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17.部外者

サラリーマンの男性(エルサの父親らしいがサラリーマンにしか見えないのでサラリーマンと呼ぶ)が部屋に入ってくると村長の隣に腰掛けた。


へぇ~こうしてみると本当にイケメンだな。

………………………爆発四散すればいい。


こうして見ると俺の周りの男性陣イケメンばかりだと思う。

このサラリーマン(エルサの父親)と天才リア(ジンク)は間違いなくイケメン。キーンも何気にスマートだしこれを言うのは悔しいがシークスもいい顔立ちをしている。ニムルはイケメンというわけではないがどちらかというと女顔で美少年よりの顔を持っている。


…………あれ?もしかして普通の顔俺だけ?


いやいやいやそんなわけはない。

女性陣はどうだ?エルサは性格こそ悪いが顔は美人だ。イーナも性格がイカれているが美少女と言える。

リリィも可愛いけど幼女だから論外で。


…………………あれれ?

もしかして普通の顔って俺だけ?


いやいややめてくれやめてくれ。でもガイジュのおっさんと村長は年老いてるからこれも論外だろうし、村で会った人も顔は悪くなかった。てかブサイクという者が存在しなかった。

あれ?マジで俺だけ普通なの?俺周りからいったいどんな目で見られてんの?あれあれあれあれアレエェ!!!!



「起きなさい」

「ッツツ!」



思わず大声を出しかける。


こ……んのバカ人の腕つねんな!痛かったぞ純粋に!

まあ思わず心の中で奇声をあげそうになったから助かったと言えば助かったのかな…………?



「………………お前折角美人なのにもったいないよな」

「っつ!?」



思わずボヤく。

うん。ホントにもったいない。どうも美人や綺麗という言葉に縁のある人はどこかが致命的にダメらしい。


エルサは俺の言葉を聞いた瞬間顔を耳まで真っ赤にしたかと思うと立ち上がり俺に飛び膝蹴りをきめてきた。



「痛ぁ!おま、何してんの!?」

「うるさい!話しかけないで!」



エルサは再び座ればそっぽを向く。


俺なんか悪いことした………………?

心の中で悪いことを思った覚えはあるけど。


そんな様子を村長は微笑ましげに見つめている。



「いやいや、村長。あなたのお孫さん飛び膝蹴りしましたよ。何か言うことはありませんか?」



明らかに年頃の女の子にあるまじき行為だ。

吉田沙保里じゃあるまいし物理的に最強にならなくてもいいはずだ。



「ふむそうじゃな。エルサよ」

「なに?お祖父様」

「先程の蹴りはまだまだあまいのぉ。もう少し振り上げろとあれほど言ったじゃろう」

「まさかの村長直伝!?」



村長何やってんの!?あんたが格闘技教えこんだの!?



「そうね。今度はうまくやるわ」

「頑張りなさい」

「その会話おかしいと思ってるの俺だけかぁ~~!?人をサンドバッグ扱いにしてねぇ!?」

「サンドバッグってなによ」



その今度が2度と来ませんように!

頼むから!痛いんだぞ!これマジで!



「…………お父様、全く会話が進まないのだが」



サラリーマンが救済の手を差し伸べてきた。


おぉサラリーマンよくやった。

俺の中での評価ワンランクアップ。



「それにエルサ。この部屋の広さと頭の位置を考えたらローキックのほうが効果はあるだろう。もっと考えて行動するんだ」



俺の中での評価が一気に下がった。


サラリーマン、あんたもか!

あんたら何!?プロレス一家かなにか!?

一番ダメージが入りやすい方法を探すなよ!

それと頭を狙ってる時点で仕留める気満々だな!

惜しむらくは本人の意思が無視されてるってことだ。



「さて!というわけで次に継いでもらうのはマウルにしようかと思うのじゃが何か異論はあるかの」

「はいありますよー。よくあの流れでその話に持ってきましたね」

「無いわ」

「マジで!?突っ込みどころありまくりだと思うけど!?」



てかマウルって誰?このサラリーマンのことか?

そういうことにしておこう。



「お父様。今までどこに行ってたの?」

「すまない。少々用事があってここを離れてた」



サラリーマンがそう言うが俺はサラリーマンの表情にちょっとした違和感を感じた。

一瞬だけだったがあれは…………なんだろ?



「さてこのことを村の皆にも言わなければならないな」



どうやらこれで話は終わりらしい。

村長が部屋を出ていく。

部屋には俺とエルサ、マウルと言うサラリーマンが残った。

俺は改めてサラリーマンの顔を確認する。


…………………うん。イケメンだ。爆ぜろ。


サラリーマンが村長を見送ったあと、こちらを見てきた。


あ?俺になんか用か。女で遊んでるような面しやがって。



「君が記憶喪失の子か。話には聞いていたよ。いろいろ大変だろうけど無理はしないようにね」



サラリーマンは微笑みながらそう話しかけてくる。

……………でも、なぜか俺はその表情に少しムカついた。



「大丈夫です。あなたの娘さんにお世話になっているので今のところは特に問題はありません」

「今のところはってどういうこと!?」



エルサが何か喚くが当然のようにスルー。



「そうか。私はマウルだ。困ったことがあったらいつでも話してくれ」



マウルはそう言うと手を差し伸べてきた。

これはつまり………………まさか『お手』をしろと!?

