救いの光。
交差した二振りの剣。
魔王はルーファスの一撃を受け、断末魔を上げながら、黒い霧となって四散した。
私は、魔王が霧となって消えるのを見届けてから、未だ振り抜いたままの姿勢でいる彼の元へと駆け寄った。
グラっとルーファスの身体が揺れる。
私は嫌な予感がして、倒れるその身体を己の身体で受け止めた。
「そ、そんな……! 嘘、嘘よ!!ルーファス!!」
抱きかかえたルーファスの腹は切られていた。
それもかなり深い裂傷だ。
夥しい量の血液がアルエルの手を赤く染める。
この出血量は放っておけば確実に命を落とす。
「す、スレイブ、治療薬を! 早く! 急いで!」
スレイブに叫ぶように指示し、自分は治療魔法を施す。
しかし、焼け石に水のように、施した部分から、傷はまた広がる。
――治療魔法が利かない。
「持ってきたぞ、アルエル!」
それを奪うように受け取って、浴びせるようにルーファスの傷口に掛ける。
呻き声を上げるルーファス。
しかし、傷は一向に治らない。
(何故? どうして塞がらないの!?)
「それは、『呪い』のせいだ」
様子を見ていたアグニスが言った。
『呪い』という言葉を聴いたアルエルは、何故傷が塞がらないか理解した。
「大方、あの魔王の黒剣の効果によるものだろうな。あの禍々しさだ。呪いの一つや二つ、不思議ではない」
ルーファスを見下ろして、アグニスが淡々と語った。
「……あなた、本当にアグニス?」
アルエルはアグニスのその様子に違和感を感じた。
ルーファスに剣を教えてくれと頼んでいたアグニスと、余りにも雰囲気が違う。
「そんなこと、今は気にしている場合じゃないんじゃないか?」
「アグニス、何でそんなに冷静でいられるの? 貴方を救おうとしてくれた人の命が危ういのよ!?」
ルーファスはアグニスを心配していた。
アグニスはそんなルーファスの命などどうでもいいと?
「さて、何でだろうな。……スレイブ、頼みがある」
「……何だ?」
アグニスはスレイブに語りかけた。
「あそこの捕まっている連中の中に、『エルフ』がいる。此処まで言えば分かるよな? 急いで連れてきてくれ!」
そう言ってアグニスは指を指した。
捕まっている子供達と、確かにエルフの姿がそこにあった。
「――! わかった!」
「さて、アルエル。此処に来るまでに何か見なかったか?」
「こんな時に、暢気にクイズなんて出さないで頂戴!」
「重要な事だ。思い出せ」
アグニスのその迫力に押されて思考に耽る。
此処まで来る途中に見たものといえば……。
「――!」
「思い出したようだな。そう『光魅の草』だ」
アグニスが言った 『エルフ』と『光魅の草』
それらの言葉が繋がるものといえば――
「――霊薬!」
彼の命を繋ぐ一筋の光が差した。
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