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魔科学世界の矛盾螺旋  作者: √Xion
一章~魔科学世界~
5/5

魔術学園の食堂にて

閲覧ありがとうござます。

ここではこの物語のステージとなる「闘技会」の大まかな説明をしました。

 ――昼休み

 リューイと亮介は昼食を済ますべく、学食へと向かう。

 校舎は3つに分かれており、第一~第三校舎まである。第一校舎は一年生、第二校舎は二年生といった具合に学年が上がる度に校舎も変わる。

 そのため各校舎に学食が配置されているのだ。

 リューイ達は二年生のため、第二校舎の学食へ向かうこととなる。

「リューイはもうメニュー決まってるか?」

「ん~、中華にしようかな。ラーメン食べたい気分だし」

「ふむ。じゃあ俺はラーメンより太いうどんにする」

「なんか変に対抗心燃やしてない……?」

「誰がそんな子供のようなことするか」

「じゃあ僕もうどんにする」

「ふむ。じゃあきしめんにしよう」

「やっぱり対抗してるよね!?」

 そんな馬鹿みたいな会話をしているとなぜか大広間へ出た。



 白基調で清潔感があり、四人ほど座れる丸いテーブルが数え切れないほどあるが、しかし無理ない程度に並べられている。リューイ達が入った入口から左側の壁一面は全面ガラス張りになっており、学園の外の景色が見られるようになっている。

 そう、この大広間こそが学食なのである。既に何人かの生徒がテーブルに座り、雑談しながら学食にありついている。

 リューイ達も真ん中の方の空いているテーブルへと着いた。

 それにしても、この学食には一つおかしな点がある。

 それは学食を作る厨房がないということだ。厨房がなければ一体誰が作るのだろうか。

 しかしそんなことをよそ目にリューイ達はIVCウィンドウを開く。

 数あるソフトの中から一つをタッチすると、学食メニューらしき文字が浮かび上がった。その中の[中華]の文字をタッチ、[ラーメン]、[唐揚げセット]の順番で進んでいくと、購入完了を促す画面が現れる。

 リューイは[はい」を押し、購入完了画面となる。

 そう、これこそがこの学園の学食システムなのだ。リボルガルドでもこういったシステムのある学食はこの学園にしかなく、世界でも注目を浴びている。



「席一緒していいかな」

 ふとリューイの背後から掛けられた声。それは彼と親しい人物であった。

「こんにちは、リューイくんっ」

 甘い妖艶な声の先には、それに見合ったスタイルの女性が立っていた。

 髪はフランス人形のような透き通った金髪、小さい輪郭にすっと通った鼻梁。身長は女性にしては高く、ウエストも細い。スカートから覗かせるスラリと長い脚。そして何より目が行くのは大きな胸。制服の上からもはち切れんばかりである。おそらくほとんどの女性の理想体型なのではないだろうか。

 しかしリューイはそんな美女を目の前に顔を引きつらせていた。

「こらこら、なんでここにいるの? みたいな顔しない。お姉さんに失礼だぞっ」

 彼女はそう言うとリューイの鼻を軽くこつく。

「いや、だってエリスは三年生だからここにいるのおかしいし……」

 リューイがエリスと呼ぶこの金髪美女の名は、エリス・ソフィア=ベル。この学園の三年生である。

「こっちの校舎の先生にお呼ばれしちゃてねー。丁度お昼だし、来ちゃった」

「てへっ、みたいな顔されると何も言えないんだけど……」

「まぁまぁ、細かいこと気にしても仕方ない!」

 エリスはリューイの隣の椅子を引くとそこに座った。

「細かいって……今自分がどうなってるかわかってる?」

「……?」

 リューイの問いに彼女は当然クエスチョンマークを浮かべる。

「ははっ、ですよねー……」

 現在エリスがどうなっているか。

 今学食ホール内にいる生徒ほとんどの注目を浴びているのではないだろうか。

 しかしエリスは全く気づいた様子はない。恐らく“慣れ”というやつだろう。

 なぜ彼女がここまでの注目を集めるのか。

 たしかに美人という理由もあるだろう。しかし彼女はこの学園内ではトップクラスの魔術使いだ。勉強も魔術も優秀。それに魔術に関することの研究者ときた。ここまでの人物が有名にならないわけがなかった。

「はぁー……」

 リューイはいろいろ溜まったものをため息と共に吐くと、視線を目の前の親友に移す。

 実は先程から亮介が不気味なほど静かなのである。リューイは今朝のようなリリアに侵したようなことをエリスに対して実行しないか心配であったが、そのようなことも前ぶりも一切ない。

