少年、迷いの念を抱く。
ロイと別れたアグニスは家に戻り、夕食までにまだ時間があるのに気付き、父に貰った剣を持って外に出た。
訓練所で暖めた身体は既に若干冷めていた。
軽く体を解し、剣を構える。
呼吸を整え、無心になると、ひたすら剣を振った。
辺りにアグニスの振るう剣が鳴らす風を切る音だ響く。
二年前のアグートとの戦闘でアグニスは、闘気を纏わせた一撃を放った。
アグニスの修行の全てが集約した一振り。
アグートに言われて気付いたそれを、アグニスは二年間の鍛錬で遂に自分の物にした。
アグニスにとって、闘気を纏わせたその技は特別なものであった。
護身術として学んだ剣の他に、初めての剣技とも言える技は、アグニスが己の成長を改めて感じた瞬間でもあったからだ。
しかし、アグニスは己の技術が行き詰って来ているのを感じていた。
最善を尽くし続けてきた己の修行の仕方に限界が見え始めているのを時折感じるのだ。
「どう、すれば、強く、なれる、んだ!」
いつしかアグニスの振るう剣には迷いの念が混じってしまっていた。
「今日は、もうやめとこう」
己の剣に自信はある。
大人との試合にも勝てるようになってきている。
でも、決定的に『足りていない』のだ。
「誰か、僕に剣術を教えてくれよ!」
――
それは突然の事であった。
剣士であるルーファスが遂に心を決めて、アグニスの元に行こうとした朝の出来事だ。
いざ、向かおうと宿屋の扉を開くと、村人が何やら騒いでいるの光景が目に映った。
そして、事態は急変する。
――村の子供達が攫われたという報せだった。
「おい! アグニス達を知らないか?」
ルーファスは自分の仲間である、弓士兼、狩人のスレイブに聞いた。
比較的動き易いとされる、レザーアーマーと魔物の皮で作られた手袋を身につけた細身のその男――スレイブは首を横に振るった。
「俺も今しがたケニーの奴と狩りから戻ってきた所だ。アグニスの姿は見てないぜ」
狩人のスレイブは、ケニー親子と狩りに出かけていたようだ。
一緒に帰って来たケニーは無事なようだ。
「ルーファス! 村の子供達が盗賊に攫われたって!」
アルエルが村人の輪の中から姿を現す。
その様子からアルエルもアグニスの行方は知らないようであった。
「とにかく、急いで探しに行こう。その盗賊とやらは何か残していないのか?」
「あちらの要求はどうやら、この間ケニー親子に捕まった仲間の開放だそうよ」
「アグニス達も攫われたのか?」
「分からない、けど、あたしはアグニス達がそう簡単にやられるとは思えないけどね」
ルーファスもアルエルのその意見に賛成だが、相手は悪党が集まって成り立つ連中だ。
こういう場合、相手側の要求を呑み、捕らえた盗賊を解放しても、攫われた子供達が無事開放されるとは限らない。
「向こうに決してばれないように行動するしかないな。スレイブ、隠密はお前の十八番だ。この辺りの地形は分かるか?」
「あぁ、この三日間狩りしてたんだ。大体の地形は把握している」
「よし、お前が先導してくれ、俺達はお前の後を追う」
ルーファス達は速やかに行動に移った。
伊達に冒険者稼業を長く続けていない。
こういう時の判断は早いに限るのだ。
「――行くぞ!」
ルーファス達の救出作戦が始まった。
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