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10.経営策

このミラノは他の村と比べて知名度は高いらしい。その理由は村の中にダンジョンが存在するから。村の中にダンジョンがあることで安全面が考慮され、なおかつ移動にも困らない。だからこそ、ハンターも利用しやすいのだろう。


…………………それならばいける!



「で、なんであんたはそんなに【ブライム】を大量に作ってるの?」



エルサが俺に対して疑問の声を上げている。


俺は合成を使って【ブライム】を素材のある限り増産中。なぜこんなことをしているのかというと



「村の人たちにも渡して使い心地を聞いてみようかとな」



まず経営する際において物の販売の前に実践してみるのは当然のことと言えよう。もし、何もやらずに売り出してみたとしよう。それを実際に使用したら「思ったよりも使えない」「ちょっと不満」といったお客様の要望を叶えられない可能性が非常に高い。

だからこそ、事前に自分の商品の実用性を知った上でお客様にもそれを伝え納得してもらう。そうすることにより、売り出した側は「事前に説明をした」といった大義名分が成り立つのである。



「ようするにあんたはこれを売り出す気なの?」

「ん、まあ半分は当たり」

「半分?」

「細かいところは後で」



そして、ある程度の数を揃えたところで一息つく。


ふぅ、イメージするのって案外疲れるな。でもこれも金のため。そう金のためなのだ。そのためならば俺は詐欺商人にもなろう。


……………………いや、やめとこう。それは普通に犯罪だ。



「そうだ。エルサもこれ何個か持っといて」

「まあ発光松明よりも使えそうだから別にいいけど、いいの?貰っちゃって」

「いいよいいよ。どうせ元はタダも同然だし」



【ブライム】を売り出そうと思ったのは2つ。

まず一つ目が素材が比較的簡単に手に入るということ。作る手間を省けばかなり楽だと言える。なんたって片や森で歩いてれば目につくところで手に入るし、片やダンジョンを歩けば山のように入手可能。元はタダと言っても過言ではない。手間はそれなりにあるけどね。


そして二つ目が前例があるということ。その前例が【発光松明】という物。【発光松明】と【ブライム】を現実に置き換えれば【学園底辺ブサイク男】と【学園天才モテモテ美少女】のようなもの!


あれ?わかりにくかった?なら【豆電球】と【LED】みたいなもんかな。そんなもんだろ。

ようするに、すでにある物よりも優れた商品ならばより手に取ってもらいやすい。もし、初めて見る物だったら疑ってなかなか手に取ってもらいにくいからな。


よくあるよなー。オリジナリティを出そうとして恐ろしくおぞましい結果になってしまうの。定番定番。


だからといって、相手がそれを信用してもらえるかどうかはわからないけどな。そこらへんは接客次第だ。


一通り説明を説明を終えるとエルサが心底驚いたような顔をする。



「オ、オウマが…………!そこまで考えていたなんて………!」

「それはいったいどういうことなのか24時間ほど聞かせてもらってもいいかね?」

「バカのくせに金に関わると急にが冴え渡るある意味正直者」

「ものの1分で終わらせるな!てかやっぱバカにしてたな!もうそこは改善のしようがないのか!」



しかもある意味ってなに!?その言葉のせいで全てが台無しだ!

いやなくてもたいして変わらんけど!


実を言うと、元の世界では俺の家はちょっとした店を経営していた。そのおかげで店の手伝いをしているうちに成績は良くもないのに(悪いとは言ってないからな?本当だぞ)接待やら経営やらの知識が貯まってしまっていた。


本当、俺の通っているの商業高校じゃないのにな…………。



「それで、これを皆に使ってもらって評判がよければ明日売ると?」

「3日後な」

「え、なんで?」

「昼と夜じゃどう違うのか、普段の生活でどういうふうに使えるのか、この光は時間制で消えるのか、とか一晩で決まらないことがたくさんあるんだよ。俺としてもパッパと金は稼ぎたいからあまり日を置くつもりはないけど」



こればっかりは使っていくうちに見出だすしかない問題だ。



「あんたってホントにお金のことにな………」

「はい、言わなくていいですよー!もう読めてるから!エルサはとことん俺のことをバカにしたいことは理解してるから!」



いちいち言わせてたらキリがない。



「それにな…………」

「なによ?」

「バカだからと言って誰が億万長者になれないって決めた?(ドヤッ)」

「ミミズって体を切り離されても生きてるから不思議よね」

「すいません。もうドヤ顔で言いません。だから子どもが見たら泣き叫ぶ体にしないでください」



即効で土下座しました。


うん。これは俺が悪い。ちょっと調子に乗りました。

このやりとり数日間で何回やっただろうな。お陰で土下座もやり馴れてしまった。


さぁてと、とりあえず早速行動に移しますかね。



「それじゃこれらよろしく頼むわ」

「いや、あんたも配りなさいよ」

「俺、実は人見知りで…………」

「人見知りがなに商売始めようとしてんのよ。いいからさっさと準備しなさい。無駄に数だけあるんだから」



チッ、こいつ気づいてやがったか。

しょうがない面倒だがやるとしよう。金のためだしな。




――――――




「へぇ、それは便利ね」

「でしょう?発光松明より明るく照らせるので需要ありますよ。どうです?安くしておきますよ?」

「さっきあげるって言ってたでしょ。ありがたく貰っておくわ」

「へい!まいどありぃ~」



次々と【ブライム】を配っていく。


正直これら全部でどれくらい稼げたのだろうかと考えると…………………んぐぅ!我慢、我慢だぞ俺…………!

