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元騎士様の奔放な冒険譚。~少年期編~  作者: 小匙
狙われた子供達。
30/38

赤髪の少年。

「ほう。立ち直ったか? ルーファス」


 成り行きを悠然と見守っていた魔王が口を開く。

 しかし、魔王は臨戦態勢のルーファス達に向け続けた。


「さて、では始めよう――と言いたい所なのだが……。――残念ながら今回はその機会ではない」


「ふざけるな! 逃げるのか魔王!」


「逃げる? この我が逃げると?」


 巻い上がる魔力の渦。

 魔王を取り巻いた紫電の勢いが増していく。


「思い上がるな、人間。貴様らが幾ら束になり妾に牙を向けど、結果は見えている。貴様の心の迷いが消えたとて、それは変わらんこと。――せっかく妾が『逃がしてやる』と申しておるのだ。素直にそれに従った方が良いのではないか? ルーファス」


「黙れ! 俺はもう二度と逃げない!」


「……そうか。本当に残念だよ、剣士ルーファス」


 突如、魔王の表情に色が消えた。



「……お前は此処で――死ぬ」


 その声は酷く冷たい物であった。

 魔王サテリナルが今、力を解き放とうとしていた。

 


 刹那の瞬間、放たれた魔力。

 膨大な魔力の塊がルーファスを襲う。

 それをルーファスが抵抗せず、受ける訳が無い。

 魔弾に向かってルーファスは駆け出す。


 兄から授かったこの剣は、聖魔石ミスリル製であった。

 この剣ならば、サテリナルにさえ!


 兄がこの聖魔石ミスリルの剣を俺に託してくれた意味が、今なら分かる。

 この剣で、奴を――魔王サテリナルを打ち砕く!

 俺は救うんだ! 子供達を、俺の仲間を!

 






 そして――あの子を。

 







 最初は、あぁ、似ている子供がいるな、程度にしか思っていなかった。

 あの子も、生きてさえいればこのぐらいの歳なのか、と。


 その子には家族が居た。

 親子の仲が良い、幸せそうな家族だ。


 ある時、その男の子が、剣を教えてくれと言ってきた。

 しかし、俺は断った。

 その子を見ていると、どうしても思い出してしまうからだ。

 それから毎日のように何度も尋ねてきたが俺は断り続けた。


 それなのに、子供達が攫われたと聞いた俺は、何故か少年アグニスの事が一番最初に頭に浮かび上がったのだ。

 俺の胸はざわめき始め、少年アグニスの安否が心配で堪らなくなった。

 そして、気が付けば俺は走り出していた。

 ケニー親子の話を聞いている内に、それが何故なのか漸く気付いた。

 



 (やっと、見つけたんだよ兄貴……)





「――ハァァッ!」




 ルーファスの蒼剣が魔力弾を両断し、ルーファスはその勢いを利用して、着地と同時にアグニスがいる場所まで移動した。


 ルーファスの瞳には涙が溢れていた。

 アグニスはそれが何故なのか分からなかった。

 しかし、ルーファスがアグニスに向けて言い放った言葉、それは――



「――待たせたな……。本当に待たせちまった」


「!?」


「……アグニス、立てるか?」


 ルーファスが差し伸べた手を取り、アグニスは立ち上がった。


「よく見ておけよ、アグニス。――叔父おれの剣を」


 ルーファスのその言葉の本当の意味をアグニスは理解していない。

 しかし、剣士にはそれでも良いと思えた。

 救えなかったと思っていたアグニスが生きていたという事実だけで――。



 

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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