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2.遭遇者

「え、え、ええぇぇ~~~~」



現在、洞窟っぽいところに立ち尽くす俺。見渡しても暗い闇。目の前にある扉が発光しているのか扉の周りが明るくなっているので見るのには困らない。だが、問題はそこじゃない。



「俺、図書室にいたよな?」



もちろん答える声はない。



こういうときは落ち着こう。こうなった原因を探るべきだ。

えーと、さっきまでやっていた行動は…


図書室にて本を返却する。

→怪しげな本を見つける。

→浩介が図書室に来る。

→意味不明な本を読む。

→中身が中二病みたいだったので本棚に戻そうとする。


結果:現在にいたる。




「どう考えてもこの本のせいだろぉお!!」



思わず全力で本を壁に投げつける。


考え直してみたら原因ありまくりだな!この本が原因としか考えられないな!なにこれ、中二病の疑いをかけるどころかもはやこの本中二病そのものじゃねぇか!



「はぁはぁ、とりあえずどうしようか」



本を拾って考える。現在の服装は制服。最後に見たときと変わらないまま。今いる場所は洞窟の雰囲気を醸し出している。そして目の前にある扉……………



「とりあえず開けてみるか」



やってみないことには始まらない。取っ手を持ち思いっきり押してみる。そしたら、ちょっと押しただけで扉が自動で開いていく。



「し、失礼しま~す」



緊張しながら入っていく。扉の中はとてつもなく広い空間だった。そして俺の正面に広間の中央に鎮座している物体が存在していた。


いや、言い換えよう。ドラゴンがいた。



「★●◎〒※#◇■!?」



危うく大声を出しかけて止まる。


マジで!?ドラゴン!?ちょっと待てぇえ!!死ぬ!死ぬよこれ!


内心すごいパニック状態。どうやらドラゴンは寝ているらしいが目覚めでもしたら…………考えたくもない。むしろ扉を開けたときによく気づかれなかったものだと思う。


そうして全力ダッシュを試みようとしている俺の目にあるものが目に止まる。それは………光る鉱石だった。


この広間を覆いつくさんばかりに無数に配置されている。そして鉱石1つ1つが光ることによって広間を明るく照らし出している。



「………………金になりそうだな(ボソッ)」



つい本音が漏れる。


だって、なんかレア感丸出しなんだもん!ちょ、ちょっと貰っていくだけなら問題ないよね?


ドラゴンに気づかれないように忍び足で鉱石の元に近づく。そしてあることに気づく。



「どうやって採掘しよう…」



素手で取ろうと思っても取れる物じゃなかった。ピッケルかなんかあればよかったんだけど……………。



「しょうがない。諦めるか」



今度こそ脱出をしようとしたとき、足に何かがぶつかる。


ん?これは…………見た目牙っぽいもの。

なんか嫌な予感がする。


ちらっとドラゴンのほうを見てみる。ドラゴンはその瞼を閉じたまま。どうやらまだ気づかれていない。そしてドラゴンの口許を凝視する。具体的に言えば、口に生えている鋭利な牙を。


今、自分が持っている牙と見比べる。どちらも同じような代物。


あー、これはドラゴンの牙でしたか。そーでしたか。

………………やべぇバレたらマジで死ぬ。



もう後戻りはできないと腹をくくり、手に持っている牙を壁の鉱石に打ち付ける。



カキン……………。



鉱石と牙が衝突する音が広間に響く。


うおぉ、起きるなよ絶対に起きるなよ。


心の中で念じながら採掘を続ける。どうやら牙は想像以上に固くて鋭い物だった。順調に作業を進めていき、……………………ついには手頃なサイズな鉱石を掘り出す。



「ふぅ、やっと掘れた」



手元の鉱石をポケットに入れ、そそくさと扉に向かう。扉まで来たとき、少し振り向いてドラゴンを見ると、少し名残惜しさを感じる。けど、そんな感傷は振り払い、正面を見据える。そして



全力ダッシュ。



そりゃあもう、新記録更新できるんじゃないかって勢いで。名残惜しさ感傷も全てをかなぐり捨てて逃げました。


まだ死にたくねぇもん!まだ生きたいからね!




