第三話 お弁当
第三話です。相変らず、更新遅いでよね。
「そうだ!明日の弁当に小さいのを作っておこう!」
なかなか、いい提案だ思った。いままでがうまく作れたので、調子に乗ったのかもしれない。
慣れた手際で、小さいのを1個、2個作っていった。
日も西に傾きかけ、鮮やかな夕焼けが遼の家を包んだ。そうこうしているうちに、お父さんの帰ってくる時間になっていた。
「やっばい!焼き始めないと、お父さん帰ってきちゃう!」
僕は再び本を開き、温度、時間等を確認した。そして、先程作った二つの大きな宝石をフライパンに乗せた。
「よ〜っし!」
僕の胸は高鳴った。
ジュー…。火をかけ始めたとき、玄関から声が聞こえた。
「ただいまー。」
お父さんだ!
スタッ…スタッ…。
足音が聞こえる度、緊張が大きくなる。
そして…、ドアが開いた。
「あっ、お父さん!お帰りなさい。今ね、ハンバーグ作ってるんだ!食べてくれるよね?」
先手を打った。
「遼…、もちろんだ!そうか、遼が作ったのか!嬉しいな!」
父は驚きつつも、嬉しそうな顔をした。
「もう少しで、焼き上がるから着替えてきて。」
「おう!」
お父さんが部屋に向かうのを確認してから、胸を撫で下ろした。
「ふぅ。」
「さて…、頂きます!」
お父さんはそう行って、口に入れた。
「どうかな?」
ドキドキしながら、聞いてみる。
「うん…、うん…、おいしいよ!母さんとまではいかないが、すごく似た味だ!さすが親子だな!」
「ほんと!?よかったー。」
僕はお母さんと同じ味を目指して作っていたので、とても嬉しかった。
その後、二人はあっというまに夕飯を平らけた。
翌朝、僕はお弁当にハンバーグを詰めていた。
「んしょ…、んしょ。」
入るだけ、いれた。
「あっ!もう、こんな時間だ!」
お弁当に一生懸命になりすぎて、時間のことなどすっから忘れていた。
「いってきまーす!」
僕は鍵を閉めて家を後にした。
今日一日はみんなもあまり良子さんには近づかず、数人の子としゃべっていた。
時々見せる笑顔に僕の胸は赤く染まる。
「ねぇ…遼く、くん?私、今日ね、教科書忘れたの。見せてくれない?」
いきなりの問いかけに僕は驚いたが、喜んでOKした。
(言うまでもないことだが…。)
「ありがとう…。」
遠慮気に話す彼女の顔は、なんとも可憐だった。
4時限目の授業も終わりに近づいたころだった――。
「ねぇ、今日一緒に屋上でお弁当食べない?」
え――?僕に言ってるの?いや、そんなはずは…。
「あ、ゴメン!いきなり迷惑だよね…。遼くん…。」
遼くん?リョウクン?僕の名前は?
星川 遼――。
僕のこと?
今僕は、屋上に向かう階段を登っている。
隣には、良子さんが――。
現実味が沸いてこないが、一緒にお弁当を食べることになったらしい。
僕たちの学校では、お昼時間の間屋上を開放し、そこで弁当を食べてもいいことになっている。
屋上は広いが、そんなにたくさんの人は来ない。
要するに二人きりだ…。
今、そのドアを開けた。
太陽に日差しが眩しい。風はほとんど吹いていなかった。
やっぱり、人はたくさんいない…。
「あのへんで食べようよ!」
僕が大体の位置を決めた。
「うん!」
僕たちは、手ごろなベンチに座りそれぞれの弁当箱を開けようとしている。
そういえば…ハンバーグ入れてたんだ。今頃、思い出した。
ぱかり…。
良子さんのお弁当は、鮮やかだった。色もきれいで、おいしそうだ。
良子さんは、僕の弁当箱を見たとき少し表情を変えた。
「!…、おいしそうな、ハンバーグだね。1個もらってもいい?」
「いいよ!僕が作ったんだ!」
自慢げに話した。そのとき、良子さんの顔がほころんだ。
「ほんとに…!?嬉しい!」
ぱくりと食べると、良子さんは満面の笑みを浮かべた。
「おいしい!遼くんって料理上手なんだね。」
「そ、そうかな。喜んでくれると僕も嬉しい…!」
照れ気味に話した。
その後は、いろいろな話に花を咲かせたのだが、ついにあの話になった。
「遼君って、何部に入っているの?」
「え…?あの…野球部。」
少したじろいながら答えた。今は練習に行ってないからだ。
「へぇー、すごい格好いいね!ポジションはどこ?」
目を輝かせながら聞いてくる良子さんに僕はうそをつけなかった。
そして、なにより彼女には何の話をしても大丈夫だというような妙な安心感があった。
「実は…今は練習に行ってないんだ…。その…先輩からいじめられて…。」
彼女は驚いた顔をした、そして優しい声で聞いた。
「あ、ゴメンね。辛いこと聞いちゃって…。もしかして、それでクラスの人にも…。」
?
知っていた?確かに知っていてもおかしくはない。
でも、なんで僕がクラスでも浮いていることを知っていて弁当に誘うのだろう?
でも僕は平常心だった。
「そうだよ。先輩の権力は強いから…。みんなして、僕を…。」
「でもなんでなの?なにをしたの?」
僕は逃げられないと思った。でも、やっぱり妙な気持ちだった。
嫌われてもいい…、疎外されてもいい…、それでも…
全てを話したかった――。僕の悩みを聞いてほしかった――。