最終話 トゥインクル
最終話になりました。
大体、自分が考えていたぐらいで終われましたね。
後書は別に書きますので、ご覧になってください。
「よいしょ!」
うん、うまく出来た。
これなら、きっと分かってもらえるよ。
だって、僕は彼女に心を許せることが出来た。
だから、きっと伝える。
‘本当の僕のキモチ,
もし、仮にそれが駄目でもそこに後悔はない。だって、自分に嘘はつけないから。
僕は翌朝、ゆっくりと学校に向かった。
急いでもしょうがないし、何より僕には…緊張感がある。
しかしそんな思いも簡単ではなかった。
学校では、更にいじめがエスカレートしてきた。
僕が最近無視していたからだ。
「おい、遼よう〜、最近元気じゃねえかよ。いいことあったのか?」
「な、なんでもないよ。なんか用なのかよ〜。」
「あの女…。良子とできたのか?」
いかにも、意地悪く笑いそういうクラスメートに、僕は少し動揺した。
「なっ、何言ってるんだよ!そんなはずないだろ!」
僕は怒鳴ってしまった。「はっはーん、なるほどなるほど。そういやあいつ昨日も学校休んでたよな?お前ら二人でなにかやってるんじゃないのか〜?」
この言葉の僕はキレた。
「ふざけるな!良子さんを悪く言うな!」
バキィ!鈍い音が響いた。
僕は一瞬意識がとんだ。
「俺にキレるなんていい度胸してんじゃん。それなりの覚悟はあるんだろうな?」
ふらふらする…。でも誰かが上から僕を見下ろして何か言っている。
「殴るなら…殴ればいいだろ!今日は逃げないぞ!」
僕の心には良子さんの言葉が鳴っていた。
「な、なんだよ…。殴れって言われて殴れねえよ。俺が悪者みたいじゃねえか…!」
相手の顔は何故か、あせっていた。
「かっつ…。」
「はぁ…!?」
「明日からは部活行くからな!先輩だって恐くない…!」
僕には話すことしか出来なかった。それでもしっかりと言葉は発していた。
「好きにすればいいだろ…!」
はき捨てるように聞こえた。
僕はその場に立っていた。
僕は変わったんだ。もう逃げない…。だってまだ、未来がある。
これから、良子さんみたいな人に会うかもしれない。
部活で何回も優勝するかもしれない。
僕は僕の未来をつかむ――。
そして、僕は良子さんの家の前にいた。
ピンポーン…。
「はぁーい。」
「こんにちは。遼です。」
僕の声は不思議と震えていなかった。
「あ、毎日悪いわねぇ…。2階にいるわ。」
さて…、僕は玄関の扉を開け、階段に足をかけた。
もう、迷いも距離もない。
「こんにちは、元気?」
「あ、遼くん!わざわざ来てくれてありがとう!」
にこりと笑う。本当に可愛いなぁ…。
「ハンバーグ焼いてきたよ!食べてみて!」
「うんっ!嬉しい!」
すると彼女は、パクリと食べた。
彼女は笑った。
そして――涙を流したのだ。
「え?どうしたの?まずかった?」
僕はあわてた。塩を砂糖を間違えたかなとも思った。
「遼…ハンバーグおいしいよ、ありがとう。私と同じ味…。」
え?
私と同じ…?
遼って…?
「え、どういうこ…」
そこまで言葉が出てきてハッとした。
よしこさん?良子さん?
もしかして…‘りょうこさん,!?
それって…、おかあさん?
僕の頭は真っ白だった。
「そうよ…、私の名前はりょうこ…。苗字は変えてあるけどね。少しの間この現実世界に来てたのよ…。ゴメンね…。母さんは知ってる。あんたの本当の気持ちも…。騙してたわけじゃないのよ。だって、ばれると…。」
母さんの体が消えかかっている。
「母さん!?体が…。」
「そろそろ、お別れみたいね…。ばれちゃったし…。」
母さんの目からは涙が流れていた。
僕も目頭が熱くなってきた。
お別れ?
何で?
「そんな、嫌だよ!お別れなんて…!それに僕は…!」
「そ、その先は言っちゃ駄目よ。ごめんなさいね。もう一度だけあなたと会ってみたかったの…。でも、その思いはだんだん変わっていったわ…。私、三波 よしこは、あなたを…。」
僕はさえぎった。
「その先は言っちゃ駄目なんでしょ?」
僕も目から涙がこぼれた。
「ふふ、そうね…。もうそろそろ時間だわ…。遼…いや、遼くん…今までありがとう。」
「かあ、いや、よしこさん!駄目だよ、いなくなっちゃ…。僕また一人だよぉ…。」
そういう僕のよしこさんは、優しくささやいた。
「大丈夫よ…。あなたは誰よりもやさしくて純粋な心を持ってる。幸せかどうかなんて、人にわかるもんじゃないのよ。それなら、自分は幸せなんだと思って生きなさい。それが一番すばらしいことなのよ…。」
ふっ…。
僕は目の前が真っ白になった。
気がつくと僕は良子さんの家があった場所にいた。空が輝いていた。それは、太陽の光などではない。きっとこれは良子さんが残してくれたもの。僕の行き場を指し示す希望の道。でも、それは自分の足で歩いてゆかなくちゃ。
でもそこに家はなくただの空き地だった。もともと家などなかったのだ。
目の前にはハンバーグを入れた弁当箱…。
僕の心は、澄んでいた。
もう、何も怖くなかったし、すべてを受け入れられる。
「今なら言ってもいいよね…?母さん、いや、よしこさん?」
僕はそっとささやいた。
「好き…だよ―――。」