------




しばらく走り続けた。正確に言えば、疲れ果てるまで走った。

想像以上にこの洞窟広かったです。

どれだけ走って走って走りまくっても一縷の光も見えやしない。


あまりにも暗すぎて走っている途中で何度も岩壁にぶつかった。

おかげで体の節々が痛い。

それでも足を止めることはできなかった。少しでも足を止めたら後ろからドラゴンに殺されるかもしれない、とそう考えてしまう。


しばらく走ることで冷静さを取り戻す。

まだ暗いままで右手を壁に添えながらゆっくり歩き出す。


どれくらい歩いただろうか。暗い中だと時間感覚すら分からなくなってくる。

そろそろ休もうかと思い始めたとき、何か音が聞こえた。



ザッザッ……………



微かに聞こえたその音だったが、俺はその音が聞こえた瞬間、その音に向かって全力ダッシュした。


何があるかは分からない。分からないけど、俺にとってはその音が頼りだった。


走っていると目の前に光が見える。その光が徐々に大きくなっていく。その先には……………



「うぉ!?お前誰だ!?」



人がいた。




------




今俺の目の前に3人の人がいる。

一人は背中に剣を携え、一人は身体の周りに鎧を覆っていて、一人は槍みたいなものを持っていた。


なんかRPGみてぇ。


一言で表現するならばそうなる。

まるでいわゆる異世界を生きている気分だ。


今はこの人たちはどうやら出入口に案内してくれるらしい。

鎧男が持っている木の棒の先が光っていて周りを照らし出す。



「で、お前は丸腰でなんであんな奥にいたんだ?」



剣を携えた男が歩きながら聞いてきた。恐らくリーダーなのだろう。


正直に言っても信用してもらえなさそうだな~。


まさか瞬間移動的な感じで来たなんて言えない。

…………………しょうがない。奥の手を使うとしよう。



「実は、よく覚えてないんだよ」



頭を抱えるようにして言う俺。

だが全てはフェイク。演技。騙し討ち。


記憶喪失ならば全て成り立つでしょ、という話です。

後々でめんどくさいことになるかもしれないけど、それは後で考えればいい!今を凌ぐのが優先だ!



「え、なに?記憶喪失なのか?」



驚きの表情をする男。


よっしゃ、効果覿面!


俺が心の中でガッツポーズをしていると更に話が進んでいく。



「でもさ、よく丸腰でモンスターに襲われずに済んだよな」

「へ?モンスター?」



そういえばドラゴンがいたよな。



「あ、そうか。記憶喪失なんだっけ。ここはダンジョンて言って、モンスターが徘徊しているんだよ」

「うへっマジで!?よく俺遭遇しなかったな」

「まぁ、出入口に戻るだけならモンスターに遭遇はしないんだけどな」

「なんで?」

「よくは知らないけど、モンスターっていうのは自分の巣に侵入してくるやつらは撃退しようとするが、自ら出ていこうとするやつらは無理に襲おうとしないんだと」

「へぇ、逆に追い打ちかけようとするもんだと思ってた。」

「まぁ、モンスターが襲う目的は自分の巣に入りこんでくるな、というのが大半らしいからな。こっちにとっても襲われないのなら助かるし」



どうりで全く遭遇しなかったわけだ。

逆に立ち止まってたりすると襲ってくるらしい。


走り続けてよかったぁ~~。



「お?出入口が見えてきたぞ」



言われるまでもなく光が見えてきた。

だが………なぜか嫌な予感がする。


その出入口を抜けた先には…………



「さて、それじゃ村のやつらに預けるか。ん?どうした?」



俺の目の前には森が広がっている。

だが、森というほどでもなく、木の隙間から村と思わしき物が見える。


足下には雑草が生えており、後ろを振り返ってみるとそこはひとすら森だった。


認めたくなかった。

認めたらもうあの世界には戻れない気がしたから。

でも、これはもう否定しきれない。



ここは、異世界だ。

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