剣士と魔法使い。
章の題名を変更しました。
アグニスとロイはアルエルの指南を終え、村に設けられている井戸にて汗で汚れたその身体を洗っていた。
身体を拭く手拭いがみるみる黒く染まっていく。
訓練所の一日は魔法の練習だけで無く、剣の鍛錬も行う。
ロイの手の平にも剣ダコが出来ており、魔法のみならず、剣の腕もそれなりに実力がついて来ていた。
「いやぁ、今日の修行も疲れたね。でも僕、なんだか自分が強くなっているのが感じられて嬉しいんだ。少し前までの僕は、ベッグ達の後ろにくっ付いているだけだったから」
桶に溜まった水に手拭いを浸け汚れを落としながらロイが言った。
その表情は過去の自分を思い出しているようで、アグニスに語り掛けているようで、自分に言い聞かせているようにも聞こえた。
「アグートさんから剣を貰った時、本当に嬉しかったんだ」
二年前のあの日、アグートに一矢報いたアグニスとベッグ達の四人は再び村を離れたアグートが帰って来た時、剣を渡された。
剣は大人の兵士が扱う程の大きさでは無く、子供達でも扱い易い規模の物であったが、その刃自体は切れ味も良く、それなりの物と言える一振りであった。
「あの剣を見る度に不思議な気持ちが沸き上がって来るんだ」
子供達が剣を渡された時、全員が思った。
アグートに認められたのだ、と。
アグニスもその際、渡された剣を長々と眺めては、高揚感に震えた。
「剣は人を切る道具だ。それを使うという事は人を傷付けるっていう事だよね」
ロイは迷っているかのように遠くを見る。
「ロイ、僕も君と同じだよ。でも、僕が剣を振ったその結果、他人を傷付ける事になってしまっても僕は後悔しないと思う。自分が傷付く事も怖いけどそれ以上に――僕は、友達が傷付くのを見たくないんだ」
アグニスは自分の汗の乾いた服を着ると、ついでに近くにあったロイの服を渡した。
「そうだよね。やっぱりアグニスは強いね。これじゃあどっちが歳上か分かんないよ」
アグニスに渡されたそれを受け取りながら話すロイ。
その表情にはまだ不安が残っていたように見えたが、渡された服を頭から被ると、その後に見せた顔にはもう不安の欠片も映っていなかった。
――
そんな二人を見つめる陰が二つ。
「あの子達はあの子達なりの考えがあるのよ」
「あー。まぁ、……そうみたいだな」
剣士の男は魔法使いの言葉を適当に流そうとする。
「守りたい物があるから、貴方にも頭を下げに行ったんじゃないの?赤髪のあの子を見てると、昔のアンタをあたしは思い出すよ」
二人が出会ったのはお互いがまだ駆け出し冒険者だった頃だ。
パーティの編成を請け負う斡旋所に設けられた酒場で二人は出会った。
初めは、魔法使いであるアルエルは前衛を、剣士のルーファスは後衛である魔法使いを探しに訪れただけで、それは只々、一時の仕事をこなす為の形だけの関係で終わる筈だった。
アルエルはその見た目のせいで共になったパーティの男共に色目を使われる事が多かった。
その為、一つのパーティに留まる事なく、一つの仕事を終えると、そのパーティを抜け、別のを探すというのを繰り返していた。
唯えさえ数の少ない魔法使いを求めるパーティは多く、新たなパーティが見つかるのはそれ程時間は必要としなかった。
そんな彼女が今の今までルーファスと共にしているのには理由があった。
「アンタは強いよ。剣の腕は駆け出しの頃から他の連中よりも頭一つ飛び抜けていたし、それは私も分かってた。でも、あたしが認めてるのはそれじゃ無いよ」
アルエルはルーファスに近付くと、その肩に腕を回した。
大抵の男であれば、勘違いをしてしまうだろう行為であるが、ルーファスに気にした様子は無い。
「貴方には、他の奴らが分かってないモノを持ってる。……剣の腕とかそういうのじゃなく――守りたい物の大切さ、をね」
アルエルは言い終わるとルーファスから離れ、数々の男共を魅了してきた笑顔をルーファスに向けた。
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