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ファンタジーは意外と近くにある  作者: くさぶえ
五章 「末裔の年末は忙しい」
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十四話

 魔力球。


 体内から放出した魔力を球状に留め、操作する。それ自体は出来ないことはない。

 問題は、その応用。魔法へと変わる瞬間の魔力を、その状態を維持したまま操作する技術。


 これが非常に困難。凝縮された魔力は外へ逃げようとする性質があり、体内もしくは肉体の一部に近い『救世の武器』にならまだしも、体外に放出された接触していない魔力、それも意思によって行動を起こそうとしている魔力を押さえ込むのは大変だ。


 俺がチビッ子達に見せた、ゆるキャラを作り出してそれを操作する魔法とは訳が違う。


 確かにあれも魔力球の応用に近い。魔力の塊を放出して、体外で操作する。簡単な図形である球体ではなく、細部まで形を表現し、尚且つ彩色も行う分だけ難易度が高く、生きているかのように動かせば更に難易度は上がる。だが、当然先程言った技術ほどではない。


 後者は操作する事自体を目的とする魔法だ。魔力に俺の意思を常に感知させ、その通りに動くように指示すればいい。実際に行うのは難しいが、原理はシンプル。形と色を維持させるように指示しながら、併合して動くように指示するのがポイント。察知出来ないほどに薄い魔力を供給するのが、より生きているように見せるコツだろうか。


 前者は違う。まず魔法を作り上げる。それを発動間際で抑え、待機状態とする。その上で魔法を制御するための魔法を、覆う形で発動する。制御とは不安定な状態にある待機魔法を押さえ、安定化。その状態での移動操作。そして何より、発動の切欠を与える。



 そんなものを、複数個自在に操っていた過去の父さんには頭が上がらない。



 同時に二つの魔法を扱うのは、自慢じゃないが俺には容易だ。魔王戦で使用できる程度まで磨かれていないし、必要もないため使用する機会はなかったが、ここで後一週間は鍛えれば、完璧に操作できる。


 問題は、片方が攻撃魔法だということ。


 俺は攻撃魔法が苦手だ。使えないわけではなく、手加減が出来ない。

 戦いなんて大嫌いだし、俺は短気だから早く終わらせようとする意思が魔力に作用してしまい、つい本気の一撃を放ってしまうのだ。 


 この技術を使用する場合も同じ。魔力球の核のような攻撃魔法が、制御用の魔法では抑えが効かないほどに強力なものになるのだ。つまりは暴走。勝手に意図しない場所で発動してしまう。それでは、練習すら出来ない。だからこの機会は、非常にありがたい。周囲の被害なんて気にせずに、魔法の練習を出来る。


 普通の攻撃魔法の訓練はしない。残念ながら、やったとしても制御が出来る気がしない。 


 諦める訳ではないのだけれど、俺の苦手っぷりは筋金入りだ。それを補う術を考えれば、多少は困難でややこしく魔力の消費も激しい、この技術を練習をする方が建設的だ。制御用の魔法を併用するこの技術。その制御魔法を本来ならば不必要なまでに強化して操るようにすれば、攻撃魔法を扱える可能性が生まれる。


「ふおぉぉぉぉおおおおおおぉぉおおお!」


 しかし当然、簡単にはいかない。


 全力の攻撃魔法を抑えるのは、どうすればいいか。単純に、全力以上の力で抑えればいい。

 出来るわけがないけれど。


 ドゴーン。


 爆風で吹き飛ぶ。よく考えれば、何故練習で爆発魔法を選択したのだろう。癖というやつか。


「本当に、苦手なのね」


 傷だらけの火傷だらけになった俺の身体は、ドラゴンが吐息を一つ吹きかけると直に元通りになる。


「いやぁ、情けない」


 本当に情けない。自分の意思すら、制御できないなんて。


「何が情けないの? 出来ないことは仕方がない。だから出来るように、貴方は練習をしているのでは?」

「――――それも、そうですね」


 元気が出た。


 何事も、まずは一歩。時間は沢山あるのだから、焦る必要もないではないか。


「ゆっくりと、頑張るとします」

「……そう」


 爆発音を響かせること何百回。近所に住んでいた別のドラゴンが苦情に来るまで、それが迷惑行為であることに気付かなかった。


 大丈夫だったけど、怒ったドラゴン超こえぇー。

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