堀辰雄と立原道造 軽井沢の遠い日の霧の村のかなたへ
この二人の作家は私が愛してやまない作家です。
堀辰雄といえば
軽井沢、そしてサナトリウム
「風立ちぬ」が代表作でしょうが
私はなんといっても、
「美しい村」ですね。
これは戦前の軽井沢の記録としても出色です。
野薔薇咲く林間の小道、
そしてそこからひょいっとあらわれる西洋人の少年。
これがメルヘン?でなくてなんでしょう?
堀辰雄に、薄汚い下町小説は似合いません。
現実離れした、これでいいのです。
立原道造と言えば
「萱草に寄す」という詩集ですね。
これは風信子叢書、第一篇になります。
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夢はいつも帰っていった。
山のふもとのさびしい村へ
水引草に風が立ち
草ひばりのうたいやまない
しづまりかえった午さがりの林道を
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抒情詩とは
こういうものを言うのでしょうね。
この純粋な抒情性は
けだし日本の詩にあっては稀有です。
このふたりに
土俗性やら
現実性を
要求しても意味はありませんね。
ファンタジー映画を見て、現実離れしてるから駄目だというようなものです。
現実離れしてるからこそファンタジーなのですからね。
この二人には
ひたすらな
抒情性を求めればそれでいいのです。
そしてその抒情の
世界で揺蕩えばそれでよいのです。
そしてその四季派の文学は
軽井沢という日本の中でも特異な異国性のエアポケットでしか
育まれなかった抒情なのかもしれません。