19.新素材
「う~~~む」
俺は今読書に明け暮れている。
違いますよ?休日だから家に引きこもってグータラ過ごす人とはチャイますよ?
てかここ異世界だし。
読書しているように見えるがやっていることは合成術の解読。
いまだ合成したのは【ブライム】だけで他には一切手をつけなかった。
だから暇を見つけて解読しようと心に決めていた。
そんな中、玄関のドアが開く。
「ただいま~~ってうわっ。あんた暇してるわね~」
入ってきたのはこの家の主エルサ。
入ってきて第一声がそれはないだろう。
ただの文句やん。
エルサは先程まで食材の買い出しに行ってた。
もうエルサ主婦だな。とりあえず主婦レベル10あたりで。
「合成術の解読をしているんだよ。他にも何かいいやつないかなと思って」
「へぇ~~どうせだったら家事に使えそうなのよろ」
「知るかいな。俺の基準は売れるかどうかなんだから。…………とそれならこれはどうだ?」
「何かいい物見つけたの?」
エルサが俺の発言に身を乗り出す。
俺は本のページの一部を指し示す。
※※※※※※※
《アルムオイル》+《華水》=【ソーフル】
TEXT~
これを使えばあっという間に綺麗になっちゃう♪
一家に100個あっても損はなし!
あらゆる物を存在がなくなるほどピッカピカにしちゃいます☆
もちろん骨の髄まで(半分冗談)。
※※※※※※※
「相変わらずの内容にもはや呆れるし一家に100個って多すぎだし存在がなくなるほどってピッカピカのレベルを遥かに越えてるし骨の髄までって怖いうえ半分冗談っつうことはもう半分はどうしたあぁぁ~~~~~~~~!!」
「すごいわね。肺活量世界一狙えるんじゃない?」
「注目するところはそこじゃねぇからな!?」
この本やっぱりおかしいって!
俺の想像の斜め上行ったあといきなり真逆の方向に行かれたぐらいに!
「でもということは掃除に使えるってことなんでしょ!?今すぐ作ってよ!」
「まずその前に素材を「私が集めるわ!」お前が集めんの!?」
自分に利があるとわかったときのこの女の行動力。
そういう女子は自分の欲望に負けて人のことを裏切るタイプです。
「エルサって戦えんの?」
「あら失礼ね。私もハンターなのよ?」
「へぇ~~そうなんだ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………だびれ?」
「ゴメン。地上の言語で頼める?」
マジか!?エルサハンターだったの!?
どうりで強いわけだ(物理的に)!
「あ、もしかして時々家からいなくなってたのって」
「あぁそれ《ビザノ》から依頼が来てたのよ。あそこの村長とは顔見知りだからさ」
「おぉう」
俺の知らないところでエルサがハンターやっておった……。
なんでだろうか。
エルサがダンジョンでモンスター相手に剣を振り回して八つ裂きにしてるところを想像してもまったく違和感がない。
むしろ似合いすぎてる。
どちらかというと返り血を浴びて邪悪な笑みを浮かべてそうだ。
そう思うとそんなり受け入れられた。
「あんた私をなんと思ってんの?」
「悪魔の力を持った鬼の血を引き継いでる美女」
「なんかもう開き直ってるしでも美女と言われて喜ばないわけでもないけどそれでも悪魔の力とか鬼の血とか意味わかんないしその言葉にムカつかいてくるしでもやっぱり美女という言葉は嬉しいわけでって私何言ってるのかしら!?」
「おぉ、肺活量世界一更新したんじゃね?」
「冷静に判断しないでよ!?」
もう悪口だけ心を読まれるとわかっているならば開き直って堂々とする。
人間諦めが肝心ですよ?
どこぞの誰かさんは諦めたら試合終了とか言ってるけど、そんなの本物の鬼の前では無力に等しい。
「話は逸れたけど《ビザノ》からの依頼で《ミラノ》で素材収集していたのだけれどだいぶ集まったのよ。そろそろ《ビザノ》に行こうかとは思ってるのだけれど」
「(ハッ)まさかエルサ……………俺を見捨てるつもり!?」
「なんで見捨てられた子どもみたいな表情を!?あんたいい歳なんだから自力でなんとかしなさい!」
「行かないでくれ!正直言って同棲という響きにニヤニヤしないでもなかったんだから!置いていかないでくれ!」
「それ説得してるつもり!?」
どんなに普段の性格が悪いと言ってもエルサは根は優しい。
それが分かっているからこそ俺も信用することができるし、安心して同せ……………過ごすことができる。
だからせめてな。自分が原因だということは棚に置いて時々鬼を見せるのはやめてほしい。
女の子の仮面が外れてるんです。
「今すぐじゃないわよ。今はそんなことよりその【ソーフル】とやらの素材を集めるのよ!」
「素材に心当たりがあんの?」
「もちろん。私を誰だと思ってるの?」
「エルサだろ」
「そんな生真面目に答えちゃう!?それを言われたら私が痛い人みたいじゃないのよ!」
この世界に痛いという意味合いは通じるのか。
中二病は通じないくせに。
「それでまずはどうすんの?」
「実を言うと《アルムオイル》も《華水》もある方法を使えば手に入るのよ」
「どうやって?」
「そのためにはあれが必要になるから早速取りに行きましょう!」
《ソーフル》合成計画が急遽スタート。
――――――
「それで、あれってなんだよ?」
「行けばわかるわよ」
そう言って行きついた先は…………………《クラシック》?
エルサが躊躇なく入っていくので俺も戸惑いながらも入店する。
入ると客と思わしき人たちの会話が聞こえてくる。
そんな人たちに目もくれずエルサはカウンターに近づき店主に声をかける。
「ガイジュさん!お願いしたいことがあるんだけど!」
「どうした!?ものすごい必死の表情してるぞ!?」
ガイジュさんはエルサの顔を見た途端に驚く。
その気持ちわかるよガイジュさん。
どんだけ欲しいんだよ。
「《レッドアルム》まだ残ってる?」
「あ、あぁ。まだ在庫はあるがいったいどうしろと?」
「オウマ、《レッドアルム》からうまく分解をすれば《アルムオイル》も《華水》も入手できるのよ」
「人の質問を綺麗に無視された!」
マジか!それは楽でいいな。
酒からオイルがとれるのが不思議で堪らないが異世界だからと、気にしないでおく。
「それでガイジュさん。《レッドアルム》を10G欲しいんだけどくれる?」
「お前は鬼畜か!?」
Gというのはこの世界の重さの単位でこっちの世界で言うところのとん1tなんだが…………鬼畜の度を越えてるぞ。
ちなみに単位は小さいほうから
1g=1E
1kg=1F
1t=1G
という割合。
金の単位といい覚えにくくて困る。
「冗談よ。1グ…………酒瓶1本頂戴」
「今絶対グルって言いかけたよな。まぁいい。金さえ払うんならやる」
「だそうよ。オウマ」
「一応聞くが相場は?」
「確か1本分の酒だと800Lくらいじゃなかった?」
「だいたいそこあたりだな」
「マジっすか……………」
俺の1日の売上を全て奪うつもりらしい。
でも俺の商品の1つとなる物なので払う。
「これは初期投資。初期投資…………」
「毎度ー」
というわけで無事購入完了。
午後からは露店があるから午前中のうちにパッパッと終わらせなくちゃな。
…………この調子だと明日になりそうだが。
やることはやろうと思い店をあとにする。
『あれ?いったい何をするのかとかいろいろ大事なこと抜かされた気がするが……………』
よし!さっさと帰ろう!
思ったが吉日ってね!