こんなものいくらでも作れるんだから、我慢、我慢。


そしてまた別の家のドアの前に立つ。



「すいませーん。誰かいます?」

『ちょっと待っててー』



ドアの奥から声が聞こえる。

そうして待っていると音が聞こえてくる。まるで全力で走っている音のような。


ダッダッダ


ガチャ!


ボゴッ!



「こんにちわぁ~…………て、あれ?どうしたの?」



思わず顔を覆いながら踞る。

ドアが思いっきり顔面に決まった。


こんのやろぉ……!ドアを全力で開けやがって………!

おかげで顔面強打の重症だこんちくしょおぉ!


顔を上げて相手の顔を確認するとそこには子どもがいた。


あれ?返事した声は大人の声だったような………?


そう思っていると今度は若い女性が現れた。



「こらリリィ!勝手に行ったらダメじゃない。………大丈夫ですか?あ、もしかして君記憶喪失の?」



どうやら目の前の子どもの母親らしい。

ちなみに後半は俺に向けられた言葉だった。さっきの人にも似たこと言われたからもう一人ずつ言うの面倒くさいな。


さすがにあまり情けない姿は見せられないと平静を装う。



「は、はい。大丈夫ですよ。今日は商品を提供しに来ました」

「あら押し売り?」

「違いますよ。今後売り出す予定なので皆さんに使ってもらって感想を、といった感じです」

「記憶喪失なのに頑張ってるのね」

「いつまでも怠けるわけにはいかないんで」

「え、なになに?リリィに何かくれるの?」



早速渡そうとしたらリリィと呼ばれた子どもがが会話に割って入ってきた。


……………むぅ。そういうわけじゃないんだけど、まぁいっか。


少ししゃがんで目線を同じにする。



「うん、そうだよ。これをあげるよ」

「わぁ、光ってるー。きれい」

「気に入ってもらえてよかったよ」



【ブライム】を渡すと嬉しそうに顔を綻ばせる。


こういう反応をしてくれると、今までの苦労が報われたって思えるんだよな。うん、満足した。

こういうのは生産者の特権だな。


そして母親が興味深そうに【ブライム】を見る。



「へぇ、すごいわね。これはどういうふうに使えばいいの?」

「見たまんまですよ。少なくとも発光松明よりは使い勝手はいいと思いますので何かご不便が生じましたら言ってください。できる範囲で改善しますので」

「わかったわ。ありがとう、ありがたく使わせてもらうわ。ほら、リリィもお礼しなさい」

「ありがとうお兄ちゃん!」



リリィが笑顔でお礼をしてくる。


うん、こういうのは嬉しい。

というか笑顔が眩しい。あ、やべ。ロリコンじゃないのに鼻血が出そう。ロリコンじゃないのに。

でもこの笑顔を見て真顔でいられるやつは人間じゃないと思う。



「お礼にリリィのお嫁さんにしてあげる!」



リリィが笑顔で告げてくる。


うん、こういうのは困る。

一気に鼻血が引いてしまった。


その言葉に母親が焦り出す。



「ちょっとリリィ!」

「リリィ?そういうことはな、簡単に言っちゃダメなんだぞ。よ~く考えて長い時間をかけて見つけるものなんだ」



こういうときは俺が冷静でいないと。

さっきまで興奮してた男が何を言う、という言葉が聞こえた気がするけどきっと空耳だな。


すると、リリィが笑顔で言ってくる



「それじゃなんで一目惚れって言葉があるの?」



なんて素晴らしい切り返しでしょうか。

しかも満面の笑みで言われたらもう立ち上がれない。


とぉ~~!危ねぇ。危うく認めてしまうところだった。残念だったな。俺はロリコンじゃないからそれぐらいでやられは



「お兄ちゃんはカッコいいよ!大好き!」



グハァ!


オウマ、KO。


もう無理。俺にはどうしようもできましぇん。

子どもの笑顔って無限大だよ。ドラゴンなんて瞬殺だよ。



「リリィ、お兄ちゃんが困ってるから」

「そうだ!お兄ちゃん名前は?」

「…………………………………………オ、オウマ」

「オウマお兄ちゃんまた今度ね!」



そう言って家の中に去っていくリリィ。


す、末恐ろしい子や………。



「ゴメンね。うちの子が迷惑かけて」

「いえ、大丈夫です。……………なんとか」

「でも、君さえよかったらうちの子、貰ってもいいんだよ?」

「ブフォ!?」

「ふふっ、冗談よ」



そうして母親がドアを閉める。


……………………あぁ、そういえばまだ配りおえてなかったな。早くしないと日が暮れそうだ。


もう、何もやる気が起きないが次の家に足を向ける。


最近の子どもってあんな感じなのか?異世界じゃあれが普通なのか?それとも俺がおかしいのか?でもなんかさっきの会話違和感あったな。幻聴かな?それとも幻影かな?


現実逃避しながら歩く。

そして、不意に違和感の正体に気づく。



「あの子お嫁さんって言った!?」



一目惚れ云々以前の問題だった。

ちなみに作者はロリコンではありません。

そこんとこよろしく。

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