剣士の守りたいモノ。
ルーファスは閉じていた瞳を開いた。
暖かいモノが頬を伝い、初めてそれに気付いた。
ルーファスは涙していた。
「……泣いているの? ルーファス」
アルエルはルーファスの変化を逸早く察した。
アルエルにとって、魔王サテリナルが言う事が真実であろうと、アルエルにとってルーファスは、掛け替えのない仲間であり、大切な人であった。
ルーファスの過去に何が有ったかは分からない。
アルエルは自分の知るルーファスをただ信じるしかないと、魔王の話を聞く前から心に決めていた。
ただ、アルエルが傷付いたのは、ルーファスが嘘を吐いていた事だ。
本当の事を明かせば、アルエル達が離れてしまうと怖れ、黙っていたとしたのなら本当に許してやらない。
「――余り、私達を見くびらないで頂戴、ルーファス」
「――!」
スレイブもアルエルの言葉に頷いていた。
「あなたの過去がどうであれ、それこそ私達には関係無いわ。 私達の知るのは『騎士ルーファス』じゃない。――『剣士ルーファス』である、貴方よ」
アルエルはそう言ってルーファスの頬を叩いた。
痛みで痺れる頬は、次第に熱を帯び始めた。
「『剣士ルーファス』は、私の事を見て鼻を伸ばしているのに、手は絶対だそうとしない『へたれ』で紳士を気取ってる『馬鹿』で、決めた事は必ず突き通す『頑固者』 ……いつも、私とスレイブが喧嘩を始めると止めてくれる。依頼の最中なのに、困ってる人がいたら放っておけない『お人好し』 それでいて、子供が関わる事件には必ず首を突っ込んで……。 ――私が知る限り、――『ルーファス』は『正しい選択』を間違えたことは無かったわ」
「……アルエル」
「――だから、ルーファスが過去にした選択もきっと『正しい』筈だわ。『私』は『今』の貴方を信じる。……貴方が本当は臆病者なのもとっくに気付いていたし、ルーファスが、心に何か抱えているのも感じてたわ。気付いて当然よ、仲間なのだから」
アルエルは言い切った。
仲間が言ってくれた言葉が、ルーファスの胸に響く。
魔王サテリナルの言葉で惑わされていたルーファスの心は、アルエルの『思い』によって迷いは消えた。
兄に貰った蒼剣を、ユーリがくれた篭手で握る。
そして仲間に貰った『勇気』
これで、魔王に立ち向かえる。
剣を貰った時、兄は言った。
これは自分の身を守る武器であると同時に、仲間を守る物でもあると。
『今』のルーファスの守りたいもの。
『過去』のルーファスが守れなかったもの。
小さき命を救えず、己が兄をも守れずにいたルーファスが己の『罪』に背を向けたあの時に誓ったこと。
生き延びたこの命を、何の為に使うか。
己の力を磨き、自らの大切なモノを守れるだけの力を――
あの時に自分に生きろと言ってくれた兄の分まで、生き抜く事を。
(でも、俺は、守れるだろうか)
「大丈夫、貴方は一人じゃない」
「――俺達が付いている」
そう、剣士は一人じゃない。
仲間達がいるのだから。
(守れる、じゃねえ。――守るんだ、今度こそ!)
――蒼い剣が凛と瞬くように輝いた気がした。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
仲間って良いですよね。




