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ファンタジーは意外と近くにある  作者: くさぶえ
三章 「小さな少年の、小さな疑問」
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四話

『ダイエットの危険性』


 ポスターにはデカデカとそう書かれている。通りがかった人々は、これを見て思わず目を向けてしまうだろう。


「灯路。向こうにはもう張り終わったぞ」

「分かった。こっちもこれで終了だ」


 俺は掲示板に画鋲でポスターを張った。


 このポスター、何を隠そう俺と救太の共作である。紙代の提供は保健委員会。世に蔓延るダイエットの危険性を、この学校の女子生徒に知ってもらいたいと心の丈をぶつけたら快く提供して頂いた。普通の生徒ならば渋るやも知れないが、俺は毎日の自主校内清掃で教師陣営の信頼を勝ち取っているのだ。抜かりはない。


「ふう。これで女子生徒の健康は守られたな」

「ああ、間違いない。これでストレスの出るダイエットなどしないはずだ」


 放課後の校舎内。


 救太と俺は魔王が現れる原因を未然に防ぐため、またこの学校の女子生徒の健康を守るために、惜しみない労働を注いでいた。制作は大変だった。体中が疲労している。それでもそれ以上に満足感が勝っていた。


 俺達二人はお互いの顔を見る。そして深く頷き合った。現在俺達の心は、非常に通じ合っている。


 親友。いい響きだ。


 これからもずっと、コイツのことは大切にしなければいけないな。


「よし友よ。これから校内清掃にでも繰り出そうじゃないか」

「それは無理」


 う、裏切ったな!


 別にいいけど。


「つーかさぁ。私最近太っちゃったみたいで〜」


 さて解散しようか。そう思った所、廊下からこちらに歩いてくる足音。そして聞こえてくる会話。


「えーヤバいじゃん」

「そうそう。だからダイエット始めようかな〜って」



「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!」



「ヒィッ!」


 俺達二人は女子生徒達に対面する。何故か彼女達は恐怖に顔を歪めているが、知ったことか。

 その言葉は今の俺達にとっては禁句なのである。


「何だコラぁ! お前今太ってるとかヌカしやがったか、あぁん?」

「寧ろ痩せてんじゃねぇかコラぁ! モデルみたいじゃねぇか、あぁん?」

 

「えぇ!? ご、ごめんなさい!」

 

「褒めてんだよ! ふざけんなぁ!」

「よく見なくても超絶美少女じゃねぇか! ふざけんなぁ!」

「足とかスラッとして綺麗じゃねぇか!」

「顔も小顔で可愛いじゃねぇか!」


「あ、ありがとう!?」


「どう致しましてだゴラぁ!」

「寧ろちょっとぐらい、ふくよかの方がもっと可愛くなるぞゴラぁ!」

「だからダイエットなんて止めろ!」

「詳しくはあちらのポスターを参照!」


「え、え?」


「是非読んでみて下さい!」

「よろしくお願いします!」


 退散。


「え? ちょ、えぇー」


 静かになった校内には、女子生徒のその声は非常によく響いた。


 後日、アンケートを取った所、必要のないダイエットをする生徒は減ったようです。


 勿論それはポスターを制作したお陰だと思います。


 だから、何故俺達は女子生徒達からたまに冷たい目で見られるのか。

 その理由が、さっぱり分かりません。

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