに引きずられる。

まさかこれは……………!



「オウマ、聞きたいことがある」

「ふざけんな!お前に初めてを奪われてたまるか!」

「何の話だそれ!?さも人にホモっ気があるように言うな!誤解を招くだろ!それよりもあの子はどうした!」



よかった。もし本当にホモだったら天国に行かすことができなくなるところだった。

俺がこの手で地獄に落とすしかなくなるからな。



「リリィのことか?あいつは勝手に遊びに来ただけだぞ。露店にはなんも面白いもんはねぇのにな」



リリィがそんなことを求めていないのは知ってるがわざわざ言う必要ないだろう。ロリコン扱いされかねん。



「というかなんでそんなことを?あ、お前もしかしてホモじゃなくてロリだったか?そりゃあ誤解して悪かった」



俺は冗談半分で言ってみる。

それなのに、俺は冗談半分で言ったつもりなのに



「は!?い、いきなりな、なに言ってんだ!?そ、そそそそんなことねぇだろ!俺がきょ、興味あるとお、思うか!?」



なぜかめっちゃ動揺してた。



「…………………え?マジで?おま、それ犯罪だぞ………?」

「だ、だから違うって!ご、誤怪だ誤怪!」



だからなんで慌てる。

ほら、慌てるから誤解の文字がおかしくなってるだろ。

それだとまるで誤って怪しい道に踏み出したという熟語に見えるぞ。



「安心しろ、俺はいつでもお前の味方だから………………………………………………表面上は」

「全てにおいて安心できねぇよ!心の声が出てるぞ!」



しかしそうだったのか………まさかシークスがロリコンだとは。

どんなに顔がいいやつでも欠点ってあるよな。

……………ん?これは利用できる。



「よし、それなら俺に任せとけ!」

「いったいどうした!」

「大丈夫だ!俺もお前の性癖も全て幸せになる。一石二鳥だ!」

「一単語余計だぞ!?それだと俺自信は幸せになってねぇじゃねぇか!」



そんな声は無視して露店に戻る。

そして一応確認しておこう。

ニムルにコソッと耳打ちする。



「シークスってロから始まってンで終わるやつ?」

「違いますよ。2文字目にリがきて全部で4文字のやつですよ」



違うと言ったはずなのになぜか俺が言ったやつと変わらない気がする。

ということは…………周知の事実というわけか………。



「オウマくん。まるで弱みを握ったと思ったけど握り損ねてしまったという顔をしていますよ?」



残念だ。非常に残念だ。


ちなみにシークスのほうを見てみると、



「ねぇ、君。どこの家に住んでるの?あぁ、俺?俺はシークス。大丈夫。怖い人じゃないよ。なぜなら君を幸せにしてあげるからね」



ヤバい!犯罪臭がする!



「オラァ!(ブン!)」

「…………っ!(サッ)」

「んなバカな!今のを避けただと!?」



確実に死角から剣で刺すはずだったのに高速でかわされた。

こいつこんなに強ぇの!?

いや人間越えてるだろ!



「僕にはシークスくんが修羅と化したストーカーに見えますが…………」



それには同感だ。



「コノ子ハ渡サン。キシャアァ!」

「人間、越えた?」



違うぞキーン!こいつ人間やめてるから!

奇声あげてるから!

もう悪魔と契約してるよ絶対!



「シークスお兄ちゃんどうしたの?」

「ううん。なんでもないよ」



リリィが無垢の表情で尋ねると一瞬で表情を変えるシークス。


ヤバいって。これロリコンの中でも重症なタイプだ。

ほら、キーンとニムルも怯えとる。こいつ危険っすよ。

俺はただリリィにシークスを押し付けて逃げようと考えてただけなのに危なく犯罪者を生み出してしまうところだった。



「ねぇ、リリィちゃん今晩俺の寝床に来ない?歓迎するよ」



だから犯罪だってぇの!

だがそのあとのリリィの一言が余計だった。



「ゴメンなさい。私今晩はオウマお兄ちゃんを襲う予定があるから行けないの

「…………………………………だびれ?」



リリィぃい!?初耳なんですけどそれぇ!

子どもが夜這い宣言してんじゃねぇ!



「(ギラッ)」

「よし落ち着けシークス。俺をよく見てみろ。俺が好かれるような男に見えるか?見えないならその剣をしまえ」

「そ、そうだよな。まさかお前が幼女を汚すようなことしないよな」

「お前は平気で汚そうとしなかったか?」

「大丈夫。エルサさんにはバレないようにするから!」



だからその一言余計だって!



「オウマ、俺は悲しいよ。この手で大事な親友を失ってしまうことが」

「殺す宣言すな!お前はすでに人間としての尊厳を失ってんだろ!いや人間としての感情すら失ってるな!」




そのあとリアル鬼ごっこが始まり露店どころでは無くなった。

なんとかその場に居合わせたハンターたちが止めてくれたおかげで

事は終息を迎える。




――――――




「なんでお前がぁぁあ~~~~!?」



その夜。本当に夜這いしてきたリリィを止めるのに必至だった。

ちなみにエルサに速効で始末された。

俺が。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