少年、次に進む。
あの日の修行から二年の月日が流れた。
アグニスは十一歳になっていた。
ベッグとその仲間達はアグニスよりも二つ歳上なので十三歳だ。
空き地はアグニス達よりも小さい子供達の遊び場となった。
夏になるとベッグ達と一緒に整地しに行くが、足を運ぶ頻度はめっきり減ってしまっていた。
アグニス達の遊び場は空き地から訓練所に変わっていた。
『遊び』といっても実質は大人達の輪に入れてもらい、扱かれているのだが。
あの日の戦闘を境にアグニスとベッグ達の仲は深まった。
ベッグはガキ大将という立場であったが、威張る事は少なく、アグニス達以外の子供達が悪さをした時や、喧嘩を始めた際などに仲介役を買って出るという立場に変化していた。
それと、村人達からの視線も変わった。
訓練所で大人と一緒に修行をしている内に、村内で噂が広がり、アグニス達五人の実力は大人顔負けだという風に思われていた。
村に侵入してきた野盗や魔物を撃退したのも原因の一つかもしれない。
少し前まで悪ガキ四人衆と言われていたベッグ達は今や、自警団の手伝いもしており、村の皆から頼りにされる人材となっているのだった。
そんなある日、アグニスとベッグが訓練所で組み手をしていると、遅れてやってきたケニーから面白そうな情報をアグニスは聞いた。
それは、冒険者がやって来たというものだった。
複数人のパーティらしく、中には物凄く可愛い女の子(ケニー主観)も居たという。
既に村で唯一存在するカトレア家が経営する宿屋にて部屋を取っているらしく、ケニーはその娘から話を聞いて見に行ったらしかった。
ベッグは可愛い女の子と聞いて鼻を伸ばしていたが、アグニスは別の事を考えていた。
「ケニー、その中に剣士は居た? どういうパーティ形成だったんだい?」
アグニスはケニーに質問する。
するとケニーは、申し訳なさそうな顔をして首を振った。
「悪ぃな、流石に宿の部屋の中までは確認できなかった」
「そうか、わかったよ。ありがとう」
「どうしたんだ? アグ」
そんなアグニスの様子が気になるベッグ。
ケニーはよく解らないという表情だ。
「冒険者なら『剣術』を知っているだろう? お父さんの『護身術』も確かに大切だけど、僕の夢は騎士だ。少しでも近付けるかもしれないなら、僕はそれに縋りたい」
この愚直なまでに夢に向かう姿勢、アグニスの体が二年という月日が経ち成長した今もアグニスの心は変わっていないようだった。
「でもよ、冒険者といっても実力が有るとは限らないぜ? この前捕らえた盗賊の一味の中にも元冒険者っつー奴もいたらしいけど全然大したことなかったしな」
ケニーのいう盗賊というのは、この近辺で悪さを働く盗賊団の一味で、狩りに出掛けていたケニー親子を襲って来たので返り討ちにされた者達の事だ。
あれからケニーも鍛錬を重ね、その実力を磨いていた。
「僕、宿屋に行ってくる」
アグニスはそう言うや否や、付けていた防具を外す。
いつもは後先をしっかりと考えてから行動に移すアグニスだが、騎士になるという夢に繋がる事になると、途端に無鉄砲になるのだった。
「馬鹿、お前、冒険者の人達だって長旅で疲れてるだろう。お前の親父さんが商売から帰って来た日だってそうだろうが。少しは考えろ」
「でも、明日には村を発つかもしれないだろう」
「あ、それは大丈夫だ。カトレアの所の嬢ちゃんによると、最低でも一週間は滞在するらしいぞ。纏めて宿代をもらったらしいからな」
「よかったな、アグニス」
ベッグに肩を叩かれ、複雑な表情をするアグニス。
一週間というのは余りにも短い。
その期間では、剣術の基礎さえ覚えられるかも分からない……。




