父、息子達の牙に戦慄する。
(闘気を纏わせた、一撃だと!?)
アグートの剣は持ち手の部分を残して宙を舞った。
木刀とはいえアグートは剣を薄い魔力で包んでいた。
先の戦いで火弾を弾いた際に木刀に数ミリの皹が入ってしまった為だ。
それをピンポイントで当てたアグニスの集中力と、それに気付くに至った見極めの力にアグートは驚きを隠せない。
武具を魔力で包むと、威力が上昇すると共に、強度が飛躍的に上昇する。
皹程度の問題ならば、魔力で包めば折れる心配は無くなるだろう。
上昇率は術者の能力、つまりは込めた魔力の質に比例する。
如何に優れた魔法使いといえど、戦闘の最中に魔力を練るのは難しい。
故に、魔力の質を高めるという技術は、魔法使いにとって基本にして、奥義とも言えるだろう。
仲間を信頼し、魔力の質を高め『ファイアーボール』を放ったロイ。
中堅クラスの魔法使いで辿り着くとされるその領域に、既に片手を伸ばしているのだ。
魔力総量はそれに追いついていないが、体の成長と共に、それは補われていくだろう。
(まったく、末恐ろしい子供達だよ)
魔法使いが魔力を操るのと同じように、剣士やその他の近接を得意とした職業には『闘気』という物がある。
鍛錬を重ねた熟練の戦士が放つ一撃には、闘気が宿ると云われ、アグート自身も過去にそれを実際に使っていた者を見たのは数え切れる程しかいなかった。
兎にも角にも、本来、子供が使える力では無い事が確かだ。
極限の集中を必要とし、剣の道を歩き続けた者のその中でも一握りの者だけが手に出来得る力なのだから。
アグートはそれを一瞬でも使ったアグニスの剣の才に触れ、戦慄した。
ベッグとバッカスの剣技も中々だった。
俊足を活かしたその連撃と、相手の動きを見極める目。
まさか子供のベッグにアグートの返し技が受け止められるとは思わなかった。
バッカスも俺の隙を逃さずに攻め込み、見事に俺の追撃を止めた。
自分に与えられた役割をこなそうとする姿勢は、簡単に聞こえるが容易に出来る事ではないのだ。
アグートは飛ばされた木刀を拾ってから子供達を集める。
「五人共、よく頑張った。ケニー達も中々いい動きをしていたな。特にロイ、見事な魔法だったな、凄いぞ! 初めてにしちゃ上出来だ。今日の稽古の反省を活かしながら、今後は連携を取る練習もしていきなさい」
三人は褒められて嬉しいのか口角が上がっている。
「そして、ベッグ。お前も素晴らしい動きをしていたぞ。俺も何度かヒヤヒヤさせられたし、今日の剣技を見るに、ちゃんと修行は行っていたみたいだな。ただお前の剣はまだまだ軽い。体重移動がなっていないようだから、それを意識するように」
ベッグは真剣な顔でそれを聞いていた。
アグニスに近い実力を備えていると、自分では自負していたのだが、改めてアグニスの剣を見るとそれは間違っていたのを感じさせられる。
ベッグが追いついたかと思えば、アグニスは更に磨きをかけ、ベッグはすぐに離される。
アグニスは努力を欠かさない。
ベッグはそれを知ってから、己が如何にすればアグニスを追い越せるかを考えながら修行してきた。
ガキ大将のプライドをも捨て、ベッグはアグニスがする修行をケニーに覗きに行かせては報告させ、真似をした。
ケニー達も、ベッグがするそれを真似した。
追い越す前に追いつかなければ駄目だ。
今回の戦闘でアグニスの変化に気付いたベッグは、真似するだけではいつまでも距離は縮まらない事を悟った。
「さて、それじゃあ、そろそろ解散とする。俺は腹が減って仕方ねぇんだ」
笑うアグート。
それに釣られて、五人の子供達も笑った。
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