 さすがに気になるのか静かな彼に問う。

「なんで顔の前で手を組んで精神統一してるのかな?」

 友の言葉に亮介はピクリと反応する。

「……話すな、リューイ・ビクトリア・レイ」

「そっか」

「ふっ、話すなと言っても聞くか、リューイ・ビクトリア・レイ」

 もちろんリューイは「話すな」と言われて追求などはしていない。

 それでも彼は話を続けるということは聞いて欲しいのだろう。

 その彼の返答が噛み合ってないさまに、リューイは何とも言えない笑顔を浮かべるしかなかった。

「俺の中では、先輩はクールな男が好きであろうと見た。よって現在クールな男演じ中だ」

「へー、なんだかよくわからないけどがんばって」

 リューイはほとんど棒読み状態で適当な言葉を返した。

 亮介の言う「先輩」はエリスのことだ。聞こえる範囲にいるというのに言ってしまってもいいのだろうか、と思うリューイとエリスであった。



 しばらくすると、三人が囲むテーブルの真ん中が円を描いて沈んだかと思えば、中からパスタが現れた。

「お、きたきた」

 エリスは出てきたパスタを自分の手元に持っていく。

 これもこの学園の学食システムで、IVCで注文すると座った席のナンバーを読み取り、そこに自動で運んでくれるのだ。

 そのあとに続いてリューイのラーメンと唐揚げセット、亮介のきしめんと揚げ物のセットが同じようにして届けられた。

 どうやらリューイがうどんにすると言ったのを真面目に受け取り、うどんよりも麺が太いきしめんにしたらしい。

「じゃあ手を合わせて。いただきます」

 エリスがそう言うと、リューイは渋々手を合わせて。亮介はあくまでもクールに「いただきます」と言った。



「ところでリューイくん」

 パスタをフォークでくるくる巻きながら問う。

「闘技会どうするの?」

「んー、どうしようかな。正直出たくないんだけど……」

 一口ずずずとラーメンをすする。

 それを聞いたエリスはパスタを巻いたフォークをリューイにビシッと向けた。

「こらこら、それこそ君に決定権ないでしょ。私たちみたいな一般で入ってきた生徒は出なくていいけど、特待生で入った君は出ないとまずいんじゃない?」

 そのまま巻いたパスタを口へと運ぶ。

「やっぱり出ないとダメだよねー……」

「まぁ、出たら成績上がるんだし損はないよ。それより私が聞いたのはパートナーをどうするかって事なんだけど」

「まだ決まってないかなー」

「なら私がパートナーになろうか? って言いたいところだけど、最初の闘技会は同学年じゃないと組めないんだよね」

 先ほどから「闘技会」や「特待生」などの単語が飛び交っているが、要はこういうことだ。



 この国――リボルガルドでは年に三回、五校の魔術学校で行われるのが闘技会。

 闘技会というのは、要は魔術同士で戦い優劣を決める大会のようなものだ

 一回目は同学年ペアで行い、各学校から各学年の優勝者の中で、更に優勝者を決める。

 二回目は三人~五人一組で行い、学年は合同。これ以外は一回目のペア闘技会と変わらない。

 三回目も三人~五人一組で行うが、これは全学校全学年の中でいきなり優勝者を決める。なので三回目が一番盛り上がる。

 すべての闘技会で優勝賞品があるが、特に三回目は豪華だという。それもそう。『願いを一つだけ叶えてくれる』ことが優勝賞品だからだ。

 なので一回目、二回目では出場しない、あるいは手加減して手の内を漏らさず、三回目で全力を出す者が多い。

 次に出場条件であるが、一年生はまだ経験未熟ということで出場権はない。

 よって高校二年生と三年生のみで行われる。もちろん二年生、三年生全員に出場権はある。それに参加するしないも個人の自由だが、たった一回出場するだけで成績は飛び切り上がるので、ほとんどの生徒が参加する。勝てば勝つほど成績は上がるのでなおさらだ。

 もちろん成績に興味はなく、三回目に備えて出場しない者もいる。それはそれで個人の自由だから関係ない。

 が、リューイは別だ。

 彼は『特待生』であり、魔術の可能性を見出されてスカウトされ、あらゆるものの免除、逆に期待を背負わされてる者なのだ。

 それだけではない。

 本来なら魔術では出来ない奇跡を可能にする者――“万能オムニシェント”としての才能もある。

 そんな彼がただの一度も闘技会に出ないということがあってもいいのだろうか。

 それは否だ。

 スカウトした側は彼がどれだけ万能なのか知りたいはず。よってほとんど彼は強制的に出場しなければならないだろう。



「早めにパートナー決めなよ? 一回目の闘技会は一二月だからあと二ヶ月も残されてないよ? “万能オムニシェント”がパートナー見つけられずに出場できませんでしたーとかだったら学園側の顔に泥塗っちゃうし」

「うぅ……その通りだよ」

 そこまで言われては、さすがに凹むリューイであった。

 しかしすぐに思いついたような顔になる。

「そういえば亮介、パートナーどうなってるの?」

「すまんがリューイよ、俺はお前とは組めん」

 亮介は悩む仕草もなく、すぐに親友の質問を読んだ先の回答を出した。

「もう決まってるのかぁ……」

「いや、決まってはいないぞ」

 パートナーが決まっていないのに、リューイの申請を断った理由は深まるばかりだ。

 もちろんリューイと話を聞いているエリスは頭にクエスチョンマークを浮かべる。

「ほら、よく言うだろう。直感で決めたパートナーは運命の相手だって。俺はそれを狙っている」

((言わないと思うけど……))

 と、二人は心の中で思うのであった。

 しかし亮介の相変わらずな女たらしな思考はある意味期待を裏切らなかった。

その後、日常的な会話に戻りエリスは二棟校舎を後にした。

閲覧ありがとうございました。

次の話では簡単な戦闘シーンを入れていこうと思っているので、よければ次も読んでくれるとありがたいです。

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