大森林に住まう者達
アグニス達が住む村から歩いて一刻半程の距離に位置している大森林。
生い茂る木々の高さは村などに生っているそれとは比べるのが馬鹿らしくなって来る程に規格外と言えた。
豊富な緑を有したその森には、それを食料として生きる草食獣や、木に実った果物や実を求めてやってくる鳥獣などの姿も多いと、森周辺の村に住む人々に有名であった。
しかし、森には猟師や、森に生える薬草等の採取といった、目的がある者以外は滅多に近付こうとしない。
森には危険が沢山潜んでいる。
草食獣や、鳥獣を糧とする魔獣が生息しているからだ。
遭遇したのがゴブリンや、コボルト程度で済めば運が良い。
森の奥にはそんなゴブリン等、屁であると感じさせてしまう程の化物が存在する。
上位種族である『鬼』やゴブリンが進化した『ジェネラルゴブリン』又、それらを束ねる『ゴブリン・ロード』英雄譚でも物語の中に登場するそれらの魔物による被害が、実際に過去に起きた事であるのは確かな事だった。
しかし、そんな化物達よりも、出会ってはいけないとされる種族がいる。
長寿で有名な耳長族――『エルフ』である。
過去数年の間に出会ったという話は無いが、村に伝わる伝承の中には、エルフ達が酷く人間嫌いであると記されている。
エルフは、人間の身体能力と然程変わらないが、内に秘めた魔力は『魔族』とも並ぶとされ、近付く事はおろか、見ることすら叶わないと云われていた。
その大森林の奥地にて、盗賊達の集団は腰を据えていた。
周りには囚われた村の子供達、アグニスの姿もそこにあった。
そして、その中には何故か耳の長い者――エルフの子達も混じっている。
加え、エルフに関しては子供だけでなく、年頃の女も囚われていた。
如何な手段を用いて盗賊達がエルフを囚わえたのかはアグニスにはわからなかったが、盗賊の連中の中に、相当の手練れが混じっている事には気付いていた。
幸い、アグニスは他の子供達と同様、手脚は縛られているだけで、口の自由は効く状況にあった。
隙を突いて魔法を発動しようと企むが、アグニス達を見張っているそいつがそれを許さなかった。
「エルフのガキと女。こいつらだけでも相当な儲けになりそうだ。加えて、村のガキ共も手に入った。捕まってるあいつらには悪いが、早いとこトンズラしてえのが正直な所だな」
アグニスが相当な手練れだと見抜いた男がそう呟く。
男は頭のキレも悪くないようだった。
差し詰め、この盗賊連中の頭ではないだろうか。
「村の情報屋によると、どうやら村には冒険者が来てるみてえじゃねえか。そいつらがどの程度の腕かは知らねえが、万が一っつーのも十分あり得るっつー話だ」
男はチラッとアグニスを見る。
値踏みするように舐めるような視線が下から上へと移動し、男はニヤリと品の無い笑みを浮かべる。
「生意気そうなガキだが、うん、そうだな。悪くない……」
「か、頭ァ……」
アグニスにはその言葉の意味が解らなかったが、男の視線に全身を駆け巡る鳥肌から、身の危険を感じた。
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