人を侮辱するとはなんたることか!



「……………オウマ、あんたなんで威嚇してんの?」

「俺は犬でもないのにお手をする人間ではないからな」

「いや、犬って何?お手って何?あんたの妄想かなんか?」

「そこらへんは気にするな」



もちろんこれは冗談だ。

マウルがどういう人間なのか試すためにすぎない。

ただ、この世界って犬いないのか………。ネズミやコウモリはいるのに……。


俺がそうやって相手の反応を待っているとサラリーマンは困ったような表情をしていた。



「すまない。勘違いさせたようなら謝るよ。お手をさせる気はないから安心してくれ。一応握手のつもりなんだが」



まぁですよねー。どう考えても握手にしか見えませんよねー。

明らかに俺がおかしいよこれは。

なのに見たかみなさん。マウルのこの対応を。

まさしく大人の対応です。



「すんません。村長就任おめでとうございます。これからもよろしくお願いします。」

「あぁ、ありがとう。まあ村長と言ってもこの村の規則に則らなくてはいけないがね」

「規則?」



俺が手を離して頭に疑問符を浮かべる。

そしてしばらく考えこんだあとエルサを見る。

そして目で訴える。


『さっさと説明しろボケナス』


もちろん実際にそう言っているわけではないのでご安心を。

…………けどなぜかエルサが睨んできたぞ。まさか伝わってしまったのか。



「村の規則っていうより仕来たりみたいなものね。村長の家業を継ぐ場合は1週間村長代理人をしてそのあとようやく本当の村長になれるということ。1週間経つまでは正式な村長はお祖父様のままね」

「え、めんどくさ。なにそれ」

「そういう仕来たりなのよ。というか本来部外者のあなたが口を挟むことではないでしょう?」



うぉっ。部外者って………案外傷つくもんだな。

別にいいだろ少しぐらい。



「まぁ1週間経てば村長になれるということだからもし困ったことがあったら私に相談してくれ。できる範囲で対応させてもらおう」



相変わらず大人な対応をするサラリーマン。


サラリーマンって言い続けると名前を忘れそうだ。

よし、マウリーマンにしよう。

端から見れば大人な男性に対してガキんちょが喚いているという風に見えるかもしれないが気にしないでくれ。



「それじゃこの場はとりあえず戻りましょう。ここにジッとしているわけにもいかないし」

「おう」




――――――




「オウマ、あんたちょっと変じゃない?」

「ん?どこが?」



マウリーマンと別れ、帰路を歩いていく。

村人の姿が見えるが話に夢中らしい。

どうやらすでにマウリーマンの件が広まっているみたいだ。



「どこがって……………呪怨の念を呟きながら歩いていたら別の意味で心配になるわ」

「ははっ。何を言ってるんだ。そんなことがあるわけ………ナイダロ?」

「オウマが既に呪われ始めてる!?」



あそこまでできる男を見せつけられたら俺は腹立っちゃいますよ。

イケメンなんか絶滅しろ!

俺と同類はなんというか………



「あれ?オウマにエルサ。お二人してデートか?」

「こーゆーダメ人間のことを言うんだろうな」

「出会い頭に罵倒するか普通!?」



俺たちに声をかけてきたのはシークスだった。

その後ろにキーンとニムルもいる。


ということはこれからダンジョンにでも行くのか?



「ちょ、ちょっと!デートって人聞きの悪いこと言わないでよ!」

「うん?ちょっとした冗談だろ。真に受けんなよ」

「私がオウマなんかを好きなわけないでしょう!」

「あのさ、オウマくんが号泣して項垂れてるからそこらへんにしておいたほうが……………」

「オウマ、大丈夫?」



ニムルとキーンが慰めてくれる。


うっう………。確かに俺の容姿がいいとは思ってなかったけど…………そう言われるとめっちゃ傷つくわ…………。



「え、あ、ごめん。だ、大丈夫?」

「悪口を言ったり慰めたりと忙しないやつだな。前のお前はもう少し物静かだっただろ。オウマと暮らしてて心境の変化でもあったのか?」

「う、うるさいわね!何か文句でもあるの!?」

「でも確かに変わった。主にオウマと同棲し始めたあたりから」

「そう言われてみるとそうかもしれませんね………。主にオウマくんと過ごし始めたあたりから」



おいおい、君たち。

それではまるでこんな風に凶暴化したのは俺のせいだと言っているように聞こえるぞ。


それにしたって何か忘れてる気がする。なんだっけ?



「ああぁぁあ~~~~~~!!」

「ちょ、ちょっと!いったいどうしたの!?」

「ダンジョンの改造許可もらうの忘れてた!」

「…………なにやってんのお前?」

「相変わらずバカをしている」

「ははは…………」



シークスとキーンとニムルが酷いものを見るような目で俺のことを見るがそんなことしている場合じゃない!



「おい、オウマ。どこに行くんだ?」

「露店だよ!実績をあげて遠回しにアピールしてやる!」

「アホや……………」



シークスの発言にも俺は構わず露店のほうに向かう。


そういえば村長の家で気づいたことがあるけど…………



「なんで犬がこの世界にいないのにあの人『お手』を知ってたんだ?」

一応今の件は【ミラノ編】ということになっております。

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