1.異世界
「おーい、凰真。」
ん………………誰だ……?
「おい、凰真。起きろ」
うるせぇなぁ。気持ちいいんだからほっといてくれ。
「起きろ!バカ!」
「ぐはぁ!?」
頭を抑えつけられ机に叩きつけられたような痛みが!?
「何すんだ!浩介!」
俺は顔を起こして目の前にいる人物に対して叫ぶ。俺を(文字通り)叩き起こした男は寺井浩介。中学校からの付き合いなんだが、この男、友達に対して遠慮ねぇな。
すると、浩介は、呆れたような溜め息をこぼして、
「いや、もう放課後だぞ?」
「…………………え?」
そう言われ、教室中を見回す。そこには、談笑しながら帰る人の姿が。
あら~、俺寝過ごしていたのか。
顔に精一杯の笑みを浮かべる。
「そ、そうか、ならさっさと帰ろうか。ちょうど起きようと思っていたんだよ」
「頑張って誤魔化そうとするな」
ちっ、バレたか。そこは気を使って気づかないフリしろよ。
「ま、さっさと行こうぜ」
「…………………ま、別にいいか」
――――――
「凰真~。お前来週テストあるの忘れてないよな?」
帰り道。浩介が聞いてくる。
そうだな、来週テストだな。高校生になって初めてのテストだ。失敗は許されないだろう。だからあえて言わせてもらおう。
「フッ。俺が忘れていないと思うか?」
「………………そうだな。疑って悪かった」
お?なかなか分かっているじゃないか。中学からの付き合いなんだからそれぐらい知ってるよな。
「お前がテストを覚えているわけないよな」
「喧嘩売っているのかね?キミは」
俺が期待していた言葉と違う!
「それじゃあ聞くがテスト初日は何曜日だ?」
はっ。疑っているな?来週がテスト、そして今日は火曜日。
フッ……、簡単だな。
「火よ…」
「火曜日って言ったらコロス」
…………………………えー。俺何も言うことできねぇじゃん。
「木曜日だ。勉強くらいしとけよ?ただでさえお前は中学のときも赤点だらけだったんだから」
「なんのことでしょうか」
俺は目を明後日の方向に向けながら言う。
まぁ、高校生最初のテストだから少しは頑張ってみるかな?
「しゃーない、少しは努力するよ」
「おー、そうしろ。そしてどこに行こうとする」
元来た道を引き返そうとする俺の首根っこを掴んで引き留める浩介。
そんなの決まってるだろ。
「学校に置き勉しているからだろ」
「………………………さっさと行ってこい」
そうして俺は学校へと引き返していく。そしてちょっぴり後悔する。
学校戻るのめんどくせぇ。
――――――
「それじゃ、よろしく頼んだぞー」
「……………イエッサー」
俺の目の前で元気よく言う名前をまだ覚えていない教師。
なぜ、こんなことになっているかというと…………。
「俺はまだやることがあるからな。図書室はまだ開いているはずだからよろしく」
簡潔に言えば、
教室に教科書を取りに行く。
教科書を入手して帰ろうとする。
廊下で先生とすれ違う。
荷物を押し付けられ雑用をさせられる。
教師って勝手だよなー。俺たちのこと奴隷としか思ってないんだろうな。
「さて、さっさと終わらせて帰るとするか」
一人で本棚に本を並べていく。先生に頼まれたのは本の返却。
授業で使ったらしいが、正直言ってそれくらい自分でやってくれと思う。
「えーと、この本はここで………ん?」
また1冊と本を並べたとき、古ぼけた本があるのに気づく。周りの本は新品なものばかりなのに1冊だけ古風な本だった。背表紙には何も書かれていない。訝しげにその本を手にとってみる。
「お、凰真。こんなとこにいたのか。何してんの?」
「ん?あれ?浩介こそ、なんで?」
ドアが開いたかと思うと声をかけてきた。その人物は帰りに別れたはずの浩介。
「いや、なかなか来ないから来てみたんだけど。どうやら雑用を押し付けられたみたいだな」
「なるほど。すまん、もうちょい時間かかるかも」
どうやら俺のことを待っていてくれたらしい。
いい友達を持って俺は幸せだよ。俺だったら間違いなく先に帰ってるね。器の大きさってやつだろうか。
「何それ?」
「あぁ、これか?知らん。なんかあった」
浩介が俺が手に持っている本について訪ねてくる。
そう言われても俺も知りたいよ。
「タイトルは…………《合成の書》?めっちゃ胡散臭ぇ」
「なんかのゲームの攻略本とかか?」
「こんな古ぼけた攻略本があるかよ。えーと中身は………なんか材料とかやり方とか意味分からんことばっかり書いてあるな」
開いてみるとそこには、こういった材料を使って合成させるとか、挿し絵付きで書かれている。だが、その材料や合成物は見たことないものばかりだった。というか聞いたこともない。
なんだ?この《ブライム》とか《カフューム》とかなんだとか。中二病の参考書かこれ?合成という時点で中二病感溢れまくっているな。
「ほんとに使い道のわからん本だな。今度先生に聞いてみればいいだろ。浩介はどう思う?」
「どう思うと言われても何も言えねぇよ。こんな漫画やアニメにありそうな感じの本なんてほったらかすのが一番じゃないのか?」
「まぁ、持っているだけで中二病扱いされそうだしな…………」
そう思い、本棚に戻そうとしたとき、
目の前が暗闇に覆われた。
――――――
右には岩でできているゴツゴツとした壁。
左にも岩でできたゴツゴツとした壁。
後ろには見えないほど遠くまで続いた道。
そして、正面には大きな扉。
「どこだここぉぉお!?」
更新はゆっくりとさせていただくつもりです。
それでもよければ読んでいただけるとありがたいです。