赤髪の少年。
その後、村へと戻ってきたアグニス達一向は、子供達を親の元へと送り、盗賊団の残党を探し出し、近辺の街から報せを受けてやってきた兵士に盗賊団達の身柄を渡した。
ルーファス達は村の人々から大いに感謝され、翌日には感謝の意を込めて村を上げてのお祭り騒ぎとなった。
大きな焚き火を中心にして、村の人々が喜びを表現するかの如く踊っている隅で、この催しの主役である本人は、冷えたエールを片手に、スレイブとアルエル、そして何故かアグニスの母親と話し込んでいるようだった。
聞き耳を立てようと近くに寄ったアグニスだったが、周りの騒音でアグニスの耳に届くことはなかった。
四人の様子を見る限り、そこまで大したことでは無いだろうと判断し、アグニスは自分の友達の輪に戻っていく。
「おい、アグニス! 心配したんだぞ!」
アグニスが近づくとベッグが開口一番にそういった。
「ぶ、無事で本当に良かったよ」
その横にいるロイも心配してくれていたようだ。
「ごめんな。心配してくれてありがとう。――あれ? ケニーとバッカスは?」
アグニスは二人足りない事に気付き、ロイに聞いた。
ロイは溜め息を吐いて、
「あっちでリーシアちゃんと話しているよ」
指差された方向に視線を移してみると、ケニーが鼻の下を伸ばしながら話しかけているのが見えた。
その後ろでは、バッカスが料理をガツガツと頬張っている姿があった。
(俺の心配より、女と飯かよ……)
その光景を見て、友情とは何なのかをアグニスは考えたが、ケニーとバッカスはいつもああだというのを思い出し、思考を放棄した。
「アグニス」
「どうした?ベッグ」
突然掛けられた呼び声に振り向くと、そこには至って真面目な表情のベッグが立っていた。
「その、何かお前雰囲気変わったか? 喋り方とか」
「あ、それ僕も思ってたんだ」
その問いに俺は一瞬息を呑む。
ベッグ達の知る『僕』はもういない。
しかし、果たしてそれを何て説明したらいいのか。
これを言ってしまえば、魔人であることもバレてしまう恐れもある。
如何にしてこの場を凌ぐべきか。
「俺は、自分の弱さを思い知った。ルーファス達が来てくれなかったら死んでたかもしれない」
二人は黙って俺の話を聞いてくれるみたいだ。
「弱い自分は嫌なんだ。いつまでも人に助けられているようじゃ、騎士になんてなれやしない。だからこの事を切欠に変わろうと思った。だから自分の事を『俺』って呼ぶようにした」
弱い自分は嫌だ。――本当のことだ。
『僕』が強くなりたいと願い、『俺』が産まれた。
生きたいと心の底から願ったからこそ『俺』が産まれた。
『僕』の記憶は『俺』の中に今も在り続ける。
だから俺は『僕』の夢だった《騎士》になるんだ。
「僕はもう今までのアグニスは辞めた。けど、俺の夢が騎士であることも変わらない。ベッグ達が俺の友達であることも変わらないのと同じように」
独り言のように呟くアグニス。
それを聞いていた二人は、各々思うことがあるようだが、近付いてきたその男に気が付いて話そうとした口を閉じた。
「――なら、もっと強くならなきゃな」
「……ルーファス」
いつの間にやらスレイブ達との会話は終わっていたらしい。
「アグニス、俺に剣術をお前に教えさせてくれ」
「え?」
ルーファスの言葉に耳を疑った。
「俺は、お前に助けられた。お前の迅速な判断のお陰で、だ」
「そんなこと……」
「いや、俺はもう決めた。お前が何て言おうが、俺はお前に剣術を教える。お前の母さんの許可も貰ったしな」
どうやら、そういうことらしい。
「――付いてきてくれるか?」
「――勿論!」
剣士は少年に剣を教えた。
冒険者の短い滞在期間の間に剣術の基礎を学んだ少年は、剣士が村を離れた後は、ひたすらに自己流で修行する。
友達との仲を深めつつ、少年は少しずつ、大人への階段を上っていく。
そして時は流れ、少年は青年となり、青年は騎士になった。
――騎士は騎士を辞め、冒険者となる。
以上、あらすじでした。
いよいよ、本編へと繋がります。
作風が少し変わる為、別作品として投稿しますのでご了承ください。




