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元騎士様の奔放な冒険譚。~少年期編~  作者: 小匙
狙われた子供達。
32/38

救いの光。

 交差した二振りの剣。

 魔王サテリナルはルーファスの一撃を受け、断末魔を上げながら、黒い霧となって四散した。


 私は、魔王サテリナルが霧となって消えるのを見届けてから、未だ振り抜いたままの姿勢でいるルーファスの元へと駆け寄った。

 グラっとルーファスの身体が揺れる。

 私は嫌な予感がして、倒れるその身体を己の身体で受け止めた。


「そ、そんな……! 嘘、嘘よ!!ルーファス!!」


 抱きかかえたルーファスの腹は切られていた。

 それもかなり深い裂傷だ。

 夥しい量の血液がアルエルの手を赤く染める。

 この出血量は放っておけば確実に命を落とす。


「す、スレイブ、治療薬を! 早く! 急いで!」


 スレイブに叫ぶように指示し、自分は治療魔法を施す。

 しかし、焼け石に水のように、施した部分から、傷はまた広がる。

 ――治療魔法が利かない。


「持ってきたぞ、アルエル!」


 それを奪うように受け取って、浴びせるようにルーファスの傷口に掛ける。

 呻き声を上げるルーファス。

 しかし、傷は一向に治らない。


 (何故? どうして塞がらないの!?)


「それは、『呪い』のせいだ」


 様子を見ていたアグニスが言った。

 『呪い』という言葉を聴いたアルエルは、何故傷が塞がらないか理解した。


「大方、あの魔王の黒剣の効果によるものだろうな。あの禍々しさだ。呪いの一つや二つ、不思議ではない」


 ルーファスを見下ろして、アグニスが淡々と語った。


「……あなた、本当にアグニス?」


 アルエルはアグニスのその様子に違和感を感じた。

 ルーファスに剣を教えてくれと頼んでいたアグニスと、余りにも雰囲気が違う。


「そんなこと、今は気にしている場合じゃないんじゃないか?」


「アグニス、何でそんなに冷静でいられるの? 貴方を救おうとしてくれた人の命が危ういのよ!?」


 ルーファスはアグニスを心配していた。

 アグニスはそんなルーファスの命などどうでもいいと?


「さて、何でだろうな。……スレイブ、頼みがある」


「……何だ?」


 アグニスはスレイブに語りかけた。


「あそこの捕まっている連中の中に、『エルフ』がいる。此処まで言えば分かるよな? 急いで連れてきてくれ!」


 そう言ってアグニスは指を指した。

 捕まっている子供達と、確かにエルフの姿がそこにあった。


「――! わかった!」


「さて、アルエル。此処に来るまでに何か見なかったか?」


「こんな時に、暢気にクイズなんて出さないで頂戴!」


「重要な事だ。思い出せ」


 アグニスのその迫力に押されて思考に耽る。

 此処まで来る途中に見たものといえば……。


「――!」


「思い出したようだな。そう『光魅の草』だ」


 アグニスが言った 『エルフ』と『光魅の草』

 それらの言葉ワードが繋がるものといえば――






「――霊薬エリクサー!」 




 ルーファスの命を繋ぐ一筋の光が差した。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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