学園の過ごし方
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ここではリボルガルドという国がどういったところかを描いています。
しばらくして頭の冷えたリリアに開放してもらったリューイたちは、ようやく自分たちの教室がある二棟校舎にたどり着いた。
外見が壮大な学園とは、やはり内面も壮大であった。
ピカピカに磨かれ、塵一つ落ちていない廊下。所々の壁に設置されたコンピュータ。
まるで学校ではなくどこかの研究所のようだ。
そして三階にある二年八組の教室。そこがリューイの教室である。
席は窓際の一番後ろ。その前の席にいるのは、
「俺の目ちゃんと付いてるか!?」
朝から騒がしくなる元凶を作った亮介であった。
二年生に進学してからは、この席順になっている。
「心配しなくてもちゃんと付いてるよ」
実は先ほど矢が消化されたところで、リリアの怨念のようにしぶとく目に刺さったままだった。
もちろん精身変換装置の機能が働いている限り、ケガをすることはない。
「そうか、それを聞いて安心した。……それはそうと話は変わるが、一つ許せないことがある」
「許せないこと?」
亮介の目に矢を放ったリリアのことだろうか。
それしか思い当たる節はない。
「何とぼけた顔をしている!! お前だぞ!! リューイ!!」
「えぇ!? 僕が何をしたっていうの!?」
リューイもリリアと同じことをしている。
しかしそれはやり返しであり、悪意でもなんでもない。……とリューイは思っている。
そもそもやり返しこそ悪意があるわけだが。
「お前は見たんだろ……?」
「な、何を……」
もちろんリューイには何のことなのかはわかっている。
「俺たちの希望をだよ!!」
「俺ってなんで僕まで含まれてるの!?」
「ふっ、リューイ……照れるな。男はな……みんなそうなんだ……」
「僕は違――」
「違うと言い切れるのか!? お前は……お前はリリア嬢のパンツを見て何も思わなかったのか!? それは男としてどうかと思うぞ!!」
『ねーねー、聞こえた? あのリリアさんの下着を見たって……』
『でもー、リューイくんとリリアさんって幼なじみなんでしょー? そういうことがありえない仲じゃないよねー」
『許せねぇな。俺たちのリリアさんのパンツを見るなんて……!!』
『ああ……俺たちの希望をよくも奪ってくれたな!!』
亮介が大声で叫んでいるため、周りに変な意味で捕らわれていた。
リューイの額からは変な汗がにじみ出ている。
「ちょ、ちょっと亮介……声がでかいって」
「うるさい!! 俺のラッキースケベを奪いやが――」
「……」
「ごめんなさい調子乗りすぎました声が大きすぎた俺が馬鹿でしたもう二度としません。だからその術式展開を収めてくれませんか」
「そっかぁー」
リューイはにっこりしながら、展開していた術式を収めた。
恐らく違う意味での口封じのために亮介を空間に放り込もうとしたのだろう。
実に恐ろしい……。
やがてチャイムがなり、女性が教室に入ってきた。
「はーい、席に着いてくださーい」
女性がそう言えば、立ち歩いていた生徒たちは次々に着席していく。
彼女の名は遠山 紗夜。二年八組の担任教師である。
セミショートの髪に、おそらくファッションとしてメガネを掛けているのだろうが、反対に地味さが目立っている。しかしその地味さが柔らかい笑みをより一層引き立たせているせいか、一部の生徒からは人気があったりする。
そんな彼女は生徒から「さっちゃん」や「さっちー」などと呼ばれる。
「起立、礼」
『おはようございます』
「着席」
このクラスの室長が合図をすると、全員立ち上がり挨拶して座る。ごく一般的な風景だろう。
紗夜は出席簿を開き、教卓から目の前を見渡す。
「今日も欠席者はゼロですね。特に連絡もないのでこれで終わります」
それに続き室長の合図で礼を済ます。瞬間、教室は一気に話し声でざわめき出した。